中編4
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見えるって実際どうよ

俺の妻。レイミは生まれた時から見える人である。

見えすぎる。

勿論今でも。

家族で出掛けていても二人で家にいても、

突然会釈をしたり、何を見たのか突然笑いをこらえていたりする。

端から観たら結構ヤバイやつだ。

話を聞くと妖精や鬼まで見えるという。

よもや霊能力と言うには過ぎた性能を持っている。

そんなレイミといると飽きないのだが、ジワりと怖い思いをすることがある。

YouTubeやTV番組での心霊映像特集などを観ているときだ。

うちの子供たちも大好きでしょっちゅう観ている。

そんなある日、TVで映っちゃった何とかだったか。

そのような番組があった。

いつものように子供たちと、これは怖い、怖くない。などと勝手に審査していた。

どこからどこまでが本物で、ヤラセとの境界が分からない。良くできているなぁと関心すらする。

程なくしてレイミが洗い物を済ませてリビングにやってくる。

家族全員で恐怖映像なるものを観ているわけだが、

あれはみんなでワーキャー言いながら観るのが醍醐味だと思っている。

しかし我が家の場合、我が妻レイミが席に加わった瞬間に緊張感が増す。

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「お分かり頂けただろうか…」

などというお決まりの台詞が流れると、家族はそろってレイミを見る。

今画面に見えたものは本物かどうかの判定を待つのだ。

「これは違う。」

「あ、これ見えるあるある。」

「めっちゃ嘘やんこれ。」

「へぇー。こんなんカメラで映る事あんねや。」

「これ偽物やけど、作った人は絶対見える人やね。」

その判定は様々だ。

レイミが言うと大して怖くなかった物も、俄然怖くなってくるから不思議である。

そんな時、一つの映像が流れた。

一人の女性が引っ越してきた部屋を携帯のカメラで撮影し、

自らの声で実況紹介している動画だ。

画質からしてガラケー時代のものだ。

レイミがあっ。と呟いたような気がしたが、気にせずに視聴を続けた。

撮影者がクローゼットを開けて中を紹介、赤ん坊のような白い影が出てきていた。俺でも気付いた。

ちょっと不気味だ。

撮影者は撮っている最中違和感を感じたのか、一瞬言葉が止まるも気にせずに実況を再開。

そのままカメラを窓際のベッドの方に向けた。

その瞬間ベッドと窓の間に黒い影が立っていた。

正確には影ではなく、全身灰色?で真っ黒い髪の長い女性。

ベッドと窓には隙間は無いと思われる。

ベッドを貫通するように立っているのか?

不思議な感覚だった。

一瞬撮影者のカメラと実況がピタリと止まり、次の瞬間カメラを落としたのか画面が乱れてゴンっという音と共に床が写し出される。

それと同時に、撮影者が走り去る音と、その叫び声が遠ざかっていく。

という動画だ。

ほーこれはうまく出来てる。幽霊もちょっと他の動画よりハッキリ見えすぎだけど、まぁリアルだったなぁと思った。

そして「お分かり頂けただろうか…」

お待ちかねのスローリプレイ待ちである。

お分かり頂けたも何も、あれは分かるだろw

レイミの反応を見る。

次の瞬間。

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「これ駄目!これダメやって!」

と、急にソファーから飛び上がり、子供たちの前に立ち塞がる。

レイミ「お父さん、チャンネル変えて、早く!」

レイミが取り乱している。

そのあまりの剣幕に怯みながら、俺はすぐ様リモコンでチャンネルを変更した。

子供たちは突然の事で怯えていた。

俺は思わず

「どうしたんだ?駄目って何が?あれこそが本物ってこと?」

と笑いながら聞いた。

レイミは困惑したように言った

「幽霊はどれだけ映ってもいいものよ。だけど、あれだけは映るべきじゃないし、見るもんでもない。」

俺「やべぇやつ?」

レイミが見えるものに対して、これ程構える事は初めてだった。

レイミ「あんな怖い霊見たの子供の頃以来だわ。あー…、マジでビビった。あれは見たら絶対影響あるよ。今頃テレビ局はクレーム電話の嵐じゃない?あんなんTVで流す神経が分からんわぁ。」

「TV越しにウィルス撒いてる様なものよ。マジ迷惑。」

そこまで破壊力があったのか!?

普段生首のガンつけ女や、鉄棒で永遠に回り続けている霊を見ても笑っていたレイミを、ここまでビビらせるとは。

この霊も霊冥利につきるだろう。

まさに霊の鏡だ。

レイミ「あとね、一応言っておくけど。私はYouTubeとかTVとかを進んで観ないのには訳があるの。」

何だろうか。

「心霊特集とかに出ている映像には、偽物も本物もごちゃ混ぜになっててね。本物は普通に笑えるんだけど、中にはもう抗えない程強烈なやつもあるの。思っている以上に結構あると思った方がいいよ?」

俺は少しだけ怖くなったので、無駄な抵抗をしてみた。

「でもTVは電波だし、配信系の動画はインターネット。物理的に繋がっているとは言い難い。

しかもどちらも画面越しだぞ?画面越しに猛獣を観てても、喰われたりしないだろ?」

必死に抗う。

レイミ「ああいうの、霊とは言えないの。霊じゃなくなった何かなの。詳しくはその道の人に聞かなきゃ分からないけど。」

「もはや霊じゃないそれらは呪いとも言える。流石に私でもそう言うのは笑えない。」

「今さっきの動画、始まった瞬間にTVから何かがはみ出してくるのが見えたのよ。」

なまじ見え過ぎる人が近くにいると、恐怖体験よりも背筋が凍る事がある。

皆様も、ネットやTVでその手の物を見る時は、

十分注意して欲しい。

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