【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編4
  • 表示切替
  • 使い方

0の数が

アイコは首から腰を痛めていた。

日々の激務に体が堪えたせいだ。

骨折をしている訳でもないため、仕方なくアイコは知り合いに教えてもらった、個人経営のマッサージ店でお世話になることにした。

nextpage

ユミという店主は、大層マッサージの上手な人だった。

アイコとも話が合い、体の節々の痛みが和らいでも、二人はプライベートで電話をする仲まで発展した。

nextpage

ある時、ユミの店の経営方針が変わったため、

10分につき2000円だったマッサージが4000円に値上がりすると言われた。

週1で通うアイコは二つ返事で了解し、

お店の売り上げ貢献のために変わらず通い続けた。

nextpage

少し出費が多くなってきたアイコは、

自分が大切にしていた服や宝石を売って生活を凌いだ。

nextpage

ある時、ユミはマッサージで使うオイルを新調したため、

4000円から8000円に値上がりすることをアイコに伝えた。

アイコは了解したが、マッサージで使うオイルの量はかなり減らされたと感じた。

nextpage

ある時、マッサージ終了後に二人で談笑していると、ユミの知り合いに整体を行う男性がいると聞く。

調べると料金は一人につき3000円だった。

ユミからの評価も高いため、アイコは試しにそこへ予約して行ってみた。

nextpage

ジロウと名乗る体格の良い男性は、奥さんと共同経営を行っていた。

店内に飾られている石は、全て本物の宝石の原石だそうで、幻想的な空間だ。

nextpage

マッサージに時間制は無く、オイルマッサージも行う。

男性ということでマッサージをする時の力はユミより強かったが、

アイコにとっては疲れが吹っ飛ぶ心地だった。

nextpage

そんな訳で、

アイコはユミの店に顔を覗かせることは無くなり、ジロウの店に通い続けるようになった。

nextpage

ジロウと奥さんは明るい性格で、苦労話も笑って話せる強い人たちだった。

また、奥さんは霊が見える体質らしく、入店したアイコをじっと見つめるやいなや、

nextpage

「もしかして、娘ちゃん…かな、その子、足を怪我しているでしょう」

nextpage

彼女の言う通り、アイコには娘のエリがいた。

エリは先週、体育の授業で足首を捻挫したばかりだったので、走る事ができないでいた。

nextpage

更に、奥さんはタロットカードを取り出して

「娘ちゃんはすぐ治るけど…次の仕事、目上の人とか…上司とトラブルがあるかもしれないから気を付けてね」と占った。

nextpage

翌日、アイコは仕事場で上司から濡れ衣を着せられて口論になったが、

仲間たちのおかげでアイコの無罪が認められ、

上司が更に上の人から咎められる結果となった。

nextpage

娘のエリはというと、

あれほど足を動かすのを痛がっていたのに、

その日の夜にはトランポリンができるほどに回復していた。

体の痛みを治すだけでなく、未来が見える人だと改めて感じたアイコは、彼らに心酔した。

nextpage

占ってもらう場合は、

マッサージ代とは別に1000円支払わなければならなかったが、アイコは毎週のように奥さんから未来を見てもらった。

nextpage

ある時、ジロウは常連客であるアイコに回数券を渡した。

「回数券には、占いの代金も含まれているよ。施術をした分判子を押すんだけど…

1セット50000円なんだよね…どうかな?」

アイコはわざわざ此処に来る度お金を払うよりも、

一度にドンと出して通う方がいいだろうと考え、

1セット買った。

nextpage

ある時、奥さんがパステルカラーの美しいブレスレットを持ってきた。

「アイコさんが家でも休められるように、邪気を払う効果をもつブレスを用意したの。

勿論腕に付けられるわ、1個1000円でどうかしら?」

アイコは自分のためにわざわざ用意してくれたことを嬉しく思い、

またそのブレスレットの見た目が可愛らしかったため、

それを購入した。

nextpage

ある時、回数券が判子でいっぱいになった。

「結構早く終わったね!

もしかしたら2セットの方が、アイコちゃんは合っているのかもしんないな…」

その言葉通り、アイコは回数券を2セット買ったのだ。

価格は勿論、前回の2倍の額だ。

nextpage

アイコは節約を心がけた。

夏でもクーラーをかけず、

冬でも暖房はつけずに毛布を多く着込み、

冷蔵庫の中身を減らしていった。

売れる家具があるなら高く売り、

副業をするようになった。

nextpage

separator

それから1年、アイコの家の玄関には様々な色、形の石が飾られてあり、

ブレスレットやネックレスの数も10を越えていた。

nextpage

当時、大学受験を不安に思う娘のエリに対して、

気が紛れる程度に、奥さんに占ってもらおうかと

アイコは提案した。

nextpage

初めてジロウと奥さんに対面したエリは、半信半疑でタロットカードを受けた。

華やかなカードが出た。

「エリちゃん大丈夫、満開の桜よ!」

nextpage

その日から、アイコは仕事に忙殺されてジロウの下へ通うことが少なくなった。

何度も来ないかと誘われたが、

アイコは娘のサポートをすること、

仕事の都合で休みはどうしてもとれないことを伝え続けた。

nextpage

3月、エリは全ての大学に落ちていた。

nextpage

アイコは奥さんに

占いが外れたのは何故かと電話で尋ねると、

無言で電話を切られてしまった。

翌日ジロウの店へ向かえば、そこは既に藻抜けの空だった。

nextpage

アイコは今まで自分が払ってきた額を改めて確認すると

それは軽く5000000を越えていた。

Normal
コメント怖い
0
5
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ