S君やS子の父親
つまり私から見れば義理父になる
この義理父の出身地は東北ということだ
たしかに肌は白い
義理父はどちらかというと大人しく無口な方だ
言葉使いは標準語を使ってはいる
うちのオヤジとは正反対な性格だな
義理父の実家は普通のサラリーマンだということ
ただ、先祖代々は元は百姓をしていたようなのだ
義理父の父親が農業を嫌がり会社勤めをしていた
昔の百姓の家はトイレは家の中ではなく外に置いてある
いわゆるボットントイレ(汲み取り式)なのだ
屋敷からおよそ50メートルほどその便所は離れている
だから夜中には一人で行けずに我慢したと義理父は幼少時の思い出話をしてくれた
義理父が10歳のころ
不意に尿意を覚えいつものごとく我慢すればいいと思ったらしい
ところが・・・もう限界だとあきらめてしぶしぶ外にある便所へ行くことになった
蒸し暑い日の夜中だ
田舎なので街灯などはない
ましてや便所まで50メートルも離れてる
「嫌だな」と思いつつ転ばないようにゆっくりと歩いて行った
夜中なので虫の鳴き声やカエルの鳴き声など昼間ならそんなに気にしないのだが夜中で一人なので余計に鳴き声が不気味に聞こえたらしい
およそ便所まで半分のところで自分の名前を呼ばれた気がして周りを見まわしたのだが誰もいない
てっきり父親か母親に呼ばれたと思ったらしい
空耳かな、と思いつつ便所までたどり着いた
いざドアをあけようとドアノブをまわしたがどういうわけかまわらなかった
ガチャガチャと何回もまわしたかドアノブが回らない
てっきり誰かが用を出してるんだと思いしばらく外で待っていた
ところが便所の中からの気配がまったくない
おかしいな、と思いおもいきって聞いてみた
「お父さん?お母さん?入ってるの?」と話しかけてみた
だが全然返事がない
ますます不安になってきた
もう1度ドアノブを回してみたが全然回らない
もう小便も限界
便所の横の茂みに小便を出そうとした時だ
いきなりドアが開き
「誰だ!!!立小便する奴は!!!地獄へ落ちるぞ」と怒鳴り声とともに老人が出てきた
もう義理父はあまりのびっくりにちびってしまいその場に座り込んでしまった
心臓が飛び出るかと思った
気づくとその老人は周りにいなかった
初めて見るその老人は誰なのか
全然わからない
もう小便でパンツはビショビショ
仕方なしに替えのパンツに履き替えて自分の部屋に戻った
朝になり洗濯場にビショビショのパンツを母親が見つけて
義理父は苦しい言い訳をした
しかし、母親はその話を信じずに単に寝小便したんだろうと言われて
小1時間ほど説教されたらしい
しかし、母親がその話を父親に話したときに義理父にすごく怒られるだろうと覚悟をしていたらしい
ところが父親は怒りもせずに「仕方ない、仕方ない」と言ったきり何もお咎めを受けずに済んだ
義理父は不思議に思い後日なぜ怒らなかったのかを父親に聞いてみた
義理父の父親も幼少のときに義理父と同じように立小便しようとしたときに
トイレからなにか怒鳴りながら老人が出てきた
あまりのびっくりに漏らしてしまった
父親のときは両親からものすごく怒られたらしい
だから、義理父からその話を聞いたときに思い出して内心「おまえもか」と思い「仕方ない、仕方ない」と言ったんだということだ
父親にその老人は誰なのかと聞いたのだが父親も誰だがわからないと返事をされた
義理父は学校に行って昨夜の出来事を親友たちに話したのだが誰も信じてもらえずに
かえって変なあだ名を付けられる羽目になったとか
「寝小便」というあだ名でしばらく呼ばれることになった
やっとS君や私に出会って心の内にしまっていた話を出来たと喜んでいた
息子や義理の息子なら絶対に信じてくれると思い恥ずかしながら話してくれた
その話をS君やS子とともに聞いていて鳥肌が立ってしまった
S子も背筋に寒気が走ったと言って私の手を握ってきた
義理父の前でS子に握られるのはほんと恥ずかしかった
S君もゾッとしたと言っていた
作り話なら私たちにはすぐわかる
なにせ色々な怪奇的な体験をしてきたのだから
私は一度も義理父の実家へは行ったことはない
S君は何度か行ったのだがS君もあの便所だけは勘弁してほしいと言っていた
だから、今はちゃんと家の中にトイレを作ったと言っていた
いずれ・・・義理父の親戚の人たちにも顔を出さないといけない時が来るのかな
と思いつつ・・・
来週にはS君一家と共に子供たちを連れて行くことになってしまった
オイオイ・・・・
本当の名目はその老人の正体を知りたいという義理父からのお願いだ
義理父には幼少の時からすごくかわいがってもらっていた
F子も義理父が大好きでいろいろなものをもらっていた
自分のオヤジと対照的な義理父はなにかを惹きつける魅力があった
やさしいのだがどこか冷たい雰囲気を醸し出していた
さて・・・義理父たちの親戚の人たちはどんな人がいるのか
少し不安だが義理父からのお願いだからね
メンバーにF子も行くことになった
もちろん義理父は大喜びしていたとか
S子も久しぶりに父親の実家へ行くことになって喜んでいた
子供たちは私同様初めて行く祖父の実家に不安と期待でわくわくしていた
実家には義理父のお兄さんが家を継いだということだ
義理父も久しく帰っていないのでとても楽しみだと言っていた
さて・・・どういう結果が待ってるんだろう
作者名無しの幽霊
まさか義理父から霊体験を聞かされるとは思っていなかった
やっと一番信用のできる人間に会えてやっと心の内を話してくれた
義理父の実家はどんなところなのか正直ワクワクしていた
行ってみて・・・びっくりの連続だった
来週の準備をしないとね
今回は新幹線と電車とバスの旅になる
義理父の実家は東北の山奥にある
家を出て実家に着くまではだいぶかかるだろう
本当は車で行きたかった
餓鬼ともを用心して車のほうが一番対処しやすいからだ
電車などもし万が一なにかあったときにはすぐには対処できない
それが一番気になっていた
一応和尚様からもらったお守りと薬があれば一応は安心なのだが
やはり不安だな