調査のおじさんとおばさん

短編1
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調査のおじさんとおばさん

子供の頃に体験した話です。

小さいころ、団地に住んでいたのですが、隣接した商業用施設の入り口で、椅子に座りながらひたすら道行く人々をカウントするおじさんとおばさんがいました。

当時、母親にあれは何をやっているのか聞いたのですが、デパートに来た人が大人なのか子供なのか男なのか女なのかを数えているんだよと教えられました。そんなことをして一体何の意味があるのか、小さいことの私には理解できませんでしたが、銀色のカウントする道具を使ってみたい好奇心にかられました。

私はある日、そのおじさんとおばさんに話しかけて、数える道具を貸してくださいと頼みました。すると、おじさんとおばさんは笑いながら「子供には難しいよ」と言いました。当時の私はきっと難しいんだと思い、まずはどうやるのかを見せてもらうことにしました。おじさんが男の人、おばさんが女の人を数えていると教わりました。しかし、目の前をたくさんの人が通っているのに、おじさんもおばさんも数える道具を押そうとしません。その道具を使ってみたかった私はおじさんとおばさんから数える道具をとりあげて何度も連打しました。

その直後、デパートの入り口に一台のバスが突っ込みました。

おじさんとおばさんは声を揃えて言いました。

「これから死ぬ人を数えてたのに」と。

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