結婚して長女が生まれたあと、主人の転勤で5年ほど東北で暮らした。
長女が幼稚園に入園し、息子が生まれた年の夏、近所の人とバーベキューのあと花火をした。
赤ちゃんを連れている人は少し離れたところにいて、赤ちゃんを連れていないお母さんたちが、花火をする子供たちの世話をしてくれていた。
私は息子がいたので離れたところにいた。
しばらくして花火をしている辺りがざわつき始めた。
何だろうと思っていると、娘が走って来て私にしがみついてきて、服のすそを噛んだ。
娘は怖かったり不安になると、私の服を噛む癖があった。
私は片手で娘を抱き寄せながら、一緒に花火をしていたお母さんたちに声をかけた。
「何かあったんですか?」
「何って… なんて言うか…」
お母さんたちは皆、言いにくそうに言葉を濁す。
どうしたんだろうと思っていると、他の子供たちが
「花火がお化けになったの」
「花火の煙がね、人間の形になったの!」
と話した。
「煙のお化け…」
皆、口々に話す。
簡単に説明すると、花火をしていたら煙が一箇所に集まって、人の形をとって子供たちのほうへ迫ってきたということだった。
子供も大人も関係なく、花火をしていた人全員が見たようだ。
「見たの?」
私は娘に尋ねた。
娘は小さくうなづいた。
ここは有名な霊山の麓。そういうこともあるんだな。そう思った。
作者國丸