少年は「わからない」「ここがどこなのかわからない」「なぜおれはここにいるのか?」と考えていた。
事実少年にはそこがどこなのかは分かっていないのだ。「おい!行けよ!」誰かが少年の背中をポンと掌で押した。少年は振り返ったが誰もいない。少年の周りは真っ暗で何も見えない。しかし背中からの声は大きくそして増えていく。
「行けったら!」「さっさとしろよ!」「お前がいかねぇから後つかえてんだぞ!」
少年は一歩踏み出してはいけない気がしていた。暗闇の中に入っていく勇気がなかった。
しかし、今度は一変して背中からの声は優しいものになった。周りの景色も明るくなりお日様の光を浴びているようだった。少年の背中に向かって声は囁くように言った。
「大丈夫」「1人じゃないよ」「私もついていくから」と。
少年は目の前にあるのはとても温かい場所のように思えて一歩踏み出した。
温かく心地いいのは少しの間続いた。そして少年は一気に肝が冷えるほどの恐怖に襲われた。
下半身にじめっとした嫌な感触があったかと思えば続いて聞こえる大きな笑い声。その中から一際大きな怒鳴り声があり少年は目を覚ました。
これは蛍光灯の光が降り注ぐありふれた教室のたわいない授業中に起きたこと。たった一人の平凡な少年によるたった一つのミスが原因だった。
少年にとってはトラウマとなる出来事だった。
作者やみぼー