【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編4
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君はイイ子

今宵も足を運んでいただき、本当にありがとうございます

ニセ川ジンジュです

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今夜はね

いつもとはちょっとばかし毛色が違うお話を

させていただこうかなぁと思います

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これはね

仮に…Iさんとさせてもらいますが

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Iさん、幼い頃にお父さんが出てっちゃってからは

母一人子一人の生活してたんだそうです

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子供ってのは残酷ですね

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お父さんが外に女ァ作って出てったってんで

Iさん、ヒドくいじめられたそうですよ

本人は、なぁんにも悪くないのに

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理由もなくぶたれたり、物を壊されたり

そりゃあ、ヒドいもんだったそうです

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でも、Iさんだって

いつまでもやられっぱなしじゃいられないってんで

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悪い友達なんかとつき合うようになっちゃって

とうとうグレちゃった

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毎日毎日ケンカに明け暮れては

ケガしたり、させたりして帰ってくる

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やり過ぎて、たまには警察のご厄介になる……

なんてこともあったんだそうです

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元々ケンカが強かったIさんは

とうとう鼻つまみ者ってヤツになっちゃった

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でも、そんなIさんを

お母さんだけはいっつもかばってくれたんだ

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「Iちゃんはホントはいい子だよねぇ」

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そう言っては、Iさんの頭をやさしく撫でてくれる

でも、Iさんも男の子ですから、そういうのは恥ずかしいわけです

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そんなお母さんのやさしさに反発するように

Iさんはどんどん悪い方に行っちゃった

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勝手に高校も中退しちゃってね

毎晩毎晩、夜遊びして家にもあんまり寄りつかなくなっちゃって

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挙げ句にゃパンクロッカーってんですか

それになる!ってタンカ切って家を出てっちゃった

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ギター担いで上京したはいいが、金なんかない

でも、Iさんは悪いことには絶対に手を染めなかった

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実家を離れたIさんは、今さらになって

お母さんのありがたさに気づいたんですね

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いくつもアルバイトをかけ持ちして生計を立てながら

やっと本気で打ち込める大好きな音楽……

パンクバンドで必死にがんばった

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それで、ようやく

ちっちゃなライブハウスで単独ライブが出来るようになったんだ

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その時、初めてIさんはお母さんに手紙を書いたんだそうですよ

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小っ恥ずかしいから、用件だけ書いた短ぁい手紙です

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いついつに何処そこで自分のバンドのライブをやる──。

それだけ

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あっさりしたもんですよ

元気か?なんて言葉一つ書かないでね

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それがちょうど2000年のこと

20世紀最後の年ですよ

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Iさんのライブの当日です

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ステージでギター鳴らしながら

ヒャッハー!!!!

なんて、ライブは大盛り上がりの中

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Iさんは客席にお母さんの姿を探してた……

50近い母親がパンクなんて聴くわけないのにね

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一生懸命ライブをやり遂げて、ステージを降りたIさんに

血相変えたライブハウスのオーナーが駆け寄って来て言うんだ

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shake

「おい!お前の母さんが死んだってよ!すぐに行ってやれ!!」

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ライブハウスのオーナーから軽ワゴン車を借りて

Iさん、着替えも忘れて実家へ車を走らせた

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何だかんだ二時間くらい車ぶっ飛ばして実家へ着くと

実家の仏間にはお母さんが

真っ白い布を顔にかけられて横たわっているんだ

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白い布をゆっくりめくると

いつもの優しいお母さんが、少ぉし笑顔を浮かべたまんま

静かに眠るように冷たくなってる

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その顔見て、Iさんは茫然とした

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バカな自分だけど、どうにか心を入れ替えて

好きな音楽でやっと飯が食えるようになりそうだった……

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照れくさいけれど、親孝行なんてのも

これからやっていこうか

そんなことを思ってた矢先のことですからね

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優しかったお母さんの死に顔を見つめながら

目に熱いものが込み上げてきた時

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親戚の伯父さんがIさんを無理やり立ち上がらせて

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shake

バキッ!!!!

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一発ぶん殴ったんだ

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伯父さん、泣きながら

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「テメェ!今さら何しに来やがった!

コイツがどんな思いでテメェを心配してたかわかるか!!

そんなふざけたカッコして親の亡骸の前に出てきやがって!!

とっとと出て行きやがれ!!バカ野郎が!!!!」

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伯父さんの気持ちもわかりますが、Iさんもいきなり殴られたもんだから動転してたんですね

頭にカッと血が上って、そのまんま実家を飛び出してった

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Iさんは宛もなく車を走らせながら

浮かんでくるのは、お母さんの顔

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「Iちゃんはホントはいい子だよねぇ」

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あの優しい言葉を思い出して、田舎道を走ってたら

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フワッ……

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誰かに頭を撫でられた感触がしたんだ

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ハッとしたIさんが車を止めて後ろを振り返る

後部座席には、だぁれもいやしない

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気のせいか……

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涙を拭って、また車を走らせるIさん

思い出に浸りながらしばらく走ってると

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フワッ……

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また誰かが頭を撫でる

そんな感触が確かにあったんだ

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shake

「お袋!!」

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今度はルームミラーで後ろを見てみるけど

やっぱり後部座席には、だぁ~れもいないんだ

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そんなことを何度か繰り返してる内に

Iさんはお母さんとよく行った

河原の土手に辿り着いたんだ

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車を脇に駐めて降りると

少し肌寒い夜風がIさんの頬を撫でてった

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休みの日にはここでお袋と弁当食ったっけなぁ……

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昔のことを思い出しながら

青草が茂る土手に腰を下ろしたIさんは

そのままゴロォンと横になる

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自分の腕を枕にして、星空を見上げたIさんは

さっきから頭を撫でてた正体がわかったんだ

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それで、思わず笑顔になった

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Iさんね

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モヒカン頭だったんで天井に髪の毛当たってただけだったんですよ

Concrete
コメント怖い
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@りこさま

オチありきで作ったので合ってるか不安でしたが、合ってたようで安心しました♪

心霊いい話みたいな雰囲気で書いてみましたが、こういうのもたまにはいいですよね!

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