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祖父が亡くなったときの話

短編1
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祖父が亡くなったときの話

宜之さんの祖父が亡くなったときの話。

高齢になってもかくしゃくとした人物で、必要な遺言や生前整理は完璧に済ませていた。

遺族の負担がほぼないような状態で四十九日を終えるころ。

宜之さんの父により、家族が集められた。

父によれば《亡くなってから開けてほしいと預けられた》とのこと。

父は祖父の一人息子であった。ささやかな遺産かと、皆が見守るなかで鍵のかかった小箱を開封。

それは和紙のようなもので包まれており、包みをほどくと箱いっぱいに溢れるほどの量になった。

ところどころに赤い色が残る、茶褐色の薄い木片のようなもの。乾燥して、両端が丸まっている。

はじめは刃物で削いだ《かんなくず》あるいは《かつおぶし》に見えた。

丸々一枚、穴がふたつ空いた鼻の形をしているものが混ざっていた。

明らかに、人間のものと思われる《皮膚》であった。

葬儀以来から再度、親類を呼び寄せての大騒ぎになったが、誰の皮膚であるかは結局判明しなかった。

生前の祖父が自分自身を少しずつ削いでいたのかもしれないが、そうする理由も、そのようなものを亮輔さん達に受け渡したかった理由も判らない。

何一つ明らかにならないまま箱いっぱいの皮膚のミイラは、祖父の墓がある寺が供養してくれたそうだ。

Concrete
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