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誘い~番外編②~

「もしもし?ん?どちら様ですかー、もしもーし?」

そう呼びかけても、電話の相手は何も答えない。誰?あなた。

「聞こえてますー?…電波悪いのかなあ?もしもーし…」

ブツッ!…ツー…ツー…ツー…

「うっそ…切れちゃった…」

「瑠美~どうした?」

バスルームから、恵太の声が聞こえた。まずい…恵太のスマホに勝手に出ちゃった事、気付かれた?

「ううん~何でもない!大丈夫~」

「そうか?瑠美も早くこっちおいで~」

「え~、やだ恥ずかしいよ」

「これからもっと恥ずかしいことするだろ(笑)ほらぁ早く!」

「うん…待ってて」

綾子も、こんな事してるのかな…?もしかしてさっきの番号、綾子から…?

繁華街の、ラブホの一室。もう通い慣れたってくらいに、私と恵太は空いてる時間を見計らっては、足繁く訪れていた。

決して純粋な出会いでも、付き合いでもない。恵太には綾子って本命が居るけど、彼女は大学で研究ばっかりしてて、彼氏の事なんてお構いなしだから…その寂しさを埋めてるってだけ。

もしバレても…そうさせたのは綾子だし、そっちにだって落ち度はあるんだ。

それに…まだうちら、20代前半だし。勉強だって大事なの分かるけどさ、こういう、恋愛や遊びに賭けたって、いいでしょ?

「そういえばさ、聞いた?あいつ夏休みにさー別荘借りるって!俺達も行こうぜ?」

泡で満たしたバスタブの中で、恵太が言った。

「あいつ」ってのは、同じ大学のいつも一緒にいる友達の1人。金持ちで、ほんとならこんなBとかCランクの大学には行ってないみたいだけど…まあ、うちらにしたら、「合宿」で行く宿はいつもいい場所が多いし、行きつけで顔パスのクラブとかもあるし…様様って感じ。

私達がこんな関係になってることはまだ、誰にも悟られてない。聞けば、別荘って言っても、よくあるログハウスみたいなのじゃなくて…もう、邸宅って感じの造りなんだとか。

お部屋も沢山あって、ちょっと行けばいい感じのレストランもあるみたい。

「行きたーい、でもお金どうしよ」

「それはあいつ持ちだから心配ないって!どうせ綾子は、夏休みもゼミだの研究だので俺の事なんかどうでもいいだろうし…瑠美と過ごす方が楽しいよ」

「マジ嬉しい!でも…あんまりくっついてたら、皆にバレちゃうよ…?」

「いいじゃんバレたって!それに…別荘着いたらさ、『良い事』あるよ…」

耳元で恵太が囁いた。

良い事…それは、仲間内の秘密の言葉で、世間でいう「複数プレイ」の事。

私達は、大学で知り合って間も無い頃から、頻繁にこういう事をし始めた。女子の1人なんかは、自宅に沢山連れ込んでヤってるって話も聞く。

でも、あんなのと一緒にはされたくない。だって私は、恵太だけが良いんだもの。あんな猿っぽいのと同類だなんて思われたくない。

「私が、他の男の子にされてても良いってこと…?」

「そうじゃないよ!…沢山部屋があるって言ったろ?俺たちはそこで、あいつらと混ざらずに、2人だけで過ごすの!な…?いいだろ?」

「そうしてくれるなら…行く…ねえ、『アレ』もちゃんと持ってきてよね?出来ちゃったらやだもん」

「わーったよ!まあ俺、瑠美に子供出来たとしてもいいけどな?嬉しいって」

「でも、まだ遊びたいもん…ママになるにはまだ早いの!」

「わかったわかった!(笑)…じゃあ、予行練習だけはちゃんとしとこうな!(笑)」

「なにそれぇ、全然ロマンチックじゃないよ~」

恵太は、言葉を遮るように体を寄せると、私をお姫様抱っこした。

そしてバスタブから出ると、体を拭くのも適当に…私をそのままベッドに押し倒した。

なんか、夢見てるみたい…こんなの、ティーン系のコミックでしか見たこと無かったのに…恵太ってこういうの得意なんだ…だったら、ますます綾子の事、ムカつくな。

「そうそう、思い出した…なんか別荘の近くにも、もっと『良い場所』があるんだって…」

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指定されていた時間よりも少し早く、私は駅に着いた。コンビニでお菓子を買って、ロータリーで待っていると、1台のワゴンが来て…それが恵太だと分かった。

「早いね、待った?」

「ううん!でも、ずーっと電車乗りっぱで、腰ダルい(笑)」

「悪ぃけど、これからもうちょっとかかるから、乗って!」

ワゴンは、麓の道からうねる山道を延々と登って行った。暫くすると鬱蒼とした森の中に、白い壁の建物が見え始めた。大きなガラス窓と、木製のバルコニー。別荘は思っていた以上に、大きく立派だった。

そして裏玄関から家の中に入ると…もうどこかから、嬌声が聞こえていた。本当なんだ。そして私達も…。心臓が高鳴って、何だか足が浮いてるような感覚になった。

「こっちだよ」

恵太に案内されて、真横の赤い絨毯が敷かれた階段を上り、そして2階の廊下の、突き当りのドアを開けた。するとそこには、年季の入った立派な家具と、奥には天蓋付きの…大きなベッドが置いてあった。

「すごい…」

と、言うか言わないかのタイミングで…恵太は早速、私をベッドに連れて体を押し倒した。

それから私と恵太は夢中に体を貪った。恵太が綾子の事を忘れてくれるようにと強く願いながら、多少乱暴でも私は恵太を受け入れた。

私達の事は皆には内緒で来ているから、恵太は存在を隠して行動するよう強いた。少し窮屈に感じたけど…この家で、密かに私達もいるんだってスリルにゾクゾクした。

そして…スリルを感じたい気持ちは、段々とこの部屋だけじゃ収まり切らなくなっていた。

「ねえ…こないだ言ってた、『良い所』って…どこにあるの?」

「良い所…?」

「ほら、ホテルで言ってたやつ!」

「ああ…あそこな?…や、俺さ…ちょっと勘違いしてたんだ…」

「どういう事?」

「あれな…心霊スポットの事言ってたみたいでさ…俺、青姦出来る場所かと思ってて…」

「えぇ…もうやめてよー」

「ごめんな?でも、まだバレてないしこのままでいいよな?」

「でもさ…そこじゃなければ…場所はあるんだよね…?少しで良いから、行きたいな…」

恵太は少しだけな、と言って、私の希望を快諾してくれた。行きの車中では薄暗いと思っていた森の中も、よくよく見れば所々に青空が見えて心地良い。恵太と2人っきり…綾子は、こんなのも知らずにきっと、研究室に籠りっきりなんだろう…

そんな事を考えながら暫く道を下ると…途中で道幅が広くなり、辺りが明るさを増した。

そして、開けた道を更に下ったその先に…突如私達の目の前に、洞窟が姿を現した。

「すごい…こんな所に?」

洞窟だけじゃない。手前には池があって…それは見たことが無い程に澄み切っていて、夕方の、陽の光で照らされた箇所が…青く輝いていた。

「見て!綺麗…恵太!恵太?」

恵太は、何故か呆然とした表情で立ち尽くしてしていた。よく見ると、微かに足元が震えている。

「おい…帰るぞ…」

「え…何で?こんなに綺麗なのに?」

「どこがだよ?お前…よく見ろよ…」

恵太には洞窟も池も、ドロドロと黒く汚く見えるらしい。何で?こんなにキレイなのに…しかも何か私…視界がほわーんとして…気持ち良い…

「ここら辺一体さ、さっき話したけど…心霊スポットなんだって…」

「…そうなの?」

「崎野っているだろ?あいつがどっかから見つけて来たんだよ…マジでヤバい所だって…何で…なんで俺達いつの間に…」

「どういう事…?」

「別荘からでも、車じゃないと行けない距離なんだよ…峠1つ越えた所だって…え…何で…」

「恵ちゃん落ち着いて?ホラ…洞窟の奥…おやしろ?みたいなの見えるよ…怖くないよ私」

「それだよ…!近付いたらヤバいんだって!!帰ろ?な?また部屋に戻ってさ…」

「やだ!何か…隠れてるの飽きたよ…」

「仕方無いだろ?瑠美だってそれを承知で来たんだろ?」

「ねぇ…ここでしよ?」

「はっ…?本気で言ってんの?」

「だって…ここなら、誰にも邪魔されないし大丈夫!ね…?」

何故か分かんない…でも、何故かどうしても、ここでしたくてたまらなくなっていた。何で?

「…瑠美、もしかしてお前、キメてんのか?…目ぇ充血してるぞ?」

「そうなのかな…分かんない…でも、軽いヤツだから大丈夫だよ…」

「…マジかよ…」

「ねえ~早くう…私、もう脱いじゃいたいよお!!!」

「おい!やめろよ!俺、帰るから…あいつらに迎えに来てもらうわ…」

トロンとした意識…脳みそが熱くて溶けそうなのは薬のせいじゃない…だって私を見つめる恵太の瞳…綺麗だもん。しがみついて、離したくない。

「恵太…好き…私、恵太の彼女になりたい…」

「離せ!!!気持ち悪ぃんだよ!!お前もこの場所も!!!」

恵太は、そう言って私の体を乱暴に引き剥がした。

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「恵ちゃん…」

「いつからお前に『恵ちゃん』って呼んでいいっつったよ?」

「ごめん…でも…でも私、ほんとに恵太君の事…」

「そういうのいい!要らない…はーあ、するだけの関係で心地良いって…そう言ったの誰だよ?お前だろ?」

「そうだけど!そうだけどさぁ…なんで?ほったらかしにするような、あんな女のどこがいいの!?」

「うるせぇよ!何で俺の好き嫌いに口出ししようとするの?綾子はさ、男にうつつ抜かす様な、お前みてぇな女と違うんだよ!」

「そうさせたのは恵太じゃん!じゃあ何で誘って来たの?ヤりたいからでしょ!?綾子がヤらせてくれないからでしょ!!!」

「綾子がヤらせてくれないから?ハハッ…マジで言ってんの?てか、何にも知らない訳?」

「え…?」

「マジかあいつ…何にも教えてないんだな…これ、見ろよ…」

恵太が私に、スマホの画面を見せた。そこには…元カレの礼介が書いたメールの文面が写っていた。

私が、「好きなだけ、好きな時間で」ヤらせてくれる…そんな内容の。

「お前は、俺達のダッチワイフだったの!礼介も、お前の事そうだと思ってたから誘ったんだぜ?気付かなかったの?馬鹿だね(笑)」

「そんな…そんな筈ないもん…礼介は、指輪とか買ってくれたんだよ?誕生日に…」

「その指輪、お前どうした?『ダサいから売っちゃった』って話したらしいじゃん…洋子とかから聞いたよ?『大して金にもならなかった』って…」

「……」

「おい!…弁明の余地も無いってか…早く帰れよ、消えろよブス!…まあ、身体だけは良かったよ?AV女優レベルでな!ヤりたいならそっち目指せば―――――」

バキツ!!!ガンッ!!ガンッ!!!ガンガンガン!!!ゴキュッ…パキッ…

さっきまで、ベラベラとまくし立ててた恵太の頭が、ただの「肉の塊」になった。

後ろを向いちゃったのが運の尽きだね?私、怒ると結構、収拾つかないんだよ?そこら辺のちょっと大きめの石で叩いただけで…こんなになっちゃうんだね?あっけない。

横たわった体の、下半身のポケットから金属の小物がはみ出ていた。手に取ると、それはサバイバルナイフで…

「わぁ、ちゃんと細かく刻めるようになってる…恵ちゃんってこういうの、気が利くよね」

ピクピクと小刻みに震えてる恵太の上に跨ると…僅かに、履いているショーツの下で…恵太の性器が膨らんでるのが分かった。猿みたい…死ぬ間際まで、勃起してるなんて。

「しょうがないなぁ…恵ちゃん…私がちゃんと、抜いてあげるね?」

辺りはすっかり陽が落ちていた。月明かりの青い池も…綺麗。そんな中、ポタポタと情けない感じに精液を垂れ流して、果てた恵太の身体…

ちょっと時間がかかるけど、私…腕が細いし重いもの全然持てないから、仕方ないよね…仕方ないもん…

「おーい!崎野ー!おーい!返事しろー!」

誰かの声がする。崎野…ああ、あの女…なんか偉そうな態度の子だよね?何かあったのかな…

「おーい!誰かいるかー!」

「駄目だ!そっちは行っちゃいかん!」

こんな所に来ても、何も無いし。

でも、さっきから何か…後ろの洞窟から風が吹いてくる。冷たい風…肩に当たる度に、背中全体が震える。

「――ァ――ジテ―」

女の声だ。崎野って女?

「――キェ――シ―」

老人みたいな声にも似てるし…男の人の声にも似てる。誰?

「―グ―ウ―シテ――」

何を言ってるの?ごちゃごちゃうるさいなぁ、やっと最後、頭を切ろうとしたのに…

「――ツノ――シテ…クレルナ」

やめてよ…こっちに来ないでよ…!来ないでよおお!

「ヨモツノヒメノキタルルミチ、ケガシテクレルナ」

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「お兄ちゃん!ねえあっちの方って何があるの?」

「あっちは神様の住むところだから行っちゃだめなんだよ」

「なんでー?なんで神様がいるのに、お願いとかしちゃいけないの?」

「こわーい神様なんだって、ばあちゃんも言ってたろ?ミサキ、もう俺たち、今日は沢山遊んだろ、こんな時間まで起きてるって分かったら、また母ちゃんに怒られるぞ」

「え~まだ眠くないのに…」

「バレて母ちゃんに怒られても俺しーらね!…ほら!窓閉めて。また風邪ひくだろ!」

「はぁ~い…もう寝る~…ん?」

「どうした?」

「なんかね、今ね…声がしたの…あっちのほう!神様の方から…女の人…」

「バカ!そんな訳無いよ!」

「したもん!ギャアーって声、大きな声したもん!」

「ミサキ、多分それは山の獣の声だ、猿だよ猿!喧嘩してんじゃね?ほら寝るよ!」

「猿かぁー!変な鳴き声だね!面白ーい!キャハハハ!ギャーオ!ギャーオ!ギャーオ…」

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@鏡水花 様
読んで頂きありがとうございます!
自分の中では今のところ、一番下品でエロネタな話です(笑)(*´∀`)♪
心霊スポットと呼ばれる場所には結構落書きとかゴミとか散らかってるよなあ…と思って書きました。

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