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初めて投稿させて頂きます。
私はある大型量販店の店長をしています。
これから私の体験した不思議な経験を
投稿させて頂きます。
稚拙な文章などあるかと思いますがご容赦頂きお付き合い下されば幸いです。
なお、多少の誇張もなく記憶にある事実のみ記します。
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数年前私は30代で初めて店長を任されることになりました。店長になるお店は愛知県南部に位置し築7年目で年商10億円のお店です。私の心はやる気に満ち溢れていました。
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皆さんもよく聞かれるかもしれませんが、大型の商業施設が建てられる土地というのは、多かれ少なかれ謂れがあるものです。店長同士の会話や引き継ぎの中にも「でます。w」などの言葉が入っていることも稀にですがあったりします。
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幸いにも私の着任するお店には過去や土地にそのような謂れはないようでしたが、業務引継ぎの際に前任の店長が最後にと前置きし。
「Mさん(私です)は幽霊とか大丈夫ですか?」。
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私はきたぞと思いつつ「苦手ではありませんし、信じてもいません」と答えました。
前任の店長の話では、自分も見たことも変なこともないのですが。
一部の霊感が強いとする従業員から赤ちゃんの霊がいる。
との嘘とも本当ともつかないような報告が何回かあったとの事でした。
私はさして気にも留めず、黙って頷きました。
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私は幼少の頃から心霊関係が大好きで、夏休みの日課といえば「あなたの知らない世界」を見ることだった程です。
大学生になる頃には、肝試しや心霊スポットに出向くことなど日常茶飯事、そのうちの数回は1人で出かけるほどでした。
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理由は一つ『真偽を確かめたい』との思いからです。
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先程信じていないと言ったのは、今まで数十回は行ったであろう有名な心霊スポットで本物だと思えるものを見たことがないからです。
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話が逸れてしまい申し訳ありません。
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着任してしばらくは業務が大変でそんな引き継ぎのことを考える暇がなく、忘れてしまっていました。
ですが、それを思い出すような出来事が起こります。
これは忘れもしない夏の初めです。
早朝出勤した私の机の上に一枚の手紙が置かれていました。
警備会社からのものでした。
従業員が出勤する前の時間でしたので私は喫煙所でタバコに火をつけ、内容を確認します。
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・店内センサーに発報あり、「警備エリア4番空間センサー」念の為店内見回りを実施しましたが、商品落下による発報と推定。その他異常なし
落下した商品は破損なしの為、棚に戻して警備退店と致します。
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通常時私の会社では、※人間の入るルートで、2箇所以上センサーが連続反応した場合には警備会社から即警察に通報。その後深夜であっても店長に通報し店に来るという流れになっています。
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今回のような単発の発報はよくあることで、例えば虫がセンサーにとまるだけで赤外線を遮り発報してしまうほどの精度よさでした。ほとんどの場合は原因不明で報告があがります。
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ただ商品落下に関して少し気になった私は警備会社に詳細の報告を求め電話することにしました。
警備員が発見した物は落ちた『紙おむつ』でした。
センサーのエリアとも一致しています。
警備からは「何回かあるんですが温度の変化でビニールの外装が伸縮して棚から落下する事があるようですね。」
との事でした。
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私はお詫びとお礼をして電話を切りました。
答え慣れている事と、よくあるという言葉に違和感を覚えた私は過去の警備報告書を開きました。
私の勤務してきた店ではそんな報告があるのを聞いたことがないからです。
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「何だこれ」
警備報告書を見た私の背筋に冷たい物が走ります。
過去2年分の報告書には何枚も何枚も同じ文言が並んでいるのです。
・店内センサーに発報あり 「警備エリア4番空間センサー」念の為店内見回りを実施ましたが、商品落下による発報と推定、その他異常なし。紙おむつが落下。
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私はさらに警備報告書を捲ります。
その頻度は1ヶ月に1回以上、落下しているのは全て紙おむつでした。
私は紙おむつの売場に走って行きました。センサーの位置を確認します。売場についた私は思考を巡らせます。
前任も知っていたはずだ、もしくは遥かに鈍感か.....
至って信憑性がました引き継ぎの話、見えるというパートさんの話を聞いてみよう。
その時の私は好奇心がはるかに優っている状態だったと思います。
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オープンの準備をして、出勤してきた正社員達に噂の話を聞いてみると。「聞いたことはあります。気持ち悪いと思うことも、でも見たことはありません。」
総じてそのような答えでした。
該当の見えるというパートさんも、
はっきりしたことが言えるわけではありませんと前置きした上で「強く感じる時があり、赤ちゃんを強く感じる」そんな時は体調が悪くなり店長に早退をお願いしたこともあるそう。
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なるほど、何かがあるのかもしれない。
私はそう思いました。
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再度警備会社に連絡した私は商品が落下していたら、戻さず報告書だけあげておいて欲しいことを依頼。
もう一度報告書に目を通します。
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頻度は1ヶ月に1回以上特に日付や曜日や時間の「決まり」はありません。
温度変化のビニールの伸縮もなくはないが、エアコンを使っていない季節も起きている。補充の仕方もあるかもしれない。
そんな事を考え私は次のサインを待つことにしました。
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次の報告書はちょうど1ヶ月後でした。
内容は全く同じ、私は売場に行きました。見事に紙オムツが1つ通路に転がっています。センサーの位置からして、間違いなく引っかかっています。
昨日はエアコンは付けていました。
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次のサインは25日後だったと思います。
報告書の内容は全く同じ
落ちていた商品も一緒。エアコンも付いていました。
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次のサインも約1ヶ月後
内容は上記と一緒。夏の終わりの頃です。
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ただ違うのは今回は落ちないように該当商品は寝かせて置いていたのです。
朝一の私以外誰もいない店内で、私の背筋は冷たくなっていました。
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私の足元にはいつものオムツが転がっていました......
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秋になり空気が冷たくなってきた頃売場には該当の紙オムツがなくなっていました。
インバウンド需要によるまとめ買いの影響です。
それからはサイン(警備発報)が起きることはなく、それが余計に真実味を増していったのを覚えています。
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次のサインは最後のサインから3ヶ月が過ぎた頃でした。
そしてこれが私にとってこの店での最後のサインになりました。
紙おむつはまだ棚にはありません。
その日はパートさんが体調不良を訴え早退していました。
最近少し情緒が不安定になっており心配をしていたところでした。
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閉店後、常駐警備員(営業時間中に警備する者)が施錠管理の報告に来ました。店内の電気を全て消して、サーバーを落とします。
警備を先に退勤させ私と正社員1名の2人で最後の警備セットをして帰ろうとしたその時でした。
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事務所の緊急呼び出しベルが大きな音で鳴り出しました。
それは多目的トイレの緊急呼び出しベルでした。
閉店してすでに1時間以上が経過しています。鳴るはずのない呼び出しベルが鳴ったのです。
私はもう1人の正社員の顔を見ます。
恐怖と違和感に震え「え?え?」と声を出しています。
警備が見落とした可能性がないわけではない、
「多目的トイレに向かうよ」私は正社員にここにいるように伝えてトイレに向かいました。
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多目的トイレの前に立った私の背筋には流石に寒いものがまた走ります。
この寒気は今までどんな心霊スポットに行っても感じることがなかった程のものです。
当然でした。
今まで蓄積されてきた事実がこの先にいる可能性が高い事を教えていたからです。
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初めて、真偽を確かめられるかもしれない。
恐怖と期待が半分といったら少し強がっていたかもしれません。
私は念の為ノックをします。
多目的トイレには電光版があり病院の手術室のようなイメージで使用中と未使用がランプで表示されています。
もちろん現在は未使用ランプがついています。
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ノックの反応はありません。私はドアに手をかけ
「開けますよ。」と言ってドアを開けます。
自動で電気がつきます。
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中には何もいませんでした。
或いは明かりがついた事により見えなくなったのかもしれません。
怖くなったのか正社員が事務所から走ってきました。
「何もいないね。きっと電気系統の誤作動かな。」
青くなった社員を安心させる為に私はそう言いました。
「帰ろう」
彼は黙ってコクコクと頷きました。
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今度こそ警備をかけ事務所を後にします。
その際、私はずっと考えていたのです。
もし
もしも幽霊と言われる存在があの場所にいたとして
それはきっと赤ちゃんではない。
赤ちゃんはスイッチを自分で押すのだろうか?自分のオムツを探すだろうか?
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あの場所にいたのは赤ちゃんを思う母親の霊ではなかっただろうか?
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パートさんはシンクロし子供を思う母親の感情が移入して赤ちゃんを強く感じてしまい体調を崩したのでないだろうか?
何の謂れもない場所で母親は何をしていたのだろうか?
今となってはわかりませんが、
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おむつを欠品させた私に怒っていたのかもしれない。
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と少し微笑ましく思っている自分は変でしょうか?
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あの日の帰り道は冬の風が冷たかったのを覚えています。
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その日を最後にピタリとサインは止まりました。
数ヶ月が過ぎ1年半の勤務を終え、私は転勤する事になりました。
私の目の前にはあの頃の私のような新任の店長が座っています。
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以上で業務の引き継ぎは終了です。
最後になりますが.....
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「Wさんは幽霊とか大丈夫ですか?」
作者Shootingstar