2回目の投稿をさせて頂きます。
私はある大型量販店の店長をしています。
これから私の実体験した不思議な経験を
投稿させて頂きます。
稚拙な文章などあるかと思いますがご容赦頂きお付き合い下されば幸いです。
なお、多少の誇張もなく記憶にある事実のみ記します。
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2年程前の話です。
私は静岡県のとある市の店舗で店長をしていました。
海沿いの観光地ですが、適度(?)に田舎で住民も温厚、客層もよく過度なクレームもない。
店長としては恵まれた環境におりました。
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着任して半年程が過ぎ、ようやくこの店での仕事にも慣れてきた頃に市内で殺人事件が起こりました。
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出勤前のことです。簡単な朝食を取りながら朝のローカルニュースを見ていると。
「昨日〇〇市のアパートで遺体が発見されました。被害者は同アパートで同居生活をしており、同居人の行方は現在わかっておりません、死因は暴行によるものと考えられ警察は同居人が詳しい事情を....」
あれ?店のすぐ近くの住所だな....田舎だから騒がしくなりそうだな。などと考えていました。
詳しい事件の内容は
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・被害者は女性である。
・被害者は市内のアパートで3人(男女女)で同居していた。
・同居していた被害者以外の2人は恋人であった。
・3人は20代で同じ高校出身の同級生である。
・被害者の死因は暴行による、傷害致死(この時点で)と思われる。死体は身体中アザだらけで日常的な暴行があった。
・被害者は『ペット』と呼ばれていた。(後で分かった)
・同居人2人の行方は現在不明で車は所有しているがアパートにはない。
・3人は共に市内の生まれである。
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店舗に出勤するとやはりパートさん達が騒ぎ立てている。
「店長朝のニュース見ました?」
「見たよ、すぐそこだねアパート。」
「やだー怖いー」
貴女もねw
などと思いながら私は別の意味でも騒がしくなるだろうと予感していました。そしてその予感は的中します。
昼休み明けぐらいに事務管理から私宛に内線が入りました。
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「はい、Mです。」
「店長、今お時間よろしいでしょうか?」
「大丈夫です。」
「外線3番に警察の方からお電話が入っておりますが。」
「承知しました。でます...」私は深いため息を吐きます。
やっぱりな.....そう思いました。
「もしもし、お電話代わりました店長のMと申します。」
「恐れ入ります。〇〇署の刑事課の.........」
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私の働いている量販店では様々なものを売っています。
業種がバレてしまいますが、それこそ赤ちゃんのオムツから人を殺せるようなモノまで様々です。大きな事件が近隣で発生すると、かなり高い割合で警察から協力依頼が入るのです。主には防犯ビデオの映像確認と提出、凶器などの判別、売買履歴などです。
※(もちろん社会的な義務として警察の捜査には協力させて頂いておりますが、かなりの時間が割かれる無給労働&警察の方は基本的に営業に支障が出ることを気にしない。例として指紋を採取した商品は返却されますが、薬液の跡が凄くて販売出来ないし.....買取オプションはないし....
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これが私には1番怖い話です。終.....w
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ゴホン!
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続きます。
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今回の警察からの連絡はやはり今朝のニュースの事件の事でした。「事前に調べておきますが。」という私に警察は「会ってから事情をお話ししたい。」と一点張り。
(心の声・・忙しいんだよこっちもw)
「内容は承知致しました。では『捜査関係事項照会書』をお持ち下さい。本日なら夕方以降であれば何時でも構いません。」
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(警察に提供する情報には多かれ少なかれ個人情報のように保護されるべき情報があります。警察の方でも蔑ろにされる方が結構おられるのですが、客商売は信用です。捜査関係事項照会書は、それらの情報開示を依頼する為の正規書類です。)
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「では、夕方頃に書類を持って伺います。」
警察の方はそう言って、電話を切りました。
珍しいな、事前に調べておく事が普通なのに....
まさかうちの従業員に事件の関係者がいるとか?
そんなことないか....正直少し不安に思っていました。
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閉店間際に2人の刑事さんが来店しました。1人は年季の入ったベテラン臭が漂う燻銀。もう1人は血気盛んそうな若手の刑事。あのドラマを思い出します。
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捜査関係事項照会書を受け取り。さあ何を調べましょうか?という私に燻銀刑事はこう言いました。
「店長さん、まだ記事にはなってないんですが。電話でお話しした事件の件で、同居人の2人が自殺しているのが見つかりまして....場所は隣の〇〇市の公園です。車内で練炭自殺でした。」
「え?」
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正直びっくりしました。調査することの最低限の情報しか提供しない事が多い警察にしては珍しい。私がそれを聞いていいものか?驚いている私に
「明日にはニュースで出ます。それでですね申し上げにくいんですが、自殺に使われた練炭とコンロが御社のオリジナル商品でして....」
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あ、マジか...
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「なるほど、承知しました。練炭とコンロの写真はありますか?商品の判別と購入履歴の確認ができます。それか自殺された方が弊社の会員であればすぐにわかります....」
いや冷静に考えれば...自殺する前にポイントカード使う人間もいないか...
「写真があります。外観はまだ新品のように見えますので購入から時間は経っていないかと考えます。念の為バーコードも写真に写しています。」
そう言ってファイルを開き若手の刑事は中から複数枚の写真を取り出しました。
「ありがとうございます。バーコードがあればすぐに確認できます。とりあえず直近1週間以内に練炭とコンロを同時に購入されたジャーナルを引っ張ります。その時間帯のレジ防犯ビデオの確認で宜しいでしょうか?」
2人の刑事は頷きます。
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調査を開始して数分で該当の購入履歴がヒットします。
「ありました。同時購入の履歴は1件のみです。」
「いつになっていますか?」
刑事がサーバーを覗き込みます。
「昨日の17時、3番レジで会計をしています....あれ?ポイントカードを利用していますね。」
そう言って私はカード番号をメモした後、ジャーナルを印刷し刑事に渡します。
「ポイントカードから会員情報を確認できます。該当の方かどうか調べます。」
私はまたサーバーを操作します。会員の情報という個人情報のデータベースへは管理職のみがログを記録された上でアクセスできる仕組みになっています。
「わかりました。カードの名義は〇〇〇〇様住所は〇〇町〇〇番です。」
店の近く、事件のあったアパートの住所ではない。別人か?と画面を見ていると。
「店長さん、それアパートで亡くなった仏さんの名前と実家の住所です....。」
間違いない。警察はそう言って画面を覗き込みます。
「うん、間違いない。防犯ビデオをお願いできますか?」
私は承知しました。と返事をして防犯ビデオの記録を確認します。昨日の17時3番レジ、時計のズレも加味し5分程前から再生を開始します。4画面にして、それぞれのカメラからレジ付近を写します。もっとも近距離のカメラは顔の判別ができる精度です。本人達が買物をしているのであれば確実に映っている....
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ジャーナルの時間と買っている物から、カメラに写っている人物はすぐに特定ができました。
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〇〇月〇〇日 16:58
今でもクリアに覚えています。男女の連合いが
レジに練炭コンロと練炭、そしてガムテープなどを置いていきます。普通に考えれば....自殺セット...
「店長さんこれです!あー2人で買物来てたんだ。」
刑事達はそう言いながら防犯ビデオの画像を細かく戻したり進めたりしながらデジカメで撮影をしていきます。
私は刑事さん達に操作方法を教えた後少し後ろに下がっていました。
刑事さん達に遠慮したのもそうなのですが、既に自殺してこの世にいない人間が映像の中で動いている事に少し奇妙な感覚を感じたからです。
特にレジをアップで捉えている画像で本人確認が容易にできる精度です。
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「店長さんありがとうございます。」
そう言って燻銀は電話をかけながら事務所の外に出ていきました。
私はしばらく席を外す旨若い刑事に伝えて喫煙所に向かい一服します。今日は何時に帰れるだろうか?そんなことを考えていました。
しばらくして事務所に戻りました。
若い刑事はビデオ映像を見ながら写真を撮り続けています。
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「店長さん....」若い刑事は映像の一点を見つめています。
そして不思議そうな顔をしながら私の方に振り向きました。
「はい、どうしました?」
何かあったのだろうか?困ったような顔をする。
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「一般の方にこんな事、聞くべきではないのでしょうが...
自殺する前の....まさに自殺する為の道具を買いに来た人間が
こんな満面の笑みを浮かべているものでしょうか?普通はもっと絶望に満ちた...嫌、私の経験が浅いだけかもしれませんが。」若い刑事は困惑していた。
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映像に映っている人間が自殺した人間で間違いないようだ。
「私ももちろん専門ではありませんので、分かりかねますが追い詰められた人間にとっての最後は、或いは解放される喜びのようなものがあるのかもしれません。」
私はそう言って防犯ビデオの確認をしました。
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shake
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私はビデオを見て刑事が困惑している理由を知りました。
2人は何か能面が張り付いたような、満面の笑みを浮かべて立っているのです。音声は拾えていませんが、会話する様子でもなく、見方によっては防犯カメラを直視しているような....口角は不自然な程吊り上がり、笑みを浮かべたような細い目で一点を見つめている。
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「薬物ですか?」
聞いてもいいのか考える前に言葉が出ていました。
「今のところは検死結果もまだですし、わかりません」
悍ましい、それが恐らく我々2人の感想でした。
「確かに若干恐怖を感じる程の笑顔ですね..」
私は鳥肌が立ちました。
若い刑事は頷きます。
「死体を見た時も特に何も感じなかったのですが、これにはちょっと....鑑識の報告書の中に財布にはある程度まとまった金が入っていたようですし、それも併せてですが自殺する様には見えないんです。」
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なる程...
だが、本人達が直接自殺の為の物品を購入している以上
他殺の線もないだろう。だから余計にこの若い刑事さんは困惑しているのかもしれない。
自殺するぐらいなら確かに財布にお金を残すだろうか?
ポイントカードも使っている。
この世の最後を謳歌する為に全財産を使わないだろうか?
だがそれも(ニュースで顔写真を見た記憶はないが)自分達が追われていると知れたら、安易な場所には入れないかもしれない。
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「いや、変な事お話して申し訳ありません。」
そう言って若手の刑事は頭を下げました。
私は若い刑事をタバコに誘い、少し休憩しましょうと言いました。自販機でコーヒーを買い、少し落ち着きます。
「この後はどれぐらいかかりますか?」
「はい、入退店の時間と出来る限り、店内の散策している映像があればそれを、できましたらメモリーに映像を頂きたいです。」
「わかりました。」
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時系列を簡単にまとめると
・最初の被害者の死亡。推定時刻は不明(私には)
・昨日17時頃弊社来店し同居人2名が自殺セット購入
・本日朝アパートで遺体発見のニュース。初出と思われる。(遺体が見つかったのは時間的に昨日だろう。)
・本日午前中に隣接する市の公園で車の中から男女の遺体発見。
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この3人に一体何があったのだろうか?そもそも3人で同居?日常的な暴行の後。同級生で20代立派な大人だ...
なぜ彼女は逃げなかったのか?暴行を加えていたのはどちらだ?それとも両方か?なぜ殺害したのか?するつもりはなかったのか?
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防犯ビデオを早巻にしながら正面入口の確認をします。
その頃には燻銀刑事さんも戻ってこられ3人での確認になりました。
「いました、彼らです。16:31入店です。」
その映像をカメラで再度撮影しその後の店内の足取りを出来る限り追いかけていきます。
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足取りを追っていると、どうも真っすぐに練炭などの売場に向かっている様ではなく化粧品を見たり、食品を見たりと通常の買物を楽しむ様でした。私と若い刑事は顔を見合わせます。無言でしたが、きっと最後のショッピングを楽しむ気持ちだったのだろうと。納得させていました。
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16:43
足取りを追っていたカメラには3人の人間が映っていました。酒売場の近くの映像です。
刑事さん達がザワッとして空気が変わりました。ビデオ映像では確かに3人で買物を楽しむ様に見えています。増えているのは同年代と思われる女性。
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同年代と思われる女性......
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いやいや、まさかな....偶然知り合いにあったとか?
しかし、横の刑事さん達は真剣な顔をして見入っている。
まあ、重要参考人というやつなのだろうからと思いましたが
ビデオはレジ以外では顔が判別できる程のアップでは捉えられていない。私には最初に死んだ女性の顔など知る由もない。間違えても幽霊ですか?などとは聞けない...
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「店長さん、この女性とどこで合流してたか、どこかの映像で確認できませんか?」
私は頷くと映像の確認をしましたが、ビデオカメラの死角に入っているのか?合流している場所の特定はできませんでした。
「ではこの女性が入店、退店している映像をお願いします。」そう言った若い刑事を遮るように
「まあ、まずは一通り見てみようや。2人が店を出るまでを。」と燻銀の刑事さんは言いました。
諭された若い刑事は頷き私は引き続き2人の足取りを追います。3人での買物は10分程で、その後はまたも女性が何処へ行ったのかわからないまま2人での買物になりました。
最後に3人でいる映像では、合流した女性が何かを指さしている様な映像がありました。
その後2人は指さされた方向に向かいます。
何を指さしたんだろうか?指さした方向は...練炭の売場がある方向だ...
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その後は真っ直ぐと練炭の売場に向かい該当の商品を持ってレジに向かいました。
16:58レジにて会計
「さっきも思ったけど、こいつら、何でこんなに笑ってんだ?」燻銀刑事さんの言葉に私は唾をゴクリと飲み込みました。
若い刑事さんも何も言わなかった為私はそのまま退店までの足取りをビデオで追います。
17:02分退店
レジから退店までの足取りに不自然な点はありませんでした。駐車場の防犯カメラには自殺に使われたと思われる車は映っていませんでした。
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ふーと大きく一つ息を吐きました。
なかなかしんどい作業だ。だが今度は謎の女性の動向を追わねばならない。
「彼女の服装を再度確認しますが、濃紺のジーンズに白いトレーナーの様な感じでしたか。」
「はい、そんな感じの服装でした。」
「では正面入口から巻き戻しながら確認していきます。」
私は該当の時間から巻き戻しし確認を行なった。まずは早まきの最速32倍速で平均滞在時間の倍である役1時間前までを遡ってみる。
映っていない。
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見落としを考えて16倍速に落とす。
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映っていない
8倍速
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映っていない
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他の入口も同様に映っていない。1時間以上前から滞在していた可能性もあるが...
「店長さん、可能性として考えられる事は?」
燻銀刑事さんの言葉に私は答えます。
「可能性は2つしかありません。一つは従業員の入退店口からの可能性。もちろんビデオは設置されていますが該当の女性と類似する従業員に心当たりはありませんし、警備もおります。もちろん仕事着でもありません。もう一つは1時間以上前から店内にいた可能性です。これはビデオで探ればすぐにわかりますが......」
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結局その日は時間もなく、防犯カメラの映像をメモリーに落として刑事さん達に渡して終了となりました。気付けば時計は23時を過ぎていました。
刑事さん達が帰られた後、店の施錠を実施して店を後にします。
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買物に合流した女性は何者なのか?
この事件には、後日談があります。
あくまで出所不明の噂話程度のものですが。
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後日談
確かに二人は愛し合っていたそうです。
暴行され殺された女性と自殺した男がです。
暴行され死んだ女性のお腹には赤ちゃんがいました。
それが殺害の直接の理由になった様です。
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当初は自殺した男女の同棲で始まり、そこにペットと呼ばれていた女性が入居します。この不可思議な同居の理由は最後まで不明でした。
その内なのか?それとも同居をする前からなのか...男の心はペットの方へ傾いていきました。
想像するに、ペットと呼ばれていた女性は彼に愛されていた、その一握りの希望を持って逃げる事をしなかったのかもしれない。
そして妊娠が発覚し逆上した女に暴行の末....
殺された時の服装は偶然だと思いますが、ジーンズに白いパーカー姿だったそうです。
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以上の後日談は全て確証のない噂話です。
刑事さんとの後日のやりとりで分かったことではありません。
真相は全て3人が持っていってしまったのですから....
無駄に長い話になってしまい申し訳ありませんでした。
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ああ、一つ伝え忘れていました。
どこの入口にも映っていなかったんです。
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3人目の買物客
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完
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作者Shootingstar