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んじゃ、どうやって見えてんのよ

長編8
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んじゃ、どうやって見えてんのよ

ある日レイミにこんなことを聞いてみた。

彼女は見えすぎる人なのである。

「なぁレイミ。前々から聞こうと思ってたんだけどさ、」

レイミ「なぁに?」

相変わらず可愛らしい。

「レイミが見えているものって、どんな世界なんだ?あと、霊とかってそんなに一杯いるの?

俺は霊感がないから否定的な考え方しか出来ないんだよ。」

「例えば本当に幽霊がいたとしても、どれくらい幽霊してんのかなぁとか。ずっと残ってたらそれこそ原始人の霊とか。」

更に続けた。

「人類が意思を持って文明を築いてきた時から幽霊がいるのなら、もうこの空間にぎゅうぎゅう詰めになるくらい、クソいるってことだろ?」

「そもそも、幽霊ってどういう風に見えているんだ?

前も聞いたかもしれないけど、今一ピンと来ない。」

レイミは暫く頭の中を整理しているのか、何かを思い出しているのか、視線を上にうーんと唸る。

レイミ「そうねぇ。見えない人にはマジで分からないのかもしれないけれど。ウチにとっては見えない人の見え方が分からないかも。」

まさかのカウンターである。

レイミ「幽霊って世間が言う程怖くないよ。敵意や悪意が感じられるものもあるけど、そんなのかなり少ない。

幽霊はいつもそこに看板みたいにある。そんな感じ。

等身大のパネルってあるじゃない?アイドルとか芸能人の。

あれって目に付くけど、何かしてくる訳でもないし、特に邪魔でもないでしょう?」

パネル。でもあれはペラい。厚みもない。

人じゃないとアホでも分かる。

レイミ「そうなの。厚みないのよ。そう…立体感はゼロやね。正面からみたら絵や写真みたいに感じる。ホログラムとか、プロジェクターで写し出した様な。でも近くに行ったり回り込んだり、こちらが移動しても常にこっちに対して正面むいてる。」

意味が分からない、難しい。

「正面むいてるというか。背中むけてる幽霊がいたら、どの角度から見ても背中むけてる感じ。でも振り向いたり動いたりするの。3Dの世界で2Dの動画がが動いている感じ。壁や紙やスクリーンじゃなく、空間に。」

空中に写し出された映像が移動してもどんな角度でも同じように見える。そんなディスプレイがあったら、人類の90%はダメ人間になるだろうな。

なんとなくイメージが沸いた。確かに昼間でも夜でも、そんな平面的でありながら、回り込んでも見た目が変わらないトリックアートの様なものが現れたら、人じゃないのは分かる。

レイミ「動的なやつはそう見える。でも静的な、つまりずっと止まっている霊は立体的に見えたりするよ。マネキンみたいにね。回り込んで見たり角度を変えれば、ちゃんと見えかたが変わる。ウチがよく人とまちがえるのは、その静的な止まっている方なの。」

なるほど興味深い。静的な霊と動的な霊。化学みたいな話だ。

レイミ「でも何より、動的な幽霊って、良く見れば体の一部が無いのよ。酷い時は頭が無いとか。頭の後ろ半分が無いとか。片手がないとか。」

レイミ「やっぱり脚がないのが一番多いから、昔から伝わる霊は見えてる人が伝えたんだなって分かる。でも脚がない幽霊は移動できないの。地縛霊ってよく言われるけど、あれはたまたま脚が無くて、たまたま移動できずに留まってるだけなのよ。何も悪いものじゃないわ。」

「脚がなくて自分で移動できないから、人に憑いたりするだけ。たまたま憑いたのが、表面上に影響が出てるのを、悪い霊だと解釈するの。実は良い霊も良くない影響が出たりするのにね。見えない人や間違った半端な霊媒師さんが、悪い霊ですって決め付けてるだけなんだよねぇ。」

脚があれば移動できるのか。脚が無いから憑いてくる。

タクシー代わりってことか。

人に憑くのは、便利で離れる理由が無くなるだけ。であるらしい。

それはそれで怖い。

というか、移動しようとする目的や意志があるものなのか。

レイミ「亡くなった時に身体が欠損したりとか。実はあんまり関係ないから。ランダムなの。なんで幽霊になって欠損場所がくじ引きみたいにランダムなのか、それは私にもわからないよ。」

不思議なものだ。俺はてっきり亡くなった時の怪我や失った部位を引き継いで幽霊プレイしているものと思っていた。

つまり今でいうと、幽霊になったら「無くなる部位ガチャ」

なるものがあって、脚を引いてしまったら大爆死。移動力ゼロ。

そんなイメージなのだろうか。

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「っつーか、何で無くなってる部位と死因に因果関係ないって分かるんだ?」

当然の疑問である。

レイミ「ウチが7歳の時じっちゃんが死んだの、普通に肺がんで死んだのね。でもその1週間後くらいにじっちゃんに遊んでもらったのね。でも頭が無かったから。きっと死因と無い場所は関係ないと思う。」

まず頭の無いじっちゃんと遊んべる神経がぶっ飛んでる。

頭無くても遊べるんだな。

ってか、じっちゃんって分かるんだ?

なにより、じっちゃんは欠損ガチャでまぁまぁ爆死してしまったんだなぁと、

ちょっと残念な気持ちになった。

いやはや、聞けば聞くほど面白いものである。

まぁ、見え方は大体わかった。想像してみたらやっぱり不気味で怖い。ただそれに尽きる。

でもそれより俺が子供の頃から知りたかったのは、

長い人間の歴史で、何故幽霊は飽和状態にならないのか。

である。

幽霊は物理的に存在していない。ならば消滅する概念がない。落武者や兵隊さんとか、様々な職業や時代の霊がいるなら、最古の霊とか見えたとして、ホモサピエンスやダーウィンの進化論のミッシングリンクとか、色んな謎が解けそうで心が踊る。

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レイミ「鬼さんが消してるのよ?知らないの?」

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そんな、ゴミ収集車知らないの?

的なノリで言われても困ります。しかし、鬼っていきなりぶっ飛んだ話だ。

確かにレイミは鬼を数回見たことがあるらしいが、

丁度よい機会なので鬼について聞いてみた。

レイミ「鬼さんの見た目は、本当に伝わっているままね。クルクルパーマで角あって。何より腰に布巻いてるの。虎柄じゃないだけ。赤い鬼さんだよ。」

「大きいし。3mくらいあるのかなぁ。鬼さんは多分、増えすぎた霊を定期的にお掃除している様に見えるんだぁ。一回消してるところ見た事があるけど。金棒でゴシゴシしてた。

ヤッベ見られた。

的な雰囲気で消えちゃったなぁ。」

驚天動地。

それが本当なら、鬼は地獄にいるものではなく、地獄へのリクルート勧誘業者である。

金棒でゴシゴシとか、地獄そのままだろ。怖すぎる。

それと同時に、雲の上で三人の鬼が雑談を交わす光景が頭に浮かんだ。

特に高木ブーさんの最後の落ちがまた古典的で良い。

レイミ「だから、霊が溢れかえってしまうことは無いわ。」

レイミは続ける。

「私が見た中で一番古いのかなって思った霊は、海外で…かなぁ?」

興味深い。是非聞いてみたい。

レイミ「鬼と言うか、日本ではたまたまその作業しているのが鬼さんで、海外でも違うものが似たようなお仕事していると思うのね。でもね。世界中ではそういうお仕事している人がいないと思われる地域がきっと一杯あると思うの。」

「日本のすぐ近くの○○半島の国。あそこは半島全部、霊感がある人は行けないと思う……。」

「霊がきっつきつで、多分飽和状態だし、何より黒い。空港付く前に吐いちゃったくらい。」

「もうなるべく視界の幅をオフにして3日間過ごしたけど地獄だったよ。鬼さんというか。神聖な感覚が1ミリも感じられない、生まれて初めての3日間だったわ。」

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お隣さん、超やっべぇじゃん。

レイミには着陸前から土地全部が黒く見えて、黒い地面の土地なのかと思ったらしい。よくよく見たら黒いと思っていたのは全部が霊だという。オープンワールドのゲームで、まだマップが解放されていない地域、正にその様に見えるんだという。

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先ほど言ったように、身体が欠損しているものが固まりになって、それはもう大陸レベルに密集しているような状態で見れたもんじゃないという。

特に海沿いにびっしりで半島の輪郭にそって真っ黒い感じになっているそう。

考えただでで恐ろしい。

ってか気持ち悪い。

それがレイミには、古いというか、大昔からの何かを感じたらしい。

レイミは日本の神社が霊の整理や鬼に関係している様な気がすると言った。

「日本の神社はどこにでもあるよね?コンビニみたいな感じ。何でこんな所に?って思うよね。そういう意味では神社ってお寺より大事だとおもうの。誰が最初に考えたんだろうって思う。本当に凄い。もう神社大好き。」

レイミはその地獄の半島旅行から帰ってきてから、神社の御朱印集めが趣味になったらしい。神社巡りに度々付き合わされる。

俺は俺で、霊感など無く、何も感じていない癖に、

「あー、なんかパワー感じるわぁ。清らかだわぁ。なんかこう、沸き上がってくるわぁ」

等と雰囲気に飲まれ適当な事言っていたのが超ハズい。

お寺には良かれ悪かれ霊はいるらしいが、神社と言われる場所には入ることはあっても留まる事は無いらしい。

なるほどお寺が供養なら、神社は整理なのか。

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「じゃあレイミ。アメリカにも鬼はいるのかね?」

なんとなく嫌らしい質問をする。

レイミ「アメリカは行ったことがないから分からないけど、イギリスのロンドン行った時にはお掃除する人いたよ。鬼じゃないけど。」

更に興味が湧く。

「鬼じゃない!?では、何が!?」

レイミ「なにかは分からないけど、草刈鎌手に持ってたよ。」

「草刈鎌?大きな鎌じゃなくて?」

レイミ「あのよく言われてるでっかい鎌とかって、あれ超大袈裟だからねwうけるw」

「フード被った、それも3mくらいある人が普通の大きさの鎌持ってゴシゴシしてたの」

またゴシゴシか。

普通の人が見たら失神するだろそれ。

レイミ「あのフードの上着取ったら多分鬼さんだったと思うんだぁ。大きさも似てたし。」

つまり地域によってファッションや道具が違うってことか。

流行りとかあるのだろうか。

その正体ってなんなんだろう。

世界には俺達人間の知らない

【システム】の様なものが存在している事は確かだとレイミはいう。

次元の話になるのだろうか。

しかもこれを言うと色々と不味いかもしれないが、西日本方が安定を感じるようだ。見える人も西日本に多いらしい。

謎だらけである。

兎に角レイミはこう言う。

生きている人達が恐れるほど悪い霊っていうのは、

本当は霊じゃなくて、半島で見た様な処理されていない昔からの【何か】であって、もはや霊ではないという。

処理しなければ時間をかけて、周りに害なす【何か】になってしまう。しかしそうなる前に、もしくはその【何か】を処理してくれる存在があるって事も事実らしい。

日本ではそれが神社や鬼だろうということらしい。

不思議な話である。

謎ばかりだけど、人間には、いや、少なくともこの日本には守ってくれる存在がいるということだ。

ありがたい話である。

皆様も神社は大事に尊び、

年に一度くらい、初詣にはちゃんとお参りに行きましょう。

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