短編2
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絵画

これは某ファミリーレストランに食事をしに行ったときのことです。そこはイタリアンを中心に取り扱っているので店の内装もそれに相応しいものでした。

その日、僕はバイト帰りにその店に寄りました、時刻は夜10時を超えていました。

「いらっしゃいませー」と若いお兄さん店員から挨拶され席に案内してもらいイスに腰掛けました。

「ご注文がお決まりになりましたらベルにてお呼びください」と言われ店員は去って行きました。

メニューに目をやり適当に注文をした後、料理が来るまでの間が暇なので店内を見渡していました。天井には天使の絵、壁には夫人や風景画が飾られていました。

一つだけ変な位置にある絵を見ました。他の絵ははっきりと見やすい場所にあるのに対し、その一枚の絵だけテーブルの真下にあったのです。

その絵に気づいた理由は座ったときから妙に足の裏がチクチクしたからです。靴も靴下も脱いで足を調べましたがトゲのようなものはどこにも刺さっていませんでした。

 

靴の中や靴下も調べましたが同じくおかしなものはありませんでした。しかし再度靴を履き床に足をやるとチクチクしたのです。これはおかしいと思いスマホのライトで床を照らしました。そこで初めて問題の絵に出くわしたのです。

その絵はアリの行進を描いたものでした。アリが進む先を辿っていくと鏡がありました、そして鏡に跳ね返されている様子がわかりました。

僕は「なんでこのアリたちは鏡に向かっているんだろう」と疑問に思いましたが、その謎は一瞬で解けました。鏡に山盛りの砂糖が映し出されていたからです。

面白い絵だなと思いました。アリたちは自分たちの真後ろに砂糖があるにも関わらず、鏡に映された砂糖を手に入れようと必死になっているように見えたからです。

 

僕はその絵を見た後すぐ店を飛び出しました。あの絵を見ている途中、はっと気づいたのです。自分の足が置いてあった位置に無数の黒い毛が針山のように生えていたからです。

とりあえず無事に店から出て帰れたことが幸いでした。

Concrete
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