中編4
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呼び出されたもの

とある古本屋にて

A「なんか面白い本はないか?」

B「無いこともないですけど。ちょっと値段しますよ」

B「これです。なんでも悪魔を呼び出せる術式が書いてあるらしいですよ。値段は3000円でどうですか?」

A「お前、自分で言ってて変だとは思わないのか?まず、悪魔なんてこの世の中に存在する訳がない。それに、仮に悪魔が存在するとして、そんな貴重な本を前の持ち主が手放すはずがないだろう。万が一、やむを得ない事情があって手放したとして、そんなものを3000円で売るのは安すぎやしないか?」

B「いや私も商売なんで、その点は考えてますよ。本当に悪魔が出てくるとは思ってません。ただ、この厚さ、紙の古びた状態、書いてある内容を他の本と照らし合わせて、大体の値段を決めてるんです。これ大判ですし、結構本格的な事書いてあるので読み物として楽しめるでしょう。それに本当に悪魔が出てくる本って言って、100万円で売り出した所であなた買いますか?」

A「買わないだろうな。まず信じないし」

B「そうなんですよ。あと、これは古本業者から回されてきた本なので、前の持ち主がどうなったかは知りません。どうです?全部英語でかかれてる所とか、いかにもそれっぽいでしょ?」

A「英語で書かれた悪魔呼び出し本か。まぁ暇潰しにはなるだろう。3000円だな。ほら」

B「まいど」

その日の夜

A「これ凄いな。一部聞いたこともない単語が使われていて読めないが、偽物だとしてもここまで内容が作りこんである物は見たことがない。召喚術もそれっぽい。だまされたと思って一度試してみるか。材料も安いし」

数日後の深夜

A「よし‥魔方陣を書いて‥この呪文を唱えれば‥」

C「こんばんは。私は悪魔です。願い事のルールはお分かりですね?では願いをどうぞ」

A「びっくりした。まぁ鍵のかかったこの部屋にいきなり出現できたって事は悪魔なんだろう。まずは私を大金持ちに」

C「ちょっと。悪魔にも出来ることと出来ない事がありますよ」

A「じゃあ女だ!とびきりの美人を」

C「それも無理ですね」

A「なんなら出来るんだ?」

C「困った人だな。あなたちゃんと召喚術のページ読まなかったんですか?」

A「ところどころ読めない単語があったんだよ。早く説明しろ」

C「手っ取り早く言えば殺し。まああなたに都合の良い言い方をするならば、殺人の類いです。それを叶えてあげましょう」

A「‥なに?」

C「あなた、30歳くらいですよね。そんだけ生きていれば憎い相手の一人や二人いるでしょう?そいつを自然な形で殺してみせます。勿論、あなたが捕まる事はありません」

A「冗談じゃない。確かに嫌いな相手はいるが、殺してほしいほどじゃない。帰ってくれ」

C「えーと、このまま帰るわけにはいかないんですよ。誰か殺さないと。あなたが呼び出したんでしょう?因みに誰も指名しなかったらあなたを殺しますよ」

A「ふざけるな。そんな話があるか」

C「契約は絶対なので。締め切りは夜明けまでにお願いしますね」

A「どえらい事になった」

C「いや、考えてみてくださいよ。誰でも一人殺せるんですよ?しかも捕まらずに。こんな貴重な機会を潰すのは勿体ないと思いませんか?例えば昔のあなたをいじめていた人とか。今の会社の上司とか、ムカつきませんか?スカっとしますよ?」

A「まぁ確かに昔はいじめられていたが、今はわりと生活できてるし正直どうでも良いさ。言われるまで忘れていたよ。会社の上司も確かに嫌いではあるが、あの人いないと仕事回らないんだよ。怒られるのは俺が悪いし」

C「勿体ないですが、なんなら先日駅でぶつかって悪態をついてきた人にしてもかまいませんよ。名前を教えていただく必要はありません。いつどこで出会ったあいつ、みたいなのでも構いません。一人くらいいませんかね」

A「うーん。そうだなぁ。ちょっと考えさせてくれ。そうだな‥いくらそいつが自然な形で殺されて俺が捕まる事はないとしてもだ。やっぱり人殺しなんか出ない‥でもそうしなければ俺が死ぬ。畜生。こうなったのもあの古本屋のせいだ‥いっそのことあいつに‥」

C「いいですねぇ。人が誰を殺すか決めるその顔を見るのが私のやり甲斐なんですよ。その人にしますか?」

A「ちょっと待ってくれ。まだ夜明けまで時間あるだろう?少し一人にしてくれないか?」

C「言っておきますが、逃げようったって無駄ですよ。契約違反はあなたの死で償ってもらいますから。時間になったらまた来ます。それじゃ」

A「ムカつく奴だなぁ。誰もいないならいっそ、この間有名になった10人殺した事件の犯人で、今は捕まっている奴にでもするか?まぁどのみちそいつは死刑が確定しているから、実は俺が殺して死んだ人たちの仇をとったって事にすればまだ精神的にきつくはない‥でも仮にそうした所で、遺族達が俺がそいつに天誅を下したとは思わないんだよな。ならいっそ、俺しか知らない存在で、俺一人がこれを時々思い出してほくそえむ様なそんな人間、いるわけないか‥?いや、待てよ‥?いけるか解らないが試してみる価値は有りそうだな。上手くいけば俺も助かるかもしれない。確か名前を言う必要は無いみたいだし‥おい悪魔!決めたぞ!出てこい!」

C「やっと決まりましたか。誰にするんです?」

A「最後の質問だ。契約は絶対なんだよな?つまり、俺が殺したい奴はどんな存在でも一体は絶対に殺せると」

C「なんか言い方が気になりますが、私の力はかなり強い方なので。それはお約束しましょう」

A「その言葉が聞きたかった。お前が死ね」

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令「それでその後、その二人はどうなったんですか」

幽「さあ」

Concrete
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