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Nくんの怪異~初投稿編~

長編9
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Nくんの怪異~初投稿編~

Nくんは、地方で農業を営む私の友人の一人だ。

平屋で8部屋も有る日本家屋に、一人住んでいる。

頑固で偏屈なところや、口の悪さはあるものの、根は真面目で曲がった事の大嫌いな…

何より、人一倍、正義感溢れる“漢”(おとこ)だ。

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Nくんは無農薬の野菜を作りつつ、畑を荒らす野生の動物たちの駆除も行って来たそうだ。

駆除と言っても狩りをする訳ではなく、害獣が通りそうなけもの道に罠を仕掛けるそうだが、時にはバッタリ大きなイノシシに出くわす事もあり、そんな時は格闘になることもあり、イノシシの眉間に、いつも所持している自作のナイフを突き刺し、仕留めたことも有ったと笑っていた。

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罠にも色々な種類があるそうで、Nくんが使用しているのは檻の中にエサを仕掛けて置き、中に害獣が入ると柵が降りて来ると言うタイプだそうで、生き物好きのNくんは、捕まえた害獣の殆どは、ひっそりと山へ向かって放しているそう。

だが、中には針金で輪っかを作り、その中に動物が足を踏み込むと輪っかがしぼみ、自力では抜け出せないか、自らの足を捨てるしか、逃れる術はないような罠を仕掛ける者もいるそうだ。

小さな動物なら首に鋭く巻き付き、そのまま死に至る様な怪我を負わせてしまうと言う危険な罠だ。

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元来、動物好きのNくんからすれば、害獣駆除も好んでやりたくない上、害獣ではない動物の命まで奪う事に抵抗が有ったらしく、針金で作った罠に掛かったウサギやタヌキやウリボウなどは、黙って罠から解き放していたそうだ。

そんな罠を仕掛ける人間に対しても許せない気持ちでいたからか、誰に言われるでもなく、許可なく山に入り込み、密猟をする者たちを取り締まるべく、いざとなった時の為に畑仕事の合間に訓練をしていたと言う。

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相手はボーガンや猟銃を持って他県(同県かもしれないが)からやって来る無法者である。

いざ立ち向かうとなると人知れぬ山の中の事・・・。

どんな怪我を負うかも分からない。

実際、何度か危険な目にも遭っていたと言うが、田舎暮らしをした事のない私には、まるで映画の中の事の様に現実味を感じる事が出来ない。

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そんなNくんは、自身を磨く為に、何回かF樹海に単身修行に出かけたそうだ。

最低限の食べ物と飲み水を用意し、意気揚々とハイキングコースを外れ、樹海の奥に足を延ばした。

すると、自殺者の多い場所柄、死に場所を求めている人を思い留まらせる為にパトロールをしている人に出くわしたらしい。

大きなリュックを背負い、一人で彷徨っていたNくんは自殺志願者と勘違いされ、いくら説明をしても納得してくれずほとほと困り果ててしまったそうだが、最後にはパトロールの人も理解をしてくれたそうだ。

そこまでは私も大笑いして話を聞いていたが、その後のやり取りを聞き、背筋が凍った。

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「知っての通り、ここは自殺の名所だから・・・。

死に場所を求めて訪れる人も多い。

だけど、そんな人間を狙う異常者もここには多く訪れるんだ。

だから、これ以上深く入るなら・・・生きている人間にだけは出くわさない様に気を付けろ!!

自殺者だろうが誰かに殺害されたのだろうが、遺体はすぐには見付からない。

だから人を殺してみたい異常者には、ここは天国みたいなものなのかもしれない。

もし、生きている人間に出会ってしまったなら、四の五の言わずに逃げろ!!!」

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・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

都市伝説の様なそんな話・・・。

現実だったとは・・・。

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Nくんはと言うと、大してビビる事もなく、樹海の奥で、太い、枝の大きく分かれた木を見付けると木に登り、途中で見付けた不法投棄の木材を運び、それをツリーハウスの床に仕立て、枝と枝の間に上手く挟まる様にビニールシートで雨風を防げるような物を作り、昼間は樹海の中でトレーニングをし、夜は木に登り、就寝していたそうだ。

そんな日が数日経ち、その日も暗くなると木の上に登り、ツリーハウス(?)の中で持参した寝袋に包まって寝ていたら・・・。

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外で、小枝がパキパキと折れる音がする。

誰かがそのテントに近付いて来ている気配がする。

自殺者を狙う異常者かと思い、懐から自作のナイフを抜き、息を殺して耳を澄ませ、その気配を辿っていた。

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木で覆われた樹海の中は、月の明かりも届かず夜目が効くNくんでさえ何も見えない。

小枝を踏み締める足音は一人ではなく数人居るようだ。

しかも、確実にNくんのいる木に近付いて来ている。

さすがに大の男を3~4人も相手にしたら勝てるか?自信はなかったそうだが、負けたら命はないかもしれない。

そう思い、ひたすら息を殺して闇の気配だけに神経を集中させていたと言う。

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そうこうするうちに、自分のいる木の真下で足音が止まった。

相手がどう仕掛けて来るのか、Nくんはいつでも戦えるように臨戦態勢を整えて待った。

しかし、その者たちは、木の下に来たら動きを止め、無言のまま、足音さえも聞こえなくなってしまった。

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どれくらいそうしていたのか・・・。

そのうちに空はうっすらと白み始めた。

Nくんはテントの隙間から足音の消えた木の下を見下ろしたが、そこには誰の姿もない。

さすがのNくんも気味が悪くなり、その日のうちに予定よりも大分早く帰還したそうだ。

生きている人間じゃなくて良かったのか・・・

それとも生きている人間の方がマシだったのか・・・

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Nくんは、どうやら霊感が有る様で・・・

冬の雪降る中、山から家に向かって下って来る道すがら、ふと振り返ると・・・

そこには膝が隠れるくらいの丈の着物を着た坊主頭の子供が、ニコニコ笑いながら立っていた。

山に続く道と道の分岐点辺りで、年の頃は7~8最くらいなのだろうか・・・笑いながら手招きをしていたそうだ。

「こんな冬にあんな薄着で寒くねーのかよ!?」

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平成の時代では見かける事もない格好をした子供に、「俺んとこ出ても何もしてやれねーからな」そう言うと、向きを変え、トボトボと山を下って行ったそう。

それから数か月後、子供の骨が見つかったそうだ。

坊主頭の子供が手招きをしていたその場所から・・・

古い時代の人骨らしく、「誰かに見つけて欲しくて俺んとこに出たんだろうなぁ・・・。

でもよ~何でオレを呼ぶんだかな!一緒になんて行く筈ねぇ~だろうが?ガハハ!!」とNくんは笑い飛ばしていたっけ。

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それに、Nくんの自宅もお化け屋敷なのだ。

床の間のある部屋は、廊下から襖を開けただけでNくんの家で飼っていた猫は尻尾を冬のキタキツネの様に膨らませ、部屋の中に向かい、いつも低いうなり声を上げる。

Nくんがふざけて猫を部屋の中に放り込んだ時には、ギャーッと悲鳴のような声を上げ、ジリジリと後退りしながらゆっくりと部屋の中から走り出て来たと思ったら、踵を返し、家から飛び出して行ってしまった。

(このお化けの正体は、後に投稿したNくんシリーズで書いています。)

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Nくんの家の庭は、家をぐるりと囲む様に砂利を敷き詰めている。

男の一人暮らしなので、夏場も網戸を閉めるだけで戸締りなんてする事もない。

と言うより、いくら都会より涼しい田舎とは言え、エアコンもない家は窓を閉めてしまったら暑さで眠る事も出来ないのだ。

田舎ならではだが、隣の家までは少し距離がある。

縁側と土間に気休めの蚊取り線香を焚き、窓を開けてさえいれば夜は風も通り抜けて涼しく眠れるらしい。

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だが、毎晩の様に訪れる何者かがいるようだ。

家の裏側から砂利を踏み歩き、縁側の中間地点ほどで足音は消え、すると又すぐに家の裏側から砂利を踏みながら歩く音が聞こえ、同じ場所で又消える・・・。

毎晩の様に同じ地点から同じ地点までの足音は繰り返し聞こえて来るそうだが、「実害がないからな!そのうち飽きりゃ消えるだろう!ガハハ!!」とNくんは笑っている。

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私なら、毎晩そんな得体の知れない足音を繰り返し聞いて居たら、恐怖で不眠になってしまいそうだけど・・・。

そんなNくん。

昨年の夏頃から、いつも食事をしている部屋の壁に老婆が出て来たと・・・。

最初はうっすらと形も定かでなかった姿が、日に日に濃く、ハッキリ浮かんで来ちゃったよと。

気にしない様にしていたらしいが、その老婆・・・。

気付くと徐々に横顔からこちらに顔を向けて来ている。

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金縛りや寝ながら何者かに足を掴まれたりなんて日常茶飯事のNくんもでさえも流石に気味が悪くなって来た。

そこで、よく研いだナイフを一本、老婆の胸元に刺した。

あれから一年近く経ち・・・。

胸元に刺した筈のナイフが、今では老婆の身体の横辺りに刺さっているらしい。

勿論ナイフは動く事などないのだから、老婆がナイフを避けて移動したのだろう。

最初は恨みがましく横目で見ていた老婆だったが、今は物憂げな悲しい表情変わったと、Nくん・・・ナイフを抜いてやろうか思案中のようだ・・・。

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つい先日は・・・。

早寝早起きのNくんがもう少しで起きると言う午前3時半頃。

ふと目を開けると、そこには斧を振り下ろす女が・・・。

咄嗟に布団から転がり、斧は誰もいない布団の上に振り下ろされた。

Nくんはと言うと、転がる瞬間、いつも枕の下に仕込んであるナイフを取出し、斧を振り下ろした女の眉間目がけて突き刺した!!!

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筈だが・・・実体のない女に突き刺さる事は無く、何度ナイフを振りかざしてみても空を切るだけだった。

女は恐ろしい形相でNくんを睨み付けながら・・・

「また来るからな・・・」

そう言い残して消えたそう・・・。

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と言うか、Nくん・・・。

誰かに思いっきり恨まれる様な事したんじゃないの???

それでなきゃ、前世では極悪非道の悪人だったとか???

あれから数か月、Nくんと話をしていないから斧女に再び襲われたのかは不明・・・。

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Nくんの話しで一番怖かった話を最後に。

先に話した様に、Nくんは無法者が近所の山に入り込み、悪さをするのを防いでいる。

以前にも、どこかから放たれたボーガンが、Nくんの僅か50cmほど前で木に刺さった事があった。

もし後50cm前を進んでいたら、悪意の矢に撃ち抜かれていたのだろう。

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それが最近、山に無法者が来ていると近所の爺ちゃん、婆ちゃんが山に行けねえと言っているのを聞き気になり、畑の帰りにちょっとだけ様子を見に行ったそうだ。

すると、確かに誰かが踏み入った跡があり、地元の人間ではない靴跡が地面のそここに付いている。

だけど、その靴跡がどこか不自然だったらしい。

私の様なズブの素人には全く分からない、動物的な勘でその靴跡を読んでみたらしい。

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Nくんが言うには、「右に行ったと見せかけて左に誘導して、実は右に行ってるとか?そんな感じ?」と言うけど、私には全くもって分からない。

とにかく、Nくんは自分の勘を信じてその靴跡の意志を読んで進んだらしい。

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すると、その先には針金で作った輪っかが。

しかも、その輪っかは人の首の高さに仕掛けられていて、その輪の中に嵌まったら、針金が絞まり、そのまま高くに吊りあげられる仕掛けになっていたそうだ。

明らかにそれは動物ではなく、人間に向かい仕掛けられたもの。

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そして、仕掛けられた針金を辿り、誰かがその仕掛けを外そうとした次の瞬間、頭上から下に向けて斜めに切った竹を6本も打ち付けた重たい板が落ちて来る、ダブルの仕掛けが用意してあったそう。

他にもどんな仕掛けがしてあるか分からないが、誰かが怪我をする前に、Nくんはたまたま持っていた高枝切り鋏で慎重に針金を切り、落ちて来たら助かっても重傷になるもう一つの仕掛けも解除し、そして村の猟友会の人達にも報告をしたそう。

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気候も良くなり、ハイキングで訪れる人も増える山で、対人間用の、しかも致命的な罠を仕掛ける人間がいるなんて・・・。

考えただけで空恐ろしくなりました。

そして・・・

N君の怪異は未だ続くので有った・・・。

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若い頃、彼氏とドライブの帰り、夜の富士山に車で登ったことあります。真っ暗なのでどこまで登ったのか私にはわからなかったんですけど、車を降りて見た夜景は綺麗だったかな…あんまり覚えていません。
その時に彼氏が、今ここで君を置いて帰ったらどうなるんだろうね…って言った言葉がめちゃくちゃ怖かった。
辺りは真っ暗だったけど、星空の下ほんのりと周りがみえたんですけど、奥の方から人影がでてきてこちらに向かってきたんです。もう、私は怖くて急いで車に乗って山を降りました。生きてる人だったと思いますが、怖かった。

N君の怪異面白かったです。続きも読ませていただきます。

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