えー、君たちは選択講義として、この「心霊概論」を選択してくれた訳だけど。
この講義が心霊なるものを科学的に捉えて分析することを目的とする、いわゆる分析科学の一種だと思っているなら、まずそれは間違いだと言っておこう。
私の専門は心理学と哲学であり科学的な分析は専門外だ。そしてこれは哲学の講義だ。心霊とは人間にとってなにか?どうあるべきか?を考えていく事がこの講義の主題とするところだ。
15分後
……という訳で、まずは心霊というものをまず定義することが先決であると言うことが解って貰えたと思う。勿論、これまで話した通りそれは完璧な定義でなくて構わない、皆で共通認識を持つための器だと考えればよい。必要があれば、講義の進行にともない適宜変更すればよい。ではこれから、それぞれのグループに別れて43分ディスカッションする時間をとるので、各々グループでどんな定義が心霊にふさわしいか考えてみよう。
さらに57分後
……おっといつの間にか、時間がオーバーしていたようだ!どうだ?どのグループも一応回答はでたかな?ナニナニナニー!?どのグループも出来てないだとぉお!いったい何をやってたんだ!仕方ない!ここは、私の考えた定義で話を進めていく……
さらに117分後
……そんなわけでだな!こうして突き詰めて考えていくと、心霊というのはなんだか知らないが、でも存在しないとも言い切れない厄介な存在だと言うことが分かるわけだヒャッホイ。では逆に、存在すると仮定した場合についてヒャッホイしながら考えていこう、各々グループで237分間のでぃいいすかっしょんたぁいむ!……
さらに417分後
……つまりだなぁ!心霊が在っても無くても構わねぇってことは、都合がいい方採用すりゃあいいんじゃね!?お前らご先祖様の墓ぶっ壊せるか?事故物件住めるか?できねぇだろ?ソレ説明するとき心霊って概念あれば便利だろ?都合がいいだろう?じゃあるってことでいいじゃねぇか!……
さらに75分後
……他にも心霊スポット行ったあと調子悪かったらどうする?心霊現象のせいとかにして、お祓いとかすんだろ?それで解消すれば万歳だし、解消しなくても今度はもっと強いお祓いが出来る人探したりとか対策が打てるだろ?概念として有用なんだよ!都合がいいんだよ、心霊って概念は!今の俺にとってもその方が都合がいいんだよ!
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「ねぇ、きいた?○○教授の話?」
「え?知らないナニナニ?」
「秋の始め頃に心理学のゼミの合宿中の事件あったじゃん?実験の最中に学生達が集団ヒステリー起こして殺し合いしちゃったやつ、教授は行方不明だったじゃない?」
「うん」
「冬休み中、見つかったんだって学校の講義室で死体で」
「死体で?」
「死体で、死因は極度の脱水症状らしい」
「は?なんで?」
「良く分からないけど、監視カメラの映像によると講義室に入ってから発見されるまで一回も外に出てないから。飲み物無くなったんじゃない?なにやってたんだろ?」
「講義でもしてたのかな?」
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さらにXX分後
もうなんなんだよお前らは!そりゃお前ら見捨てたのは悪かったけど、どうしようもなかったんだよ、もう許してくれよ!そんな顔で見るな!見るなら何か言え!黙って睨むなよ!俺にはなにもできん、償うこともできん!頼む……許してくれ……
「キョウジュ……コウギツヅケテクダサイヨ」
作者園長
女子大生ッポイの二人組の会話をどこにいれるかをすごい悩みました。
最後にいれると、分かりやすいけど何か余韻が弱い気がするし
今のだと時系列が一瞬前後するから分かりにくいけど余韻は強そうだし