中編4
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祖父の実家と四十九日

私は母方の祖父も父方の祖父も亡くしている。

今回は父方の祖父の話をしたいと思う。

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父方の祖父は冬の雪が積もるある日に亡くなった。家の屋根の雪下ろしをしている途中屋根から転落したのだ。

不運なことに、転落した後顔にハシゴが落ちてきたのだという。

祖父の実家から遠方に住んでいた私が祖父の病室に着いた時は、既に話す事すら困難になっていた。

顔にはハシゴが落ちてきた時に出来たであろう痛々しい痣が残っていた。

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祖父は私を凄く可愛がってくれた。携帯の待受を私の写真にするほどだった。

私も祖父のことが好きだったので、臨終の時は泣いた。「おじいちゃん」と何度も叫んだ。多分あの時のことは一生忘れないだろう。

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祖父は妻である(私からすれば)祖母との2人暮らしだった。2人暮らしにしては大きい2階建ての家に住んでいた。

かなり立派な家で、部屋も収納も多めにある。庭もあるし、駐車場だってあった。

しかし、聞いたところによればその家は持ち主が必ずと言っていいほど手放してしまう「曰く付き」の家だった。

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祖父の葬式の時、祖父の実家に泊まった。風呂も大きいし、部屋の一つ一つがゆとりがあって大きいのだ。

祖父が亡くなったことに悲しみながらも、(大きい家だなぁ本当に)なんて思っていた。

そう、人が何人入っても十分な程広すぎる部屋の数々…何故か嫌な感じがした。

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夜。祖母と両親と私の4人で夕食をとった後、風呂に入る。そこで気づいた。

(この家、妙に灯りが少ない)

主に廊下の灯りが少ないのだ。渡り廊下ですら途中に灯りの1つすらない。気味が悪かった。

その後、和室に布団を敷いて横になった。ショックからなのかよく眠れなかった。

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葬式の翌日、学校もあり私は母と家に帰った。

「次は四十九日かしらね。来てちょうだい。きっとじいちゃんも喜ぶわ」

祖母にそう言われたが気が向かなかった。

灯りの少なさ、妙に広すぎる部屋。玄関先をよく見ると積み石がいくつも置かれていた。

積み石は祖母も祖父も置いていないと言う。勿論両親や私も置くわけがない。何かがおかしい…。

考えているうちにあっという間に祖父の四十九日になった。

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四十九日。祖父が安らかに眠れるようにと線香をあげる。線香をあげた後、祖母が声をかけてきた。

「今日私(祖母)と息子(父)はこの仏間で寝て過ごすわ。お母さんと〇〇ちゃん(私)は廊下を挟んで隣の和室で寝てちょうだいね。」

仏間の隣には廊下を挟んで和室がある。仏間にも和室にも襖があるので、夜は閉めて寝ることにした。

夜になった。祖母と父は仏間に、私と母は和室に布団を敷き横になった。ウトウトしている頃、

「サッ…サッ…サッ…ギィ…」

という音。よく聞いてみれば廊下から聞こえている。間違いなく廊下を歩く音だった。

(おばあちゃんかお父さんが歩いてるのかな…)

仏間で襖を閉めた音がしたのは随分前だ。襖を開ければ少しばかり音が鳴るので、部屋から出たのなら気づくはず。

つまり祖母と父は仏間から出ていない。しかし音はずっと鳴っている。

「サッ…サッ…サッ…ギィ…サッ…」

私はあることに気付く。

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(なんか…ずっと部屋の周りを歩いてない…?)

私と母が寝る和室は廊下で囲まれている。

仏間も然りだ。ぐるぐるぐるぐると部屋の周りを歩く、音。

(おばあちゃんでもお父さんでもない…!おじいちゃん…?誰が歩いてるの…!?)

母もこの音は聞こえていたようだ。四十九日ということもあり、2人とも顔面蒼白だった。

布団をくっつけ震えながら夜を過ごした。

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次の日。祖母や父はやはり仏間から出なかったようだ。しかし、母と私が聞いた廊下を歩く音は聞こえていなかったらしい。

何故かどんよりとした雰囲気が漂う祖父の実家…。

(気味が悪い。)

母と私はそれぞれ適当に理由をつけ、線香を上げると早々に家を出た。

祖父には申し訳ないと思いつつ、早くそこから離れたかった。

ふと実家を出た後に振り返って家を見ると、2階から何かがこちらを見ていた。私は気付かないふりをした。

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あれから祖父の実家には行っていない。父と母は離婚してしまった。元々母と祖母の関係も良くなかったし、何より母も私も行きたがらなかった。

ただ、あれだけ可愛がってくれた祖父のお墓参りは行こうと話している。

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(あの家、今どうなってんのやろ)

家を引っ越したという知らせは来ていないが、たまに思う。

でも深くは考えない。

あの時周りをぐるぐると歩く足音が祖父のものでなかったとしたら…?全て闇の中だ。

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