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旅の計画は入念にするべし。

長編10
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旅の計画は入念にするべし。

この話は、俺が高校卒業して数ヶ月。

お金を稼ぎ出して間もない。

社会人として働いてはいるが、まだ未成年という。

人生で限りなく稀有な時間で起こった実話である。

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高校からの仲が良かった男女のグループ。

綺麗に男4、女4で計8人グループ。

全員大学進学を選ばず、即就職をした。

その夏に中部地方の有名な温泉街に8人で旅行に行くことになった。

俺は入念に旅の支度をする。ボードゲームなんかを選んだり、かさばるのを恐れて最低限の着替えの計算をしたり。

旅の予測をすると、際限無く荷物が増えていってしまう。

今回は2泊3日と言うことなので、たら、ればなどを考えていると、俺にかかればトランクが1つじゃ足りなくなる。

とにかく心配性なのだ。

あくせくしている内に当日、出発の朝だ。

女性陣4人は当然荷物が多い。

男性陣4人は当然俺が一番荷物が多かった。

残り3人は普通、というかA君はリュック1つで身軽そうだった。下着とかは現地で買う派なのだそう。

旅に出る様な荷物じゃない。

まぁ、人それぞれである。

ここでメンバーの簡単な紹介をしたい。

俺は□という。いつもの俺だ。

分かりやすくするために簡潔にしておこう。

男性陣は秀才のA君、親友のユウジ、ガチヤンキーコウヘイ。

女性陣は派手派手なaさん、ユウジの彼女チカちゃん、メガネが可愛いナオミ、ちょいヤンキーのユミだ。

A君とaさん。ユウジとチカちゃんは付き合っていてカップルである。

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車2台で出発して半日かけてゆっくりと目的の県に入った。

2台の車間を途中で乗り換えして、バカ笑いしながら旅をする。最高の一時だ。

途中観光スポットに立ち寄ったり、宿泊先の近くの遊戯施設ではしゃいだり、8人全員がお腹を抱えて笑った。

1泊目の宿泊先に付く頃にはほどよい疲労感と、非現実的な満足感で一杯だ。

A君「はぁー、付いた。荷物をさっさと部屋に放り投げて落ち着こうぜ。」

aさん「まず女子の部屋まで荷物持っていくのが先でしょ?」

俺「え、超めんどいぞ。」

ユウジ「まぁ、いいだろ。女子の部屋の場所も覚えられるしな。」

チカ「その言い方キモいから。」

コウヘイ「お化け出たりして(笑)」

ユミ「そういうの苦手、マジやめて。」

ナオミは終始ニコニコしている。

それぞれが勝手に喋りだしていて、どう会話がされているのか分からなくなる。それくらいワイワイと楽しい時間が過ぎた。

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1日目の夜。

夕食を楽しく頂き、宿自慢の露天風呂を堪能した。

A君カップルと、ユウジカップルはそれぞれ二人の時間を過ごしているようだ。

残されたメンバーは全員集まって卓球や古いゲームセンターで遊んでいた。

怖い話でもしようと、男性陣の部屋に移動する。

1人1話ずつ話していき、丁度一周した辺りか、

部屋の扉が

shake

「バコーン!!!!」

と開く。女性陣は悲鳴をあげ、男性陣も跳び跳ねた。

A君「わーははは!成功!めっちゃビビってやんの(笑)」

ユウジ「脅かしがいがあるのー。」

Aとユウジ共にカップルで帰ってきたようだ。

散々非難した挙げ句、その後も怖い話を続ける。

何だかんだで夜も更け、女性陣は部屋に戻っていき程なくして全員が眠りに付いた。

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2日目

次の目的地へと向かう。

修学旅行とは違い、もう大人たちの管理が及ばない自分達だけの修学旅行の気分。全てが自由時間。

新鮮な非現実的な状況にはしゃぐ心が押さえきれない。

8人全員が終始笑顔で笑いが止まらない。

笑い疲れて頬の肉のあたりが痛くなっているくらいである。

フリーの買い物タイム。

男性陣はチャチャっと買い物を済まし、時間をもて余す。

全員煙草に火を付け、缶コーヒーを片手にくつろいでいた。

ユウジ「いやぁ、何かいいよなぁ。こういうの。」

コウヘイ「あぁ、高校生の時とは違って自由感が半端ねぇ。」

A君「あぁ、こうやってまたみんなで色々なところ行きたいよな。」

各自で何となく旅の感想を言う。

社会人になって間もないが、まだ学生気分が抜けきっていなかった俺達には、こんな旅は夢のような時間だったのだ。

A君「このメンバーで次は関東とか行ってみたいな。ほら、めちゃ都会に。あのー、スクランブル交差点のところ。」

コウヘイ「渋谷だっけ?あそこ。どうやっていくねん。」

ユウジ「バイクで行けたら最高だろうな。まぁ、女子が邪魔だな。」

俺「そうそう、男だけならそれこそどこへだって行けるはずだ。」

そんな会話をしていた。

煙草を3本吸い終わる頃には女性陣が買い物を済ませてやってきた。

ユミ「さて、もう2泊目のお宿に向かいましょうか。」

ナオミ「今日の旅館は夕食の評判が良いから楽しみ……。」

俺「それは良い!さっさと行こうぜ!」

この時、実のところ俺はナオミちゃんに密かに好意を寄せていた。

なるべく同じ車に乗れるように、しかもみんなにバレないように、微妙に距離感を調整しながら旅をしてきた。

この2日目の夜には告白しようと目論んでいた。

「今夜が勝負だ。」

心に決めていた。

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宴会場でみんなで夕食。

笑いが止まらない。

何がそんなに笑えるのか。

俺達8人分の御膳が並んでいる大広間、宴会場。

その広さは体育館の半分くらい。

かなりの広さである、にも関わらず8膳。

そのバランスの悪さに8人全員が腹を抱えて笑っていた。

A「あー、腹いてぇマジで。声が響いてるよ。」

俺「これは不意打ちだな、あー笑った。」

それぞれが落ち着くまで賑わった。

勿論ご飯も美味しくいただいた、山菜の天ぷらとかもう絶品、ししとうの天ぷらとか100個でも行けそうだ。

食後は昨夜同様、男女分かれてお風呂タイムである。

男4人は一旦部屋に戻り、風呂支度をして浴場に向かう。

するとAは。

A「あ、ちょっと先行ってて。俺アトピーの塗り薬忘れたから、取りに戻るわー。」

と部屋に戻っていった。

3人で浴室に向かう。今夜の1泊で楽しい旅行も終わってしまうのだなと、浴場に向かっている最中でもう寂しい気持ちになっていた。

コウヘイ「あー、明日には地元帰るのかぁ。めっちゃイヤやなぁ。」

ユウジ「こんだけ楽しい時間過ごしたからな、会社行ったらもう辞めたくなるわなw」

俺「もういっそこのままどこかに逃げたいですわ。」

そんな愚痴を漏らしながら浴場の扉を開けた。

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たっぷり入浴を楽しみ、上がってきた3人だが結局Aがまだ来ていない事に気付く。

ユウジ「結局あいつ来てないよな。寝ちゃったのかな?」

コウヘイ「いや、女風呂でも行ったんじゃね?」

そんな感じで流しながら部屋に戻った。

ユウジ「あれ、部屋開いてる?」

ユウジがそう言った先、見てみると確かに部屋のドアが10センチ程開いている。

コウヘイ「おいおい、Aのやつ。開けたまま寝てんのかよ。俺らの荷物とかもあるのに。」

はぁー何やってんだあいつ、という空気を全員で放ちながら部屋へと入った。

だが何かがおかしい。

部屋が暗い。

でも部屋にはもう布団が4つ敷かれていたのは分かった。

その1つ、誰かが入っている。

物凄い勢いで揺れていた。揺れていたというよりは痙攣しているような、震えているような。。。

ユウジが一目散にめくりあげた。

ユウジ「おい!!誰だ!何だよおい!!」

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そこには丸くうずくまってガチガチ震えているAの姿が。

尋常ではない。震え方がわざと大袈裟にしても出来ないだろうレベルで震えている。

Aはこちらを見た。次の瞬間俺達全員に電撃以上のものが身体を突き抜けた。

ユウジ「A……なのか?」

こちらを見たAは髪型服装は間違いなくAである。

しかし、その人相はもはや別人であった。服が違っていたら100%見知らぬ他人レベルだ。

何より、

そう何よりAはその時。

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shake

全身、顔面に至るまで血塗れであった。

そしてAは老婆のような声でこう言った。

A「はぁはぁ、なぁおい。遂に。遂にやっちまった。はは。」

狂気の顔だ。

コウヘイ「おい?A?しっかりしろよ。どうしたんだよそれ!」

ユウジもコウヘイも流石に動揺していた。

A「なぁ、俺やっちまったよ。」

Aは繰り返していた。

ユウジ「おい。やっちまったって。何をだよ。」

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shake

A「aちゃんを殺したんだよぉぉ。分かれや!それくらい。分かるやろ!!??」

全く理解できない。何を言っているんだ??

全員困惑していた。ドッキリか?

一瞬ドッキリを疑い女子を探すが、何よりAが普通ではない。

A「中庭の真ん中にある。でかい木の下で。a刺したんだよ!

あいつが悪いんだって!!!!お前ら知ってたんだろうが!!!」

Aが俺達をなぜ責めているのか分からないし、何が起きているかも分からない。

でもユウジもコウヘイも走り出していた。

中庭に行かなければ!!何故かそう思った。

当然俺も走った。言葉を交わすでもなく。

早くこの嫌な予感を勘違いに変えたかった。

祈った。

祈った。

嘘だ。

面白い冗談だ。

中庭ドッキリだ。

死んでる。

殺されてる。

刺されてる。

嘘だ。

祈った。

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中庭に着くなり、柵という柵を飛び越え、真ん中の木へ向かう。辺りは暗く、人もいない。

先に行っていたユウジとコウヘイが立っていた。

下を見ている。

嘘だ。

嘘だ。

ドラマや映画じゃあるまいし、

俺嫌いなんだよ、殺人とかサスペンスとか。

あのコナンもそうだ。人を殺める事を簡単に表し過ぎている。

嫌な冗談のようなものだ。

この際このウソみたいなドッキリもアニメだったら良いのに。

本当なのか?

嘘だ嘘だ。

勘違いであってくれ!!!!!!!

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その木の下に横たわっていたのは間違いなくaさんだった。

無表情。

どこを見ているのか分からない目。

糸が切れた人形みたいに倒れていた。

ナチスのマークみたいに。

私服か浴衣か、真っ赤で分からない。

髪の毛もベタベタしている。

何よりリアルなのは、両手のひらがパックリ開いて血塗られていた。手のひらが紙一重で繋がっている。

こんな傷見たことがない。

作り物?

実際のところ人が亡くなったその仏様は親族の葬式で見たことがあったが、血を伴った遺体を見るのは初めてだった。

いや、まだ確認していない。

ユウジがしゃがみこむ。

ゆっくりしゃがんだつもりだっただろうが、途中でカクンと膝を付いていた。

完全に抜けている。

俺もそうだった、脚がビーンと痺れている。

腰を抜かすとはこう言うことに近いのだろうか。

コウヘイ「おい!!人呼んでくるぞ!!??だから触るな!!」

コウヘイは走っていった。

俺とユウジは一切動けずにいた。

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数時間後。

警察が殺到し、俺達は別々に連れていかれた。

犯人であるAは部屋でまだうずくまっている所を逮捕されたらしい。

俺は事情聴取で色々と聞かれた。

涙が止まらなかった。

何を聞かれても話す事は旅の楽しい話ばかりだった。

状況は俺達3人は同じことを言っていて、信憑性があるらしく容疑はかからなかった。

警察曰く、女性陣たちの取り乱し方が半端ではないらしく、もう少し時間がたったら全員集まって話をしたいとの事だ。

現実味がサラサラない。

何よりあのaさんの姿が偽物にしか思えなかった。

床で見るのとは違う仏様を初めて見るからか、

嘘だとしか思えない。

水分すら身体が受け付けない。

血を思い出すのだ。

あれは見たものにしか分からない。

よくドロドロと表現される血だが、

実際はもっと水のように流れ出る。

血で水溜まりができる。

ドラマや映画の殺人事件の遺体はウソだと分かった。

何時間たっても身体中の力が抜けている。

意識も朦朧としている。

時間の感覚もない。

気付けば全員1つの部屋に集められていた。

全員死人の様な顔になっている。

一人の警官が入ってきて説明を始めた。

犯人の鞄の中身を全員でチェックしてほしいという。

勿論触れない。見るだけだ。

鞄から1つ1つ物品を出すが、

入っていたのはビニール袋2つ

そして、ロープ。ガムテープ。

新品の包丁の開封あとだった。

荷物はそれだけだった。

警察の意図はすぐにわかった。

見せたいのは最後に見せたそれだ。

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レシート。

それら全部を買ったホームセンターのレシート。

Aはこの旅行の出発する前の夜に、

これらを購入し、

これら【だけ】をリュックに入れて

旅に来たのだ。

つまり。

最初からaさん、もしくは誰かを殺すつもりで旅に来ていた。

そして旅の最中には率先してふざけて、楽しんでいた。

爆笑してた時も、みんなで語らってた時も、仲良く夕食を食べていた時も。旅行中ずっとずーーーーっと殺意を込めていたのだ。

そのリュックに凶器が入っている事なぞ、誰も知る由もない。

俺もリュックを持ってやったりした。

aさんに持ってもらっている時すらあった。

Aに「ありがとう」などと感謝さえされた。

ゾクゾクと背中に得体の知れないものが走り、

吐き気がした。

チカちゃんとユミは口をハンカチで押さえて走っていった。

ナオミちゃんはひたすら目を覆っている。

全員、その後の記憶があまりない。

ナオミちゃんに告白どころではない。

3日間くらい帰れなかったのだけおぼえている。

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人はこうまでも偽れるものなのか。

偽る、なんてもんじゃない。

俺達は誰と旅をしていたんだ。

何を信じれば良いと思う?

考え方次第では、見知らぬ他人といた方が安全とすら思える。

何をどう後悔しても避けられない。

ああしていれば、こうしていれば。

そんなものすら凌駕してくる恐怖。

隕石と同等の規格外の予想外。

真の絶望である。

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オチも無く、怖くもないかもしれないが。

この話で言いたかった事は、

近しい人でも何を考えているか分かるはずもなく、

分かるはずがないから何が起こっても不思議ではない。

と言うこと。

事故や不幸は

【たまたま起きる】

ではない。

【たまたま起きないでいるだけ】

なのだ。

本来すぐ隣にある絶望が【たまたま発動していない】

だけであることを、常に忘れてはならない。

兎に角、それを忘れないでほしい。

Concrete
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コロナ禍てろおかしくなっている今、あり得ないことが起こる....読み終えて感じました。
怖え!

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