その日、学校から帰宅した娘の様子が変だった。
「お母さん、お風呂洗ってないなら洗うよ」
「ポテトサラダ味付けするね」
「お母さん、夕飯の片付けやるよ」
こんな言葉が娘の口からこぼれでる。
それを見た夫が、
「何かあったのか? いつもと違う。もの凄くいい子じゃないか」
まるで憑物が落ちたみたいだと不思議そうに言った。
当時、高校生だった娘は周りに壁をつくり、口からこぼれる言葉は反抗的なものが多かった。
だからこの日の素直な娘は、異様に見えた。
「学校でいいことあったんじゃない」
「このまま落ち着いてくれるといいね」
などと、夫と話した。
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最近 娘は2階の自室で寝たり、1階の和室で私と一緒に寝たりしている。この日、娘は私と一緒に寝ていた。
深夜 ふと目が覚めた。やっぱり何か変なのだ。
隣で眠る娘に変化はない。
私はもやもやする気持ちを持て余しながら、やがてうつらうつらし始めた。
しばらくして、娘が呻き声をあげた。
「どうしたん?」
聞いても娘は声を出すことができないようだった。
私はああ何か来てるなと思った。
どうしよう…。
これが自分の身に起こっていることなら、全力で抵抗するけれど、今はどうすればいいのかわからない。
よくテレビ番組の心霊特集で、霊に憑かれた人に霊能者が背中を叩いて気合いをいれているのを思い出した私は、
「〇〇(娘の名前)、こういうことはね、気合いが大事なんだよ!」
そう言って、娘の背中をバンと叩いた。
娘はグッと声を漏らして倒れ込んだ。
しばらくして、お母さんありがとうと言った。
娘曰く、学校から帰ってからずっと変な感じがしていて、さっきは別な何かが自分の中に入ってきたとのことだった。でも私に背中を叩かれて抜けていったらしい。
でも素人がこんな適当なことして大丈夫なのかな?
不安になった私は、静かになった娘に話しかけた。
「ねぇ 本当に大丈夫なの?」
r……」
娘は応えない。
「寝た?」
再度 話しかけると
「…大丈夫だから…そっとしておいて」
やんわりと拒絶されてしまった。
多分 大丈夫じゃない。でも今は何もしない方がいいと判断した私は、朝を待って霊能者に相談することにした。
娘の写真を携帯で撮って、霊能者に送信して視てもらった。
娘には同じ年頃の女の子が憑いているとのことだった。
取り敢えず応急処置として、塩入りの風呂に入るよう言われた。
早速 塩入りの風呂で身を清めてみたが、あまり効果はなかった。
その後、霊能者に来てもらって浄霊してもらった。憑いてた女の子は娘に執着しているわけではないので、心配いらないとのことだった。
作者國丸
実話です。素人判断で勝手なことをしてはいけませんでした。娘に憑いたモノが悪質な霊でなくてよかった。
でも、憑かれている時の方が良い子にみえただなんて…。
親としては複雑。
後日、霊能者さんに会ったとき、また別なのが憑いてると言われて浄霊してもらった。
肉体の枷が外れた霊魂は、人であった頃より強く、生きてる人に影響を及ぼすことができるのかもしれない。
だけど私は思うんです。
この世では、生きてる者が一番強い。
でもやっぱり怖い。そんな怖いという自分の気持ちにいつも負けてしまいます。
だって、どうしようもない。
怖いものは怖い。