【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

短編1
  • 表示切替
  • 使い方

絡みつく

ある休日の朝、家の近くを散歩していた俺は、喉に絡みつく痰をどこかに吐き捨てたくて、まわりを見渡した。

nextpage

ちょうど道路の脇に側溝があって、各家庭から出た下水が流れていた。

俺は何度か大袈裟にえずくと、側溝に向かってべっと吐き出した。

nextpage

すると、

俺の口から、痰ではないなにかが勢いよく飛び出していった。

それは小さな肉塊のようで、側溝の水にぽとんと沈むと、苔生したぬるぬるの底を転がるようにして流れていった。

nextpage

俺はなんだか気味悪く感じたが、喉には特に違和感がなく、あー、あーと声を出してみてもいつも通りの声だったので、そのまま散歩を続けた。

nextpage

separator

それから随分と歳月が過ぎ、俺は還暦を迎えようとしていた。

その間に俺は結婚して、子供を育て、孫の顔も見ることができた。仕事についても、そこそこの企業で出世し、職場の人間関係もうまくいっている。家族はみんな健康で、自分自身も大病に悩んだことは一度もない。

nextpage

俺の人生は、言ってしまえば、このうえなく順調であった。

しかし、

nextpage

自分の人生が順調であればあるほど、俺はあのとき吐き出した何かの存在を、意識せずにはいられなかった。

nextpage

あれは何だったのか。

それはいつまでも俺の頭のなかで絡みついて、離れなかった。

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ