鑑定団は揃って「ウーン」と困惑していた。
某家宝価格付け番組に送られてきた一品は、
これまで「現存しない」というのが美術史学・考古学での
定説だった。
中ノ島:「ひどい仕事してますね~」
若手:「『値段つけられません』というやつですか…」
N大学学長:「プロデューサーの判断を仰ぎましょう」
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名刀「不動行光(ふどうゆきみつ)」
あの織田信長の愛刀であったとされる。
信長数々の名刀コレクション群でも最も愛用され、本能寺の変直前に、寵愛していた森蘭丸に授けられたが、
主人である信長ともども焼け崩れ、現存する黒塗りの鞘(さや)も後世の復元とされる。
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鑑定団は当初は贋作と疑ったが、違った。
名物鑑定員・中ノ島の義理の妹は霊感があり、その刀を一目見るなり顔面蒼白になり、こう言った。
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その刀はゆうに一万人は斬っている!
そのほぼ全てが戦ではない、
生きた人間での試し斬りと見せしめの様な処刑だ
怨念が何重にも巻き付いている、刀身が見えないほどだ
信長も振るっていたが、他にも幾人もの武将がこれで人を斬っていた、
その使い手には平安の頃の武将もいる
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現代の日本では最凶の呪具だ
鑑賞するだけで祟られる!
触れればすぐさま憑き殺される!
そんなものを取り出し、鑑定し、値段をつけて全国放送!?
…とんでもない
関係者全員、いや、日本国が滅びるぞ!!
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義理の妹が言うに、被害者が出ていないのは、
幾重にも封印が施され、重厚なケースに丁寧に保存されているからだという。
保存状態は良好に違いないが、
もし開封した場合は…
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スタッフや鑑定団の間でも彼女の霊感は有名で、しかも当たると評判だったが、
流石に日本が滅ぶというのは信用されなかった。
美術商「巣文閣」社長:「少なくとも、
送り主は存命中の方だからなあ」
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プロデューサー:「俺もそう思うが、
…メチャクチャ嫌な感じがするんだよな、
絶ってー開けちゃダメだぜ、みたいな…」
ディレクター:「同感だ。
万が一でも放送事故なんて御免だ。
おい、お前、他にテープ無いのか?」
AD「あっ、これがあるんで、放送はいけると思うっす」
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結局、件の名刀は、それを発見し、値段も付けようとした部分ともどもお蔵入りとなり、
世に知られることは無かった。
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中ノ島「いい仕事(カット)してますね」(背中に生首を乗せながら)
編集担当「あ、お憑かれ様です(この人はもう長くはないな)」
作者三日月レイヨウ
参考文献:『剣技・県術3 名刀伝』牧 秀彦著、新紀元社
現存しない一振りというあたりは事実です。
もしもこんなエピソードがあったら怖い、という噺です。
鬼○の刃とは劇場版含め一切関係ありません。
申し訳ございません“〇| ̄|_