僕が中学卒業まで住んでいた家の話。
4年前に火事で燃えてしまい、今はもう更地になっているのだがこの家には何かがいた。
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先日姉家族が遊びに来た際、珍しく姉も酒を飲み滅多にしない昔話に花が咲いた。
僕しか覚えていないのでは?と思っていた出来事も意外と姉も覚えていて、大いに盛り上がった。
そんな思い出話のひとつ
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当時の田舎では珍しく、うちは共働きの家庭だった。
両親二人共の帰りが遅くなる事は殆ど無かったが、年に何回かは3歳上の姉と僕だけで過ごさなくてはいけない夜があった。
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あれは僕が小1の時だったか。
母が用意していった夕食を食べ、風呂も済ませ、そろそろ寝ようかという時間だった。
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だが、この日はなんとなく姉も僕も目が冴えてしまって眠れそうになく、
このままどちらかが帰って来るまで起きていようかという事になった。
もう子供が観るようなTV番組も終わってしまい、する事のなくなった僕たちは「あっち向いてホイ」を始めた。
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姉はあまりこういった遊びに付き合ってくれなかったので、僕はいつになくはしゃいだ。
「じゃんけんぽん!」
「あっち向いてホイ!」
勝ったり負けたりを繰り返すうちに、段々とテンポが速くなってくる。
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「じゃんけんぽん!」
「あいこでしょ!」
「あっち向いてホイ!」
「じゃんけんぽん!」
「あっち向いてホイ!」
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目まぐるしく攻守が入れ代わり、最早どっちが勝ったのか負けたのかも解らなくほどのテンポで、僕たちはお腹が捩れるくらいゲラゲラと笑いながら「あっち向いてホイ」を繰り返した。
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「じゃんけんぽん!」
「あっち向いてホイ!」
「じゃんけんぽん!」
「あいこでしょ!」
「あいこでしょ!」
「あっち向いてホイ!」
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そんな狂乱の中、電話が鳴った。
父か母、どちらかからの電話だ。
帰って来る。
姉と一緒とはいえやはり寂しかったのだろう、僕は電話に飛び付いて受話器を取った。
父だろうか、母だろうか。
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「じゃんけんぽん!」
受話器の向こうから知らない女の楽しげな声が届いた。
作者Kか H