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風呂に関する短い話 十四

短編2
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風呂に関する短い話 十四

美里さんが転居をしたばかりの折。

《新居のようすはどう?》と友人からの連絡。

《わりといい部屋だよ!》という返信と一緒に、部屋のあちこちを携帯電話で撮影した写真を添付。

ほどなくして、友人からの再返信には《こわいよ、やめてよ》とあった。

意味が判らず、いくつかの写真を見返す。

その中の一枚、浴室の写真。

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小さな窓から、女の顔が覗きこんでいた。

窓は建物の屋外側ではなく、マンションの廊下側にある。さほど高い位置でもなく、変質者がそこを通りかかれば不可能ではない。

しかし。

女の顔は、さかさま。

窓枠の《上》から覗きこんでいたのである。

そしておそらく長く伸びていると思われる量の多い髪の毛は、ただの一本も下に垂れてはいなかった。

美里さんはむしろ友人側のイタズラを疑ったが、返信までに一分と経っていない。また、その友人は美里さんよりずっとその手の話が苦手であり、イタズラにしては妙だ。

画面に映った女は明らかにこちらを見ていた。

美里さんは画面から顔をあげて。

つい、浴室の窓を見た。

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ーー何もいない。

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次いで視線を移した、浴室の鏡に。

携帯電話を握りしめている美里さんと、件の女が映っていた。

女は写真と同様に、鏡の枠で見切れながら頭だけをさかさまの状態で覗かせていた。

そこからどのように逃げ出したのかは覚えてない。

結局、ただの一日も新居生活を送ることなく物件を引き払ってしまった。

携帯電話は手元に残しておくのも厭で、機体ごと箱に詰め、どこぞの心霊番組に応募したものの採用はされなかったという。

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