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短編2
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部屋の違和感

仕事から帰ってきて何か違和感を覚えた。

どこか部屋の様子がおかしい。

その正体はリビングのちゃぶ台の上のリモコンであった。

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私はリモコンをいつも机の左端に置くのだが、リモコンの位置が少しだけずれていた。

これはもう感覚なのだが、おかしい気がする。しかし、今朝は慌てていたし、そんなこともあるだろうと大して気にも留めなかった。

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明くる日また違和感を覚えた。

今度は置き時計の位置がおかしい気がする。

住み慣れた部屋のレイアウトは自分の秩序である。

乱されれば気持ち悪さを感じるものだ。

しかし、これもあくまで感覚的な話でしかない。

私は自分を納得させた。

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次の日また部屋に気持ち悪さを感じた。

普段、私は歯ブラシを洗面台の歯ブラシ置きの左側入れているのだが、その日は右側に入っていた。日常の習慣であるので、そんなことするはずはないとも思う。

が、無意識の行動なのでたまたまそうしたのかもしれない。

そして私はとうとう部屋の物の位置にマーキングをすることにした。

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テレビ、リモコン、時計、ぬいぐるみ、ティッシュ箱など目立つものにはテープで位置の目印をつけた。

それから一週間様子をみたが、何一つはっきりと動いたものはなかった。

だが、違和感は相変わらず私が家に帰って来る度に感じる。

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もう何が動いているのか分からないのだが、確実に部屋の何かが変わっている。

私はひどく気に病み、ノイローゼ気味になった。

友人にも相談したが全く取り合ってくれない。

「気にしすぎだよ」と笑われる始末である。

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何かがおかしい

あるいは私がおかしいのか。

最近仕事で疲れている。

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初めて違和感に気づいた日からもう3ヶ月経とうとしていた。

その日私はまた仕事から帰ってきて、部屋に不気味さを覚えていた。

もう、とうにマーキングも止めてしまっていた。

しかし何かがおかしい。

季節は冬で、寒さと疲れからもう何も考えたくないと言う思いでコタツの中に入ったのだが、そこで私は別の違和感を覚えた。

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そして今度は感覚的な曖昧なものではない。

直接的でリアルなものだった。

足先にさらっとしたとても嫌な感覚を覚えた。

しかも私はこの感覚を知っていた。

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髪の毛だった。

人の頭を足で触った時の感覚。

私は急いで足を引き抜き、コタツの中を確認したのだがそこには何もなかった。

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もうそれからすぐに引っ越してしまったので、その後は何もないと思う。

しかし、もしかすると自分が鈍感になっただけではないかとも思ってしまうのだ。

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一体誰が家を出発する時の部屋の光景と、帰ってきた時のそれを正確に比較などできるだろうか。

人の記憶は曖昧で都合がいい。

私たちはたいてい理性で違和感を押し殺している。

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もしかすると今日も自分の部屋で何かが変わっているのかもしれない。

いやむしろ何かが私たちの留守中に、部屋で暮らしているのかもしれない。

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