通りすがりの女性のちょっとした話

中編3
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通りすがりの女性のちょっとした話

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あぁ、そこの貴方…そう、貴方です。ちょっとした私の話を聞いていきませんか?

いやいや、別に勧誘とかセールスとか、そういう変な話じゃないんですよ。ただ単に、貴方も体験するかも…しれない、そんなお話。聞き流す程度でも構いませんよ。

いいんですか?ありがとうございます。では少しお時間を頂いて…

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私ね、ゲームセンターに行くのが好きなんですよ。別に何かを取りたいとかそういうのはなくて。何となくあの雰囲気が好きなんだと思うんですよね。

あのざわついた雰囲気というか。行ったことがあるなら分かるでしょう?そうそう、あの感じです。

1ヶ月くらい前かな。あるゲームセンターに行った時に、目にゴミが入った感じがしたんですよ。中々スッキリしないもんで、仕方なくトイレに入ったんですね。

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中には個室が2つありまして。なんて言えばいいのかな。個室と鏡が対面にあるトイレだったんですね。

鏡を見て、あ…まつ毛が入ってるなぁ…って気づいたので目を洗って流したんですね。

で、鏡をもう一度見たら、トイレの個室のドアの隙間から誰か覗いてるんですよ。あの微妙な隙間から誰かの目がこっちを見てたんですよね。

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私って少しの事では驚かないんですけど、さすがにびっくりしちゃいましたよ。だって鏡越しに個室の誰かと目が合うんですよ?いやぁ、固まっちゃいましたね。

トイレも鍵が劣化して赤なのか青なのか分からないから、本当に「人」が入ってるのかも分からなくて。

「入ってますか?」なんて、入ってる人が聞いたらえ?ってなるだろうし、入ってなかったら…ねぇ。

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トイレには私しかいないと思ってたもんですから。

だってトイレに入ってから一切物音がしてなかったんですよ。紙を巻く音とか、流水音とか、少しの物音くらいはするじゃないですか、普通。

一切しなかったから戸惑いましたよ。

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しかも相手がずっとこっちを見てくる上に瞬きの1つもしないもんで、さすがに気味悪くなっちゃいましてね。目もスッキリしたし、すぐにトイレを出ましたよ。

え?その後どうだったかって?いやいや、少しふらっとした程度ですぐゲームセンターを後にしましたよ。

個室から見てたものが何か、なんて…ねぇ。今となっては分かりませんしご想像にお任せしますよ。

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ただそのゲームセンターのトイレ、先週行った時見たら使用禁止になってたんですよね。でも中から水が流れる音がするもんで、店員さんに伝えたんですよ。「使用禁止なのに誰かが入って用を足してる」って。

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そうしたらね、店員さんがまたか…って顔をしましてね。話を聞いたら、誰も入ってないのにずっと水が流れて止まらないんですって。

故障かと思って修理屋さんを呼んでも異常はないって。

「○階にもトイレありますので、良かったらそちらを…」って言われましたけど、流石に今後そこのトイレは使わないですよ。

だって思い出すと気味が悪いですから。あの瞬き1つしない目。うーん、嫌なもんですねぇ。

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じゃあ私はこれで。ほら、勧誘とかじゃなかったでしょう?本当にただ聞いて欲しかっただけなんですよ。聞いてくださってありがとうございます。

そうだ、今日もゲームセンターに行こうかな。貴方も行きますか?ご興味がおありならお話したゲームセンターでも構いませんよ。

あくまで興味があれば…ですけどね。

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