四年前、二〇十六年の出来事。
良美さんが転居を考えているとき、友人からとあるウェブサイトの名前を教わった。
怪談話にもたびたび取り沙汰される、事故物件を記載した超有名サイトである。
しかし正式名を記憶していなかった良美さんは《今にして思えば、まったく見当違いのキーワードで検索をかけていた》のだそうだ。
多少の誤字があっても類語の検索候補を提示してくれるのだが、そのサイトも候補の中にあったという。
本家と同じく、国内の事故物件を網羅している旨が書かれていた。
nextpage
《放火で老夫婦が犠牲に》
《一家心中》
《交際中の男性により刺殺》
nextpage
簡素なフォントで記録された、物騒な案件をいくつも閲覧していく。
事件の起きた年月日が判る場合はそれも併記されていたのだが、良美さんにはよく判らないことがあった。
いくつかの案件に記された、年月日の先頭に来ている二文字の漢字。
その時点で良美さんが知る由もないそれは、二〇十九年に改められたその元号だった。
そして、良美さんの前住所。
当時入居中のまさにその物件に
nextpage
《二年 一月 男児一名 両親による虐待死》
nextpage
と書かれていたのを覚えているそうだ。
そのときは不気味に思いつつジョークサイトと判断し、忘れていたらしい。
すでに遠方に越してしまった良美さんだが《もし事件が起きたら、自分は見殺しにしたことになるのだろうか》と悩んでおり、ニュースを見るのが怖いそうだ。
現在はどのように検索をかけても、そのサイトにはたどり着けないという。
作者退会会員