『壮大なる旅路の果て』
~シャングリ・ラを求めて~
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大物主からのリクエストに応えて疫病も鎮まり、一安心の崇神天皇でしたが、
すっかり定例化した神床就寝の儀で、ぐっすりとおやすみあそばされていた崇神天皇の頬に、
何の前触れもなくフルパワービンタが炸裂しました。
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年末特番の恒例行事のような凄まじいビンタに驚いた崇神天皇は、光の速さで覚醒して飛び起きます。
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崇神天皇「誰や!親父にもぶたれたことないのに!!」
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寝込みを襲われ、ご立腹の崇神天皇の目の前には、まぶしくて見えないほどの美人が立っていました。
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テラ美人「キサマ、やってくれおったな!!」
崇神天皇「え?ボク朕、君みたいな美人さんと仲良くしたっけ?……ははぁん、そういうことなら、ビンタなんかせんでも………」
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繁殖力強めな崇神天皇の返答に腹を立てた猟奇的美人は、もう一発フルスイングビンタをお見舞いして言います。
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テラ美人「無礼者!!わらわを誰と心得る!!
ここにおわすは今も太陽神!アマテラスオオミカミに在らせられるぞ!」
崇神天皇「ホンマにおった!!」
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まさかまさかの最高神の御出ましに、崇神天皇はかしこまって平伏します。
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崇神天皇「アマテラスはん、ボク朕は何ぞやらかしましたやろか?」
アマテラス「大物主の社を直させたじゃろ!わらわはアイツが大ッッッ嫌いなのじゃ!!」
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理不尽なことをのたまうアマテラスに、崇神天皇も若干引きました。
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崇神天皇「せやかて、変な病気のこと鎮めてくれはったし……」
アマテラス「やかましい!嫌いなもんは嫌いなんじゃ!このバカタレ!!」
崇神天皇「そない言わはりましても……」
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すぐビンタするわがままな御先祖神様と大恩あるエロ神様との板挟みに、
崇神天皇は頭につばを塗って考えます。
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ポク…
ポク……
ポク………
ポク…………
チーン!!
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崇神天皇「せや!エェこと思いつきました!!」
アマテラス「黙れ小僧!!キサマに太陽(サン)が救えるか?!」
崇神天皇「まぁ、聞いとくれやす!
ドスケベな大物主はんは御神体が山やから動かされへんけど、
アマテラスはんは鏡やから持ち運びできますやん?」
アマテラス「確かに、わらわは手軽にパッと使えて大変使い勝手がよく、
急な出張や旅行の際などの出先にも簡単に持ち運べて、
汚れた時も布でサッと一拭きしていただくだけで新品の輝きが戻ると、
たくさんの皆様から好評いただいておるけれども?」
崇神天皇「世界に一つだけなんやから、誰しも持ってはおらんでしょ……。
とにかく、アマテラスはんは動かせるんで、アマテラスはんのお好きな所に御安置させていただきまひょ!」
アマテラス「キサマ、天才か?……ならば、可及的速やかに手配を致せ!」
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こうして、崇神天皇とアマテラスの間で密約が結ばれ、
その大役の白羽の矢が立ったのは、崇神天皇の娘トヨスキイリビメ(以下、イリビメ)でした。
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イリビメ「かわいい娘に家宝の神器を持たせて危険な旅をさせるお父上、
か弱い私は行って参ります!…チッ!」
崇神天皇「スマンのぅ……」
イリビメ「いいんです!こんな危ないことなんか自分でやればいい話なのに、
そんなことを女の……しかも、娘の私にやらせてくれる優しいお父上を誇りに思います!…クソガ!」
崇神天皇「なんか、言葉の端々にトゲない?
語尾になんか小さく言うてるし……」
イリビメ「とんでもない!こんな大役を押しつけられて、私は本当に名誉なことと思っていますよ!…ボケガ!
盗賊に襲われ、散々なぶられて殺された挙げ句、大切な神器まで盗られたりしないよう、
充分に気をつけて行って参ります!…マジシネ!!」
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こうして、トヨスキイリビメは神器の一つであり、アマテラスの御神体でもある八咫鏡を携えて宮を出発します。
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アマテラス「イリビメよ」
イリビメ「なんスか?もうこの辺でいいッスか?疲れたんで」
アマテラス「まだ出たトコではないか!
もっとやる気を出さんか!」
イリビメ「神様なんだから上から見て選んでくださいよ……
正直しんどいンスわ」
アマテラス「えー……大事なことやし、やっぱり現場見て決めたいやん?
陽当たりとか気になるし、近くにオサレなカフェとか欲しいし、
ペット飼えるかとか大事やん?」
イリビメ「別に何処にも行けないっしょ?
つーか、飼いたきゃ虎でも龍でも勝手に飼えばいいじゃないスか」
アマテラス「こういうのは気分の問題なのじゃ!」
イリビメ「……ウザッ!」
アマテラス「おまえ今、わらわに『ウザッ』とか言うたな?!」
イリビメ「そんなわけないっしょ?『馬』って言ったンスよ。
高天原は遠いから電波悪いンスかねぇ」
アマテラス「ならよいのじゃが……てか、電波って何?」
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こんなやり取りがあったかどうかは知りませんが、イリビメはアマテラスに一々お伺いを立てながら、引っ越し先探しの旅を始めました。
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イリビメは、ささやかな抵抗の意思を示すためか、
とりあえず三輪山から徒歩で約30分しか離れていない所に最初の社(現在の檜原神社)を建てました。
もちろん、アマテラスから激しいイチャモンが入ったのは言うまでもありません。
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その檜原神社を皮切りに、アマテラスのわがままに振り回されながら、
各地に社を建てては祀り、祀っては移動するを繰り返します。
この一旦は落ち着いた場所を『元伊勢』と言い、あちこちに点在しています。
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そして、崇神天皇の息子の垂仁天皇(すいにんてんのう)の娘で、
イリビメの姪にあたるヤマトビメの代になって、ようやく現在の伊勢に落ち着いたそうです。
続く?
作者ろっこめ
たくさんの皆さまにご拝読いただき、本当にうれしいです!
少しずつですが、合間をぬってチマチマ書いておりますので、引き続きよろしくご拝読お願いします!!
中巻はメジャーな話があまりないので、初めて知った方もいらっしゃると思いますが、意外に面白いエピソードがチラホラあるので、コメントにて
「知ってた!」
「知らなかった!」
などの他にも、ご感想いただけたら励みになります。