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ろっこめ版『よくわかる古事記』⑫

長編11
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ろっこめ版『よくわかる古事記』⑫

『愛するが故に』

~皇室昼ドラ劇場~

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第十一代垂仁天皇には、サホビメという后(きさき=いわゆる正妻)がいました。

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最高権力者である天皇ですから、奥さんはたくさんいましたが、

特にお気に入りだったのが、このサホビメだったのです。

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その愛たるや、

垂仁天皇は公務を終えたら、脇目も振らずにまっすぐ帰り、

「サポりーん♡たっだいまぁ~♪」

「おかえりぃ♪スイたーん♡」

と、キャッキャウフフとラブラブで過ごすほどです。

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日本初のバカップルかも知れません。(個人的な強バイアス)

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ですが、この時代は輿入れ先と同様に、実家も大切にしていたので、サホビメはちょくちょく実家に帰っています。

実家に帰って羽を伸ばし、また宮へと帰る。

そんなことが普通にまかり通っていたんです。

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昼はいろいろと堅苦しくて息苦しく、することも特にありませんし、

夜は夜とて旦那は帰ってくるなりベタベタまとわりついてくる──。

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気も心も休まることのない嫁ぎ先を離れ、

何の気兼ねもなく過ごせる実家に帰られることを、

サホビメも楽しみにしていました。

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ある日の実家でサホビメがいつものように旦那の愚痴を吐き出し、

縁側で庭を見ながら口から半分魂を出してボーッとしていると、

「また帰ってきたのか?」

サホビメに話しかけてきたのは、サホビメの腹違いの兄のサホビコでした。

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「ビコ兄!」

子供の頃から一緒にいたサホビコに、サホビメは思わず顔をほころばせます。

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実は、サホビメのファーストラブは、兄のサホビコだったりします。

当時は母親が違えばセーフだったようです。

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庭の木を眺めたりしながら、二人で昔話に花を咲かせたり、

サホビメの旦那をディスったりしていると、

サホビコ「お前、今……幸せなのか?」

サホビメ「えっ……?!」

サホビコからの唐突な言葉に、サホビメが口ごもってしまいました。

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サホビコ「聞いてる分にはあんまり幸せそうには聞こえないぞ?」

サホビメ「そ…そんなこと……」

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サホビコは答えに困るサホビメの肩をつかんで自分の方に向けると、

キリッとした真剣な眼差しでサホビメを見つめます。

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サホビコ「俺と旦那、ホントに好きなのはどっちなんだよ!?」

サホビメ「そ…それは………」

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子供の頃から大人な意味で好きだった兄と、

窮屈ではあるけれど全力で自分を愛してくれる夫との間で、

サホビメの心は大きく揺れ動きました。

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そして、サホビメが出した答えは──。

続く?

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というフェイントは怒られそうなので続けます。

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少し考えたサホビメが出した結論は、

「ビコ兄が好き……」

でした。

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サホビメの言葉を聞いて、サホビコは長いヒモがついたナイフのような刃物を渡して言います。

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サホビコ「じゃあ、お前はこれで旦那を殺してくれ……その混乱に乗じて俺は戦を仕掛け、この国の王になる!

それから、俺と一緒になろう!!」

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かつて、こんなに大胆で恐ろしいプロポーズがあったでしょうか。

ただのクーデターです。

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サホビメ「海に出て、海賊の王的なものになるとかじゃダメなの?」

サホビコ「それじゃ、お前が人妻なのは変わらんだろう?」

サホビメ「……せやな」

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サホビコにそそのかされたサホビメは、宮に帰ると渡された凶器を隠し、そのチャンスを待ちました。

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後日──。

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垂仁天皇「サポりーん♡今日はお休みだから、ずーっと一緒にいられるね♡」

サホビメ「ホントにぃ?サホもチョーうれしみ♡」

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ヘドが出そうな慣れ合いもそこそこに、公務でお疲れだった垂仁天皇は、サホビメにひざ枕されながら昼寝をしまいました。

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スヤスヤと眠る垂仁天皇を見つめ、サホビメは忍ばせていた短刀を取り出して両手に握ると、

「スイたん……ゴメンね」

サホビメは、白く光る刃を垂仁天皇の首筋めがけて、威勢よく振り下ろします。

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が、刃は垂仁天皇に触れる手前で止まりました。

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サホビメの脳裏には、これまで垂仁天皇と過ごしてきたスイートメモリーズたちが浮かんでは消え、

自分がしでかそうとしていることが、どういうことなのかをサホビメに気づかせたのです。

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サホゎまょった…

サホがスイニン殺して戻るの……

ビコニィがまってる。。。

血とか、ぃっぱぃつぃちゃぅし

もし、誰かに見つかっちゃったら

ぃっぱぃぉこられそぉだし……

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でも、ぁきらめるのょくなぃってぉもって……

サホゎがんばった。。。

……でも、ムリだった。。。

ビコニィのコトゎ大好きだけど

スイニンもサホのコトをホントに大事にしてくれてる。。。

そんなスイニンのコト…サホゎぅらぎれなぃょ。

もぉ、マヂムリ……寝ょ。。。

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みたいな感じだったかまでは書いていませんが、

とにかく旦那を殺すことができないまま、時刻は夕方になっていました。

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サホビメが暗殺を思い留まり、ナイフをかたわらに置いたその時、

サホビメを強烈な吐き気が襲い、

ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ出ちゃいました。

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そのしずくが垂仁天皇の頬に落ち、垂仁天皇は目を覚まします。

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垂仁天皇「サポりん……泣いてるの?」

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垂仁天皇の優しい問いかけに、サホヒメは口元を隠したまま、首を横に振りました。

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垂仁天皇「話してごらん……そんな悲しそうなサポりんをボク朕は見たくないよ……

あと、なんかちょっと、すっぱい匂いしない?」

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ギクリとしたサホビメは、その場を取りつくろうために、自分が懐妊中であることを告げます。

すると、垂仁天皇は推しのチームが優勝したくらいの大喜びです。

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さらに、垂仁天皇はサホビメにこんなことを言います。

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垂仁天皇「今、寝てたらさ……サポりんの実家に大雨が降っててさ。

そんで、ボク朕の首のトコにめっちゃ蛇が絡みついてくる夢見ちゃったんだよ……キモくない?

これってなんか、暗示的なヤツだったりして♪」

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それを聞いて、サホビメは驚愕しました。

今まさに、自分が殺ろうとしてたことがバレちまった!

そう思ったサホビメは、垂仁天皇に全てを打ち明け、スライディング土下座の勢いで謝ります。

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普通なら即死刑ですが、垂仁天皇はあっさりサホビメを許しました。

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垂仁天皇「よく話してくれたね……もうそんなこと考えたりしちゃダメだゾ?」

サホビメ「うん!サホ、絶対ぜ~ったい、そんなことしないよ!

これからもスイたん一筋で生きてくからね♪」

垂仁天皇「一回、他になびきかけてたけどね?

まぁいいけど……でも、サホビコのことを許すわけにはいかないから、

サホビコには死んでもらうよ?」

サホビメ「なんで?!スイたん、許してくれるって言ったじゃん!!」

垂仁天皇「サポりんのことは許すよ?

でも、ボク朕の暗殺を企てたサホビコを許すわけにはいかないんだ……示しがつかないからね」

サホビメ「そんなの誰にも言わなきゃ大丈夫だよ!

サホとスイたんの二人だけのヒ・ミ・ツ♡……ね?」

垂仁天皇「そういうわけにはいかないんだよ……サポりん、わかってよ………ボク朕は天皇なんだ」

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そう言って、垂仁天皇はサホビコ討伐の準備にかかりました。

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あたしのために争わないで!

なんて、竹内まりやの歌みたいな状況を何とかするため、

サホビメは身重の体で故郷へと走ります。

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故郷に帰るとすぐ、サホビメはサホビコに洗いざらい話しました。

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サホビメ「ゴメンッ!ビコ兄!!

スイたんにバレちった♪てへぺろ♡」

サホビコ「そっか……じゃあ、仕方ねぇな」

サホビメ「ビコ兄!とりま、秒で逃げて?」

サホビコ「何処に逃げたって無駄さ……そんなら、やれるトコまでやってやるのが漢(おとこ)ってもんだろ?」

サホビメ「ビコ兄……(トゥンク♡)」

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男には負けるとわかっていても

戦わなければいけない時がある。(らしい)

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しかし、そんなハードボイルドな空気なんか、女のサホビメには関係ありません。

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サホビメ「ビコ兄!!お願いだから逃げてよ!!

サホはビコ兄に死んでほしくないよ!!」

サホビコ「そうはいかねぇんだよ……それより、お前は早く帰れ!!

お前まで殺されちまうぞ!!」

サホビメ「イヤッ!!サホ、絶ッ対に帰らな…オrrrrr」

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全速力で走って来た上に、お腹に新たな命を宿していたのもあって、

サホビメは、おつわり申し上げてしまいました。

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サホビメ「ゼェゼェ…サホがお願いしたら、きっとスイたんは許してくれるから!

……ハァハァ…許してもらえるようにガンバるから!

だから、ビコ兄……ウップ」

サホビコ「わかったから中に入って早く横になれ!

お前どころか、腹の子まで死んじまうだろうが!!」

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サホビコは、これから攻めてくるであろう垂仁天皇の軍勢を警戒し、バリケードを作って備えます。

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間もなく、垂仁天皇の軍がサホビコの屋敷を取り囲み、後はどう攻め落としてやろうかと戦略を練っていた時、

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一兵卒「陛下!サホヒコの屋敷に皇后陛下が!!」

垂仁天皇「だにぃ?!

何で、サポりんがそんなトコにいるんだよ!?」

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垂仁天皇は報告を聞いて軍勢の前に出ると、屋敷の前にサホビメが立っていました。

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垂仁天皇「サポりーん!!そこは危ないから、早くこっちに帰っといでー!!」

サホビメ「じゃあ、今すぐ兵隊を帰らせてー!」

垂仁天皇「それは無理ー!!」

サホヒメ「じゃあ、サホも無理ー!!」

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とても旦那を裏切ろうとしたヤツの態度とは思えないふてぶてしさですが、

サホビメは頑なに「兵を下げろ!」の一点張りで、全くラチが明きません。

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交渉は平行線のまま、数ヵ月が経ち、垂仁天皇の軍のモチベーションもだだ下がりです。

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「たかだか女一人に何やってんだよ……」

軍からはそんな声がささやかれ始め、垂仁天皇は威厳だとか、カリスマ性だとか、

権力者として大切な何かをなくしそうになっていました。

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そんな中、サホビメが子供を産んだと情報が入り、

サホビメ側から「子供を引き渡したい」という申し入れがありました。

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垂仁天皇「これはチャンス オブ チャンス!!!!

いいか?子供ごとサポりんを連れて来るんだ!失敗すんなよ?」

交渉役「いぇす、ボス」

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サホビメと兵の代表が、屋敷と軍勢の間で対峙して、兵の代表が、サホビメから赤子を受け取りました。

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サホビメ「んじゃ、あとはシクヨロ♪」

兵の代表「今でしょ!」

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兵の代表は、背を向けたサホビメの髪の毛をつかみ、そのまま引きずって帰ろうとしましたが、

サホビメの髪の毛はスルリと抜けてしまいました。

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あわてて着物の裾をつかみ直したものの、それもボロボロになって崩れ落ちてしまいます。

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腕のブレスレット的な物もつかみましたが、それも簡単にバラバラになってしまいました。

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その隙に、サホビメはアラホラサッサ♪と屋敷へとトンズラしました。

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サホビメ「そんなのサホには、まるっとお見通しだよ~っだ!!

おしりペンペ~ン♪」

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サホビメはこうなることを予め想定して、

髪の毛を短くカットしてウィッグをかぶり、腕輪の糸や服の布まで腐らせて、つかまれても崩れるようにしていたのでした。

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ウマイこと逃げられた上に、腹立たしい挑発のオマケまでちょうだいした兵の代表は、ワナワナと打ち震えます。

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絶好のチャンスを逃した垂仁天皇は、親の葬式くらい落ち込みました。

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垂仁天皇「さすがはボク朕のサポりんだ♡」

部下「感心してる場合と違うでしょ?

どうするんですか?

このままだと、兵の統率も取れなくなりますよ?」

垂仁天皇「ぐぬぬ……サホビコの野郎………煮込みハンバーグにしてやるっ!!」

部下「それはそうと、殿下の御名前はどうされます?」

垂仁天皇「男の子だからサポノスケとかどう?」

部下「却下します」

垂仁天皇「なんでよ?!」

部下「果てしなくダサすぎるのと、御子の名は母親がつけるのが通例だからです」

垂仁天皇「んじゃ、サポりんにお願いしてくるね♪」

部下「失礼ながら陛下……あんた、状況わかってんの?!

すぐに使者を送りますから、そこでおとなしく、まんじゅうでも食ってお待ちください」

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送った使者がサホビメの所から戻ってくると、垂仁天皇に言付けを伝えます。

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使者「御名前はホムチワケだそうです」

垂仁天皇「ホムホムかぁ……さすがはサポりん♡いいセンスしてるぅ♪」

部下「その愛称で二度と呼ばないでくださいね?

見えない所から矢が飛んできそうだから……」

垂仁天皇「カワイイのになぁ」

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御名前は決まったものの、にらみ合いは続いています。

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このままでは、他にクーデターが起こってもおかしくありません。

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一方、サホビメの方はと言うと──。

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サホビメ「……スイたん、あれから何ヵ月も経つのに攻めてこないな……

サホのことなんか気にせずに、さっさと終わらせればいいのに」

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そうつぶやいたサホビメは、ハッとしました。

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スイたん……まだサホのこと愛してくれてるんだ……。

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こんな状況になって、ようやく垂仁天皇の深い愛に気づいたサホビメでしたが、

サホビコのことも見捨てることは出来ず、二人の男の間で、未だ揺れ動いているのでした。

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サホビメ「どうしてこんなことになっちゃったんだろう……」

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「全部オメーのせいだよ!」

という言葉は、わたしに免じてこらえていただけると幸いです。

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死を目の当たりにしながら日に日に疲弊していく兵士たち、

いつ攻めてくるとも知らない大軍勢の驚異を前にしても気丈に振る舞うサホビコ、

そんな姿を見て、帰りたい気持ちを必死で圧し殺しているサホビメ。

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もはや、自決もやむなしの状況の中、ついに事態は動きます。

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垂仁天皇が自ら軍の前に立ち、サホビメと直接交渉に出たのです。

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垂仁天皇「サポりーん!お願いだー!!」

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数ヶ月ぶりの夫の声に、サホビメの心は大きく動かされます。

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サホビメ「スイたん……」

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今すぐにでも出て行って、夫の顔が見たい!

と思ったサホビメに、垂仁天皇が呼びかけました。

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垂仁天皇「サポりーん!!

ボク朕の緒紐(おひも)ほどきに来てー!!」

サホビメ「なん……だ…と!!?」

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緒紐──。

一発打ち上げた後で、他の相手とそういうことを致さないようにと、オシモを紐で互いに結び合うという、誓いの約束のようなもの。または、こと。

結び方で他の相手と致したことがわかってしまうため、相手と場合によっては血の雨が降ることもある。

(こめ辞苑 第6版より)

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ここにきて、そんなことをデカい声で叫ぶ夫に、サホビメは光の速さで冷めました。

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サホビメ「他にも女がいるんだから、勝手にしろし!!」

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これについては同意しますが、垂仁天皇にとってはサホビメが一番なので、

その気持ちもわからなくもない気もしないこともありません。

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大勢の人の前で恥ずかしいことを言われたサホビメは、すぐに使いを出し、とりあえず叫ぶのを止めさせました。

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使い「丹波(たんば=現在の京都府あたり)に、

ヒバスヒメとオトヒメという姉妹がいるから、

その姉妹ににでもそのクセェ紐をほどいてもらえ!

だそうです」

垂仁天皇「あ…そう………」

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この言葉で、垂仁天皇はサホビメはもう戻ってこないことを悟りました。

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垂仁天皇「……全軍、突撃していいよ」

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この号令と共に、数ヵ月もの長きに渡った籠城戦も終止符が打たれました。

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事件の発端になったサホビメも、燃え盛る炎へと身を投じ、その情熱的な愛のような最期を迎えたとのことです。

続く?

Concrete
コメント怖い
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クセェ紐 (● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

ワロタ 卍

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