実際に体験した話です。個人名はイニシャルで表します。
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高校1年生の頃、夏休みと言いながらも、お盆と休日以外はずっと課外授業がありました。
午前しかない授業でしたから、帰宅部はお昼で解放されます。私もその一人でした。
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学年の半分以上は家が近く、徒歩や自転車通学が多いのですが、私は市外から通っていたため電車通学でした。
学校から最寄り駅までの道のりは、坂道を真っ直ぐ下って15分程度。その途中、車があまり通らない住宅街に入ります。
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お盆前のことです。
この日も午前で授業が終わり、電車通学仲間である友達のMと帰ることになりました。
日陰になる場所もない道を歩きつつ、二人で「暑いねー」と愚痴っていると、斜め前方のアパートに誰かが立っていました。
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全身真っ赤なスキーウェアを着た、男か女かわからない、背の高い人でした。
グレーのニット帽を被り、ゴーグルとマフラーで顔を覆っていたので表情はわかりません。
それを見て「こんなクソ暑い日に何て格好しとるんだ」と驚きました。
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しかし、私が中学の頃、火傷が酷いから夏場でも長袖長ズボンが手放せなかった友達がいたので、
もしかしたらきっとやむを得ない事情があるのかもなと考え、Mと気にせず駅まで歩きました。
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カーブミラーを見たら、スキーウェアの人が、後ろに並んでいました。
車も通らない、どちらかと言えば広い歩道なので、通り越せないことはないのですが……一定の距離を保って、私たちの後ろを歩いています。
追い越してもいいように、私は歩道の右から左に避けてMの後ろに立つようにしました。
が、スキーウェアの人は同じように左側に並んで、私の後ろに並んでくるのです。
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何となく…どころか結構気味が悪いなと思ってしまい、
「M~、今から駅までかけっこして、負けた方が自販機のジュース奢ろうや」
と提案したところ、
Mは満面の笑みで「ええよ!いちについてよーいどん!」と全速力で駆けていきました(元陸上部の県大会出場経験者)。
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私は運動はそこまで得意ではありませんが、荷物はほぼ空、ローファーではなく運動シューズなので普段よりは速く走れます。
下り坂ということもあってスピードは更に増します。
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後ろを振り向きました。
スキーウェアの人は、私のほぼ背中に来ていました。
その人も、走っていたんです。
えっ、と背中と心臓が氷になった気がしました。
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うわこれまさかストーカーか!?と命の危機を感じて死に物狂いで駅まで走りました。
既にMは駅に着いていましたが、私が怖くて震えた声で「助けて!」と叫ぶと、血相を変えて戻ってきてくれました。
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Mはすぐ横の、人が多い公園に逸れて、親子が多い遊具のスペースまで引っ張ってくれました。
後ろを振り向きましたが、もうあのスキーウェアの人はいませんでした。
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私が「何なんさっきのアイツ、超変態やん!」とわざと悪口を言うと、Mは黙りこんでボソッと
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「あの人、顔ぐしゃぐしゃに潰れとったね……」
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電車でMと話し合いました。
M曰く、
スキーウェアを着た人なんて見ていなかった、
誰もいないのに急に私が背中に回ったのが変だと思った、
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私が叫んだ時に初めて誰かがいたことに気づき、
その人は半裸で、
顔面が潰れており、
身体に木のような物が刺さっていて、
明らかに幽霊だと思った、
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逃げる時ずっと「寒い寒い寒い寒い」と連呼していた…
と私が見たものとはえらい違いだったので(声なんて聞こえなかった)、
お盆前だから家に帰ってきたんかねーという結論で終わりました。
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あまり怖くなくてすみません。以上で終わりです。
作者ⓃⒺⓀⓄ