知人の1人にアリサ(仮名)って子がいる。
アリサは高い所が好きで、東京タワーとかのガラス張りの床に立つのは朝飯前で、バンジージャンプやジェットコースターなんかの絶叫系も大の得意。
でもたった1つだけ、吊り橋だけはどうしても駄目なんだと言っていた。
理由を聞くと、「信じられない話かも知れないけど…」と言って、私にこんな話しをしてくれた。
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アリサは当時社会人3年目。会社で担ってたプロジェクトが無事成功し、上司の計らいで、プロジェクトチームの人間は特別休暇を貰う事が出来たそうだ。
すると、プロジェクトリーダーの川奈さん(女性:仮名)が、労いも兼ねて1日キャンプに行こうと提案した。川奈さんはキャンプが趣味で、平日なら空いてるだろうし、少々顔の利く場所があるという事だった。
調べると、そのキャンプ場にはアスレチック施設もあり、吊り橋からバンジージャンプも出来ると知って、アリサは「やってみたい!」とその話に飛び乗った。結果チームの全員、合計10人でキャンプに向かったそうだ。
キャンプ場は、都内から車を高速道路で2時間程行った先の、河川敷と山麓の間にあったという。
広大な敷地の中には宿泊施設は勿論ちょっとした温泉も備わっていて、事前に見たネットの口コミも上々。そのせいか平日にも関わらず、家族連れや大学生の団体が来ていて賑わっていたそうだ。
河川敷の向こうには、快晴の中そびえ立つ大小様々な山脈が見える。こんな絶景の中キャンプ出来るんだ!と、着いた当初はかなりテンションが上がっていたのだが、暫くしてスタッフが1人やって来て、マイクロバスに乗るように言ったそうだ。
そして車に揺られる事10分、アリサ達が案内されたのは、家族連れや学生がいたメインのキャンプ場から離れた、周囲に木々が生い茂るだだっ広い空間で、10人で使うには広すぎる程の敷地だった。
川奈さん曰く、本来は林間学校や修学旅行といった団体用の場所で、利用料も決して安くはないのだが、オーナーの厚意もあって、まけてくれたのだそうだ。
「ガヤガヤしたとこよりも良いでしょう?」
そう川奈さんは自慢気に言っていたが、辺りは高い木々のせいで薄暗く、加えてさっきと比べると余りにも静か過ぎた。
なにもここまで…と思ったが、改めて地図を確認すると、アリサの1番のお目当てであるアスレチック施設に最短で行けることが分かった。
キャンプ当初はまだ残暑厳しい頃だったこともあり、日陰で涼めるし、小川の水も冷たい。喧騒からも離れられるし、まあいいか…そう前向きに捉える事にしたという。
実際、テントを張ったりなんだりと、色々と準備をしている内に、広さも静けさも対して気にならなくなったそうだ。
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一通り準備が終わると、バーベキュー用の買い出し係を除いて自由時間になり、早速アリサは同僚の片岡君(男:仮名)と鶴川さん(女:仮名)を誘ってアスレチック施設に向かった。
車道脇の山道を30分程行くと、アスレチック施設の看板が見え、流行る気持ちを抑えつつ足を踏み入れた。
だが…目の前に広がる光景に、アリサ達は目を疑ったという。
そこはアスレチック施設というよりも、錆びて古びた遊具がそこら中に転がった、寂れた公園と言っても過言では無いような場所だったそうだ。
周囲を確認すると、一応利用出来そうなものもあるが、スタッフが居ないと使えない感じのもの(ターザンみたいにロープに掴まって、スライドして移動するやつ?とか)が殆どで、肝心のスタッフはおろか、アリサ達以外に誰の姿も無い。
荒涼とした風景に、「ネットに載ってた写真と全然違う…!」と、かなりゲンナリしていたのだが、鶴川さんが
「ねえ!あれじゃない?バンジージャンプ!」と言って奥を指差した。
見ると、アスレチックの遊具が両側に並ぶ通路の先に開けた空間があり、近付いて行くと、ザーッという川の音と共に1本の吊り橋が現れた。
「おお!スゲーッ!」と吊り橋に駆け寄って下を見ると、川と橋の間は優に200メートル程はあるんじゃないかという落差。周囲に漂う霧が、更に雰囲気を醸し出していた。
「やったじゃん!バンジー出来るね!」
「おわ!めっちゃ怖ぁ~!アリサまじで飛ぶの?」
「まあ、これ位の高さはやったことあるから、余裕っしょ(笑)」
と盛り上がっていたのだが、暫くして、皆ある事に気が付いたそうだ。
スタッフ呼ばないと出来ないんじゃね?と。
近いとはいえ、キャンプ地からここまでは徒歩30分。そこから更に、スタッフが常駐しているメインのキャンプ場までは、プラス20分は余裕でかかる…
鶴川「管理人室の電話番号…わたし知らない…」
片岡「俺も聞くの忘れた…川奈さんに電話しよう!」
アリサ「待って…ここ、電波無いっぽい…」
3人共シーン…と黙り込んだ。だが、
「って事は…直接管理人室に行かなきゃって事か…」
そう片岡君が言うと、アリサと鶴川さんは同じタイミングで片岡君の方を見た。行ってこいと言わんばかりに。
片岡君は察したのか、「俺…行ってくるわ」と言って、来た道を引き返して行った。
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片岡君が引き返している間、アリサと鶴川さんは吊り橋の前で他愛のない話をして待っていたそうだ。
そして会話の途中、鶴川さんがふと気付いたようにリュックの中を漁り始めたかと思うと、「あったあった!」と言って何かを手に取った。
それは双眼鏡だった。キャンプ場付近は、夜になると星が良く見える絶好の天体観測スポットでもあり、それを知った鶴川さんはわざわざ買ってきたそうだ。
鶴川「これで川底とか見てみたい…でも橋渡るのはなあ…わたし高いの苦手なんですわ」
アリサ「私行こうか?バンジージャンプの場所、事前に確認したいし(笑)」
鶴川「マジ?…じゃあさ、ちょっと行けるとこまで行ってみてよ。私、ここから双眼鏡でアリサの姿がどこまで見れるかやってみたい!」
そんな話になり、アリサは早速吊り橋に足を踏み入れたそうだ。
吊り橋特有の軋みや揺れのスリルを味わいながら、足を進めて行く。
橋の真下では、岩肌を削るように川が勢い良く流れているのが見えた。橋の辺りは薄い霧が漂っていて前方は良く見えないが、冷んやりとした空気が心地良く感じた。
途中振り返って、「おーい!(^o^)/」と、橋の入り口に手を振ると、鶴川さんが双眼鏡片手に手を振り返す。
橋桁には距離が1メートル毎に書いてあり、アリサは5メートル進む毎に手を振っては進み…を繰り返した。良く見ると、橋桁や手摺は修復が行われたのか、所々木材やロープが結構新しく感じられた。
「橋だけはボロくない…アスレチックでやってるのは、バンジージャンプだけなのかな?」と、アリサはその時何の気なしに思ったという。
そして、いよいよ20メートル付近…橋の真ん中の、バンジージャンプ地点に近付こうという時だった。
振り返ってみると、鶴川さんの姿はだいぶ小さくなっていた。「うお~小っさ!(笑)てかいつの間にこんなに来てたんだ(笑)」と思いながら、再び鶴川さんに向かって手を振った。
だが、鶴川さんは、手を振り返してこなかった。
霧が掛かってはいるが、視界はそんなに悪くない。その証拠にこちらからは橋の入り口が良く見えた。「あれ、双眼鏡でもここまでが限界なのかな?」とアリサは少し目を凝らして見ると、
橋の入り口に見える人物は、鶴川さんでは無かった。
その人は肩位まで伸びた黒髪を下げ、全体的に白い服装を着ていた。そして直立不動で、アリサの立っている橋の方を見ていたそうだ。
その時点では、まだはっきりと性別は分からなかったが、アリサ曰く「感覚的に…何故か男だって思った」という。
「もしかして片岡?こっそり戻ってきて、驚かそうとしてんのか?」とも思ったが、片岡は180㎝と長身。男の背丈はそこまで高い感じはしない。
キャンプ場のスタッフはもっと登山向けのアウトドアな格好をしていたし…
それに、こちらに全く声を掛けずにジッと突っ立っているなんて妙だし…
何でこんな所に、何も持たずに裸足で居るんだ?
そう思った瞬間、アリサは背筋が寒くなったそうだ。
「あの人…誰…?」
そう思ったのとタイミングを同じくして、足元に揺れを感じ始めた。
男がこちらに向かって、橋を渡り始めたのだ。
ギシッ…ギギギッ…と、一歩一歩踏みしめるかのように男がゆっくりと近付いて来る。距離でいえば、まだまだ離れてはいるが、暫くすれば確実に追い付いてしまう…そんな足取りだった。
知らない男がこっちに来る…逃げなきゃ…でも何処に…?
橋を渡り切っても良いが、一体何処に繋がっているのか、土地勘が無いから分からない。
それに、どっちにしろあの男がこっちに来るのは目に見えている。
アリサの心には、さっきまでのスリルを味わう余裕は無くなっていた。代わりに焦りが押し寄せ、足がすくんで歩けなくなってしまったそうだ。
その間にも、男との距離は少しずつ縮まっていき、とうとう、目を細めなくても姿を確認出来る距離まで来てしまった。
そして、男の姿を見てアリサは震え上がったそうだ。
白い服装の正体は、ボロボロになった白装束で、肩まで伸びた黒髪は…ザンバラになった武士の髪型そのものだったという。
しかも、一歩一歩足を運んでいると思っていのだが、男の両足は縄の様なもので縛られていて、全く動いていなかった。
腕をだらんと下げ、顔は髪がバサバサと掛かっていて表情は分からないが、とにかく体が橋桁から少しだけ浮いていたのはハッキリと分かったそうだ。
1ミリも足を動かしていないのに、橋桁を歩くような揺れだけは体感している…
この世のモノじゃ無い。
そう分かった途端に体中が震え、とうとうアリサはその場にへたり込んで立ち上がれなくなってしまったという。
先程までの涼しく心地良い空気は、重く湿った生温いものへと変わっていた。それも、男が近付けば近付く程、その空気がドロドロと体中にへばり付く様な感覚になっていく。
アリサは得体の知れない恐怖で声も出せなくなり、ただただ後ずさりし続けていた。
しかし、ズルズルと体を動かしている内に、ふと頭の中である考えが湧いたそうだ。
─────飛ぼう…
川に落ちても、頑張って泳げば助かるかも知れない…イチかバチかに賭けよう…と。
それからアリサは震える手を何とか必死に動かして手摺を掴み、ガクガクする足をどうにか立たせた。その時、男の姿はもうすぐ側まで迫っている気配がしていたそうだ。次第に生温い空気だけでなく、何か、まるで生ゴミの様な臭いまでが漂って来て、少し吐き気までしたという。
手摺越しに橋の下を見る…遥か下で、川が轟々と流れている。手摺に足を掛け、男の姿が視界に映らない様に目を瞑った。
もう行くしかない────────
しかし、次の瞬間だった。
「やめろーーーーーーー!!!!!」
耳をつんざく様な、男の太い叫び声が響き渡った。
絶叫に驚き目を開けると、アリサのそばには、いかにも山男という出で立ちの、初老の男性が険しい顔で立っていた。
「早く!!こっちへ来なさい!」
そう言って、アリサの前に詰め寄った。アリサが手摺から手足を離すと、男性は続けざまに切羽詰まった口調で「とにかく戻るぞ!」と言って、手に持っていた命綱とフックをアリサの体に結び付けた。
周囲を見回すと、白装束の男も生温い空気も、変な臭いもいつの間にか消え、橋の周辺には以前のように霧が掛かっていた────
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男性の後についてゆっくりと橋桁を渡り、来た道を戻った。
恐怖から解放され安堵したのも束の間、橋の入口に着くなり、アリサはいきなり男性に腕を引っ張られ、やや乱暴に広場に投げ出された。
え!?とびっくりして固まっていると、男性は険しい顔で「馬鹿もんが!…どうやってここまで来た?どうやって入った!?」と強い口調で言ってきたという。
アリサは、地図の通りにここまで来たと言ったが、「そんなこと出来るはずない!」とオーナーに一蹴され、更には「警察に突き出すことも考えている」とまで言われたそうだ。
訳が分からず鶴川さんと片岡君の方を見ると、彼等は顔が青ざめて何も答えられない様子で、鶴川さんに至っては震えて半泣きだったという。
男性はこのキャンプ場のオーナーで、市街まで買い出しに行く途中、道路脇を歩く片岡の姿を見つけ、吊り橋の事を聞いてここまで来たそうだ。
そして吊り橋の前まで行くと、橋に向かって叫ぶ鶴川さんと、今にも飛び降りようとするアリサの姿を発見した…と。
それがどうして警察に突き出されることになるのか…混乱していると、片岡君と鶴川さんが口を開いた。
「あの…彼女の言う通りなんです。俺達…地図に…案内板に沿って歩いて…そしたら普通に入り口が見えて…信じてください!不法侵入しようとしたんじゃないんです!」
「吊り橋でバンジージャンプ出来るっていうから来て…そしたらこの橋があったから…これだって思ったんです」
「…だからあんな事になるなんて思ってなくて…ごめんなさい…!彼女が…アリサが飛び降り自殺しようとしたなんて…信じられない…」
鶴川さんはそう言うと、泣きじゃくってしまった。
不法侵入?自殺?
何の事か全く分からない。しかし、2人の様子を見る限り、ふざけているなんて到底思えない。オーナーはまだ険しい顔をしていた。そして、今度は「お前はどうなんだ?」とでもいう様にアリサの方を見てきたそうだ。
「2人の言ってる通りです…!地図に沿って来ただけです…でも来てみたらこんなボロボロだし…でも吊り橋があったから、出来るかどうか確かめようと思って…自殺なんてしません…!」
「バンジージャンプ出来るってネットに書いてあって…それで来ただけなのに…!しかも変な…ボロボロの白装束の男の人が向かって来て…!だから川の方に落ちようと思って…不法侵入って…一体何の事ですか!?」
頭が混乱し、さっきの不気味な光景が蘇って口が震えたが、アリサはなんとか必死に訴えたそうだ。
しかし、アリサの話を聞き終わると、オーナーは「本当に…本気で言ってるのか…?」と呟く様に言ったそうだ。そして3人は頷いたのを見て暫く黙り込んでから、「…入り口を見てみろ」と、俯きながら入口を指差した。アリサがオーナーの指差す方を見ると…
アスレチック施設の入口は、2、3メートルはあるだろう高い工事用フェンスで囲まれ、人ひとり入る隙間も無かったそうだ。
目の前の光景に目を疑った。なんで?来た時こんなものは無かった…何で!?
「…ここはな、10年前にとっくに閉鎖したんだ。君達の言うアスレチックの場所も、バンジージャンプの場所も、こことは真逆の方向だ」
「以前は確かにここも使われていた。だがな…事故が絶えず、閉めたんだ。遊具を買い換えても、修繕もした…信心深くはないが、それでもやらないよりマシだろうと思ってお祓いも受けた…だが、駄目だった」
「だが…どこからともなく『噂』を聞き付けて、不届きな奴らがフェンスを乗り越えて来ちまうんだ…それで…必ず吊り橋を渡ってしまう…引き込まれるように」
そこまで話した後、オーナーは再び険しい顔でアリサ達の方を見た。そして、
「これまでに5人も、飛び降りて死んだんだ。原因は不明だ…だが、一緒に来てた奴らが、みんな一様に声を揃えて言うんだ…『不気味な姿の男を見た』とな…」
アリサは背筋に氷を入れられた様に感じた。
私はいつの間にか、あの白装束の男に引き込まれていた…?
「今回は君達の言葉を信じて、無かった事にしてやる…外に車を待たせてあるからそれに乗って帰れ」
「俺はここでやらなきゃならねえ事がある。君達がここまで入ってきてしまった以上、どこに綻びがあるか、確かめないといけねぇからな…」
オーナーはそう言って、フェンスの鍵を開けてアリサ達を外に出した。そしてアリサ達は、オーナーが無線で呼んだ他のスタッフの車に乗って、キャンプ場へと戻った。
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オーナーの言う通り、アスレチック施設はメインのキャンプ場の、温泉場の近くに有った。
施設は家族連れで溢れ、子供達があちこちではしゃぎながら遊んでいる。バンジージャンプも、専用の高台が備わっていて、飛び降りる度に悲鳴と笑い声が周囲に響いていた。
「…どうする?」と鶴川さんに聞かれたが、アリサは飛ぶ気力が無くなってしまい、やめてしまったそうだ。そして結局、アリサはその日の夜バーベキューを食べた以外他のレジャーは一切せず、夜も眠れぬまま、翌日帰路に着いたという。
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その後、アリサはそのキャンプ場には1度も足を運んでいないそうだ。キャンプにも誘われる事はあっても、吊り橋での出来事があってから遠慮しているという。
私はアリサの話を聞いて、ある疑問が湧いた。
バンジージャンプって吊り橋でやるかな?そんな足場が安定しない所で?と…
その事をアリサに聞くと、
「…私もさ、当時は気が動転してたから、全く考えられなかったんだけど、帰ってきてから気付いて…普通あんな場所で飛ばないよね。何で、バンジージャンプ出来るって思っちゃったんだろ…やっぱ、引き込まれてたとしか考えられない」と言っていた。更に、
「あの事があって暫くは、白装束の人の姿が頭から離れなくてさ…もし夢に出てきたらって思って怖くて、ほんとにメンタルがヤバかったんだ…それで、その会社辞めて、今の所に再就職したの」とも。
アリサはキャンプ場での出来事が気になって不眠や神経過敏に悩まされ、知り合いに紹介して貰って、一時期病院にも通っていたという。
そして、通院している内に通院患者の1人と仲良くなり、その人の薦めもあって、あるお寺に行ったそうだ。
一連の出来事を話すと、住職からは「特に悪い気は感じない」「恐らく見たものは地縛霊の様なものだろうから、余程の事が無い限り憑り付くことは無い」と言われ、一応お祓いだけは受けたそうだ。
その後もアリサの身や周囲に何かトラブルが起きている事も無く、そんな話も聞いていないという。
そして今、アリサは転職先で元気に仕事に励んでいて、白装束の男の姿も、段々と記憶から薄れて来て安心している、と話してくれた。
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アリサから話を聞いてから暫くして、私は仕事の関係で郷土や歴史学の専門の男性と知り合った。
そしてふとアリサの話を思い出して、もしかしたらその土地の事が分かるのではと思い、アリサの名前は伏せて試しに聞いてみた。
すると男性は興味を示してくれて、後日調べた結果をメールで送ってくれた。
男性からのメールには、
現在キャンプ場のある場所から隣県にかけて、大昔に戦場になった記録が文献にあり、もしかすると現在のキャンプ場の辺りまで負けた軍の兵士が逃れ、そこで落ち武者狩りか何かがあったのでは?と。
そして両足を縄で縛られていたのは、敵の兵士に捕まって身動きを封じられ、処刑で川に落とされとか…そういう事かも知れない、と。白装束は、儀式的な意味合いよりも、単に鎧や着物の下に来ていた肌着の様なものだと思う、と書いてあった。
男性はメールの最後に、「やっぱ、科学の進んだ現代社会でも解明出来ないような、何かの念があったりするんだよね~、まあ無闇に近付かない方が良いよね、出来れば」と書いていた。
もし古戦場跡で落武者狩りがあった、と言うのが答えだとして、どうしても分からないのは、何故アリサ達は、フェンスに囲まれた旧アスレチック施設に入れたのだろうか?と言うことだ。
アリサは「フェンスなど見えず、入れた」と言っていたが…
アリサの話を信じていない訳では決して無い。
だが、もしもアリサ達の記憶から、「フェンスを乗り越えた」という部分だけが抜けていたとしたら?本当はフェンスをよじ登って乗り越えていたとしたら?
憶測に過ぎないが、もしかしたらアリサは、吊り橋を渡る前から引き込まれて板のかもしれない…
皆さんも、旅行先ではどうぞお気を付け下さい。
作者rano