七不思議 狐の剥製 〜実話〜

中編5
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七不思議 狐の剥製 〜実話〜

今から27年前の話です。

私が通うことになった中学校には

ある七不思議がありました。

そのうちの一つ「第2理科室の狐の剥製」の話です。

地元では有名な話でしたので同郷の方はご存知の方もいるかもしれません。

夜中に動き出す

とか

触ると呪われる

とか

そういった類の話ではなく、その狐の呪いによって2年おきに在学中の生徒が亡くなるという七不思議です。

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私は3人兄弟の末っ子で3つ上の兄、2つ上の姉がおりました。七不思議は私が入学する6年前から始まります。

ある数学教師が、家に不幸な事が起こるという理由で知り合いから預かった狐の剥製を理科室に持ち込んだことから始まります。

その剥製のあまりの毛並みの見事さ、

息遣いが聞こえてきそうな姿に処分するのが惜しくなった教師は、学校に寄付する形で生物の勉強の為にも、と理科室への展示をしました。

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事件はその年から初まります。

在学中の生徒が亡くなりました。死因は当時は噂程度の話しかなく、病死とも自殺とも言われており事実は確定しておりません。

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次の犠牲者は兄の1学年上の生徒です。この犠牲者の死因ははっきりしています。学校の4階の窓からの投身自殺....

私が入学した当初は使途不明の階段があり、途中から登れないように、奇妙に後付けされたコンクリートで塞がれた階段がありました。塞がる前にその場所から身を投げたのです。

恐らくその現場を塞ぐために後付けしたのでしょうが、これは新たな七不思議を生みました。

自殺した原因は不明でした。

次の犠牲者は姉の世代です。この頃から理科室の狐の話が七不思議として語られていた様です。私はまだ小学生でしたが姉がその七不思議に怯えていたのは今でも覚えています。

犠牲者は2年おきに1人でまだ犠牲者は2人の状況でしたのでこの七不思議が誕生した経緯や、狐との関わりが何処からきたのか....今思えばそれ自体が不思議です。

恐らく感受性の高い一部の子がそれに感づいた...というところから始まったのでしょうか。

不安は的中し姉の代でも1人の犠牲者が出ました。在学中2年生の時に学校でも話題になる程の美少女が悪性黒色腫で急逝しました。進行の早い小児期の癌とはいえ、発見した時には既に手遅れの状態だったようで、発見から2ヶ月余りの人生と余りにも儚く酷い事件でした。

正直に言えば...姉の世代は犠牲者が決まったことに安心もあったようです。好意を寄せる者が多く男子はかなりキツかったようですが。これで3人目の犠牲者...

「次はあんたの世代だよ気をつけな」

そう...2年後の犠牲者は七不思議通りなら私の世代です。この件に関しては兄も姉も本当の話だと、非常に心配しており、偶然でしょ?という自分をよく嗜めていました。

どのような基準があって犠牲者が決まっているのか定かじゃない、とりあえず第2理科室の狐には余計なことはするな

兄も姉もそう言ってはいましたが犠牲者が狐に何かをしたという話はありませんでした。

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私の入学当初から私の世代ではこの噂で持ちきりでした。

次の犠牲者は誰だ...

私はというと興味が湧いてしまった...それが自分の正直な気持ちでした。

初めて第2理科室での授業の際私は不意に狐に近づきます。

それは噂通り、まるで生きているように美しく、気高さすら感じます。周りの皆は無論近づこうとはしません。

私は思わず触りたくなってしまいましたが、友人が肩を掴みました。「さすがにやめとけ。魅入られてるぞ。」

私はハッと我に帰ります。

この日の授業中に騒動が起こります。私も狐が気になりチラチラと後方に置いてある剥製に目をやっていましたが、女生徒の1名がヒステリックに叫び出したのです。

いきなり立ち上がったかと思うと

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「狐が品定めをしてる!」

そう言い放ち泣き出してしまったのです。これには流石に教室中が騒めき教師は宥めるのに必死でした。

後日もその教室での授業はあったのですが大きな問題もなく淡々と進められていきました。

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そして私が1年の秋の事です。

クラスは違いましたが1人の女生徒が登校しなくなりました。理由は最初は不明でしたが、登校拒否など珍しくもない時代でしたし、すぐに狐に結びつけるような事例ではないと思っていましたが。

寒くなる頃だった記憶があります。

ある日私のクラスの仲の良い女生徒が朝から泣いているのを見かけます。声をかけた私に彼女は学校に来ていない女生徒の友人であったようで、友人が余命宣告をされた事を聞かされます。1人では抱えきれないと泣き出す彼女を慰めながら背筋が凍っていくのを感じました。

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犠牲者が決まってしまった。と

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急性骨髄性白血病...それが病名でした。理由を知らない友人達から「朝から女を泣かせる男」との冷やかしを受け流せずかと言って、事実は話せず...ただただ鼓動が早くなっていくのを感じます。

数日後も落ち込む彼女を見ておれず、私はある決意を固めます。

私は彼女の手を取ると、事情を説明します。

「あの狐を持ってきたのは6年前N田(数学教師)だ。噂を知ってる筈だし、然るべき所でお祓いしてもらって預かってもらえるようにN田に話そう」

そう、もしかしたら狐の呪いをもらうかもしれない。が

もし狐が原因なら今からでも友人を救えるかもしれない

彼女は黙って頷き泣き腫らした目に光が灯ります。

そして私達は数学教師のN田に事の詳細を説明し、狐のお祓いを依頼しました。頭を掻きむしりながら、N田は頷き

実は今回の件でそうするつもりで既に神社に持ち込む予定でいたとのこと。私達はホッと胸を撫で下ろしました。

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〜後日談〜

N田は約束通り狐の剥製をお祓いに行きました。

「ここでは無理ですね。」と2件断られ3件目の大きな神社でやっと引き取ってもらえたようです。

事情を聞き預かった神主は

「これはまた、大層な神様をお連れされて。」

と言ったそうです。

狐は神の使い、そして神さまでもある。決して呪いなどではない。

「八百万の神々とはそういうものなのです。」

そう言って神主は恭しく狐を預かったとの事。

そして余命宣告された彼女は卒業まで学校には来れなかったのですが奇跡的に快方に向かい、私達の代では犠牲者は出ませんでした。

それがますます狐の呪いの噂に真実味を持たせた事は言うまでもなく、それから私の息子が通っている現在に至るまで在学中に亡くなる生徒は1人も出ておりません。

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shake

預かった直後に亡くなった神主を除いてですが....

Concrete
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