清さんが学生のころ、住んでいた寮で怪談大会を催した。
会の途中、その場にいた連中で写真撮影をしようという運びになった。あわよくば心霊写真が撮れるのではないか、という期待があったらしい。
携帯電話で十数枚ほど撮影した。
明くる日に確認したのだが、見知った顔が並んでいるだけ。
ただし。
何も怪異は捉えていなかった十数枚のなかに、一枚だけ。
誤操作によるものか、天井の隅へ向けて撮影されたものが保存されていた。
恐ろしいものが写りこんでいる訳ではない。単なる、手ぶれの激しい不明瞭な画像。
しかしその一枚だけが、どのように操作しても削除できなくなったのだという。
データの破損ではないらしく、通常の閲覧や他者への転送は出来る(転送されたものは消すことができたらしい)。削除の指示だけが表示されず、携帯電話のデータに居座り続けた。
修理に出したもののどうしても消去は出来ず、従業員も首をかしげる。最終的には機体を別のものに変え、記録媒体を物理的に破壊してもらったそうだ。
作者退会会員