某近隣国に旅行に行った際の出来事。
団体ツアーで日本人10人ほどと気さくな現地ガイドがついており、皆ともすぐに意気投合した。
その国は国名こそ伏せるが日本との関係はあまり良くなく、現在では旅行などはやめるよう言われているが、その頃はまだそれほど厳しくはなかった。
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当日、都市部の様々な観光地を巡る予定で、まず最初に指導者の銅像がある公園に行くことになった。
その公園は国の指導者の巨大な銅像が祀られているところで、国民や観光客はそこに献花し挨拶をする事が常識となっている。
その日は記念日のようで、多くの軍人や住民が訪れており賑わっていた。
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私達はまず入り口で花を買い、献花を行うべくその銅像に向かった。
皆でぞろぞろと献花台に向かっている最中ふと周りを見ると、妙なものが見えた。
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煌びやかな民族衣装やスーツなどに身を包んだ住民たちの人混みの中に、その場に似つかわしくないような乱れた髪とボロボロの民族衣装を纏った女性がとぼとぼと歩いている。
最初はこの国の貧しい人が献花に向かっているのかと思ったが、それにしてはさすがに汚れた格好をしているし、そもそも貧しい人はこの場に来る事は許されないはずだと思って、奇妙に思いながらもその女性と同じように献花台に向かった。
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献花台に花籠を置き、銅像に向かって礼をした後、ふとまたその女性の方を見ると、その女性は献花台を超え、銅像の台座部分に近づいていく様子だった。
最早そこは立ち入り禁止で見つかれば逮捕されかねないその行為に驚いたが、なぜか誰もそれに気付いていないようだった。
そして台座の側面部分に差し掛かると、そのまま台座の中に吸い込まれるように消えていった。
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私は何かとんでもないものを見たような気がして、そのツアー中は少し気が重くなってしまった。
後で周りの人に聞いてみると、一緒にツアーに来ていたAさんもおなじようなものを見たと言ってきた。
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Aさんが見たのは女性ではなく男性で、同じく汚れた民族衣装を着ており、台座の中に消えていったという。
Aさんは所謂見える人だそうで、やはりその人達は幽霊だとの事。
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なぜあの場にいたのか分からないが、神のように崇められる指導者の銅像に吸い込まれていったのは何か意味があるのだろうか。
作者༻ 𝓜𝓲𝓼𝓪𝓰𝓲 ༺