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中編5
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新都市伝説「鏡」

おれが小学生の頃の話だ。季節は夏頃でもうすぐ夏休みが来る、そんな時期にクラスでは怖い話が流行っていた。

口裂け女やらテケテケやらコックリさんなんかのありふれた都市伝説を休み時間によくクラスの友達と話していた。

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ある日の放課後の教室で

友達の一人(Tとする)が「なあなあ、都市伝説をおれたちで作ってみようぜ」と言い出した。

教室にはおれとTの他にSというめちゃんこ可愛い女子がいた。

めちゃんこ可愛いからおれとTはお菓子を定期的に上げることでSと友達契約を交わしていた。

ちなみにSはうまい棒のコーンポタージュ味が大好きだった(可愛い)

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「どうやって作るの?」とSがTを見つめて言った。

「え、えとえと。〇くんどぅする?」とTはオドオドしながらおれに助けを求めるような表情で言った。

(Sに見つめられた男子はたいていこうなる)

「おい、しっかりしろよ。元はと言えばお前が言い出したことだろ」と返すと。

「じゃあさ!鏡で話作ってみようよ!」とSが言った。

「うん、良いよ」とおれとTが男に対しては決して出さないであろう声で答えた。

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「じゃあね。まず、どこの鏡にするか決めよっか!」

とSに言われ、おれとTは良い場所を答えてSを驚かせようと2人で静かだが熱いバトルを脳内で繰り広げた。

しばらく沈黙した後、Tが先に答えた。

「この棟の屋上に上がる前の鏡はどう?」

「どうしてそう思ったの?」とSが返した。

「屋上ってさ、危険だから上がっちゃダメって先生に言われてるし危ないと怖いって似てるなと思って」

Tは『どぉうだ!』と言った表情で僕を見ながら言った。(シンプルに悔しかった)

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「うん!私も良いと思う。そこ!」とSが言ったので完全におれはTに負けた。

心の中で『くっそー』と思いながらも

「それで、どんな話にする?」とおれは変に余裕ぶって言った。

「んー。話はまだ作れてない」とTが返す。

するとSが「じゃあ、私が明日作ってきてあげるから。箱でアレ買ってね?」とおれとTに可愛らしい声でお願いしてきた。

「わ、わかりました!」とおれとTはなぜか敬語で返した。

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おれとTは登下校の道が一緒なのだが、あいにくSは違う方向であった。

「じゃあね!バイバーイ!」と可愛いらしい声でSが挨拶して

「バイバーイ!」とおれたちも返してそれぞれ帰りの道についた。

家に帰ってからおれとTは貯金箱からお金を引き出して一緒に駄菓子屋へ向かった。

Sが言った報酬のアレとは「うまい棒、コンポタージュ味100本入り」の箱だ。

一本あたり10円だから1,000円する。おれとTは500円ずつ出し合って買った。

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次の日にどちらがSに箱を渡すかで揉めると面倒だからおれたちはきっちり50本ずつ分けて袋に入れて持ち帰った。

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次の日の放課後、おれとTはSにうまい棒を渡した。Sに対しては報酬先払いが原則だ。

「2人ともありがとう!」と笑顔で言ってくれたのでおれもTも500円貯めてて良かったと思った。

「それで、どんな話にしたの?」とTが訊くと

「えっとね。写し鏡がいいかなぁって思ったんだけど、それは難しいからやめたの」

「それで、どんなの考えたの?」と続けて訊く。

「人の数が違うってのはどう?」

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「どんな風に違うようになるの?」とさらに訊く。

「1人で通った時には後ろに誰かもう1人が映るの」

「でも、それって通り過ぎるだけなら気づかないんじゃないの?」と疑問に思ったおれが尋ねた。

「そう。だから都市伝説でこういうのあるよってみんなに紹介するの。そしたらみんな1人の時は怖くなって意識して見るようになるでしょ?」

「うんうん、それで?」とおれたちは聞き入っていた。

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「どうやら怖いものって本当はそれが無くても怖がるから見たように錯覚するんだって。だからこの都市伝説が信じてもらえたら実際に怖がる人も出るかも」

「なるほど〜」とおれとTはSに感心しながら言った。

「でも1人増えたからどうにかなるってのが欲しいなー」とTが呟く。

「それも考えてあるの!」Sが嬉しそうに答えた。

質問が良かったのだろう。

おれとTは思わず身を乗り出して「どんなの⁈」と訊いた。完全にハモった。

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「初めに鏡の前を通った時には何にもないの。でも次第にぼんやりと後ろからついて来る人影が見えていって、、、ある時からハッキリと見え出すの。ハッキリと見えたらー?」

「見えたらー?」思わずおれもTもSにつられた。

「バン!って通った人の方を見るの」

バン!のところで「ぎゃあ!」とおれたちはビックリした。

呼吸を整えながら「それから?」と尋ねた。

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「別に何もないの。」

「え?何もないの?」とあっけに取られたようにTが訊いた。

「だって、その通った人が死んだオチにして本当にそうなったら嫌じゃない」とSが答えたので

「確かに」とおれたちは納得した。

「でもね?」とSはまた話し始めた。

「鏡に映ったのは自分じゃなくて別の子なの。まだ続きがあるのよ?」

とSは何か企んでいるような表情で言った。

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おれたちは気になってしょうがなかったので

「教えてください!」と敬語でお願いした。

「仕方ないわね。これくれたし、教えてあげる」とSはうまい棒を一本取り出して言った。

「鏡の中の子が両手を鏡につけて、何かを訴えるの。見た人は口の形から察して『出して出して』と言っていると分かるの。それでもしもその子と同じように両手をくっつけたら?」

おれたちは話のオチを察したが、黙って聞いた。

「その子と入れ替わってしまうの」

おれたちはシンプルに怖いなと思った。そしてSって凄いなと分かった。

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さっそくおれとTは次の日の学校からSが作った都市伝説をクラスの他の人に話して回った。

ここで都市伝説の流れをおさらいしようと思う。

1屋上の階段前の鏡に誰かが通る

2通った人の後ろからうっすらと人影がついて来る

3何回か通るうちに人影はハッキリと形になってくる

4その姿がハッキリしたときには本人以外の人が鏡の中に映る

5鏡の中の人が出してと訴えかけ両手を鏡につける

6それを見た人が同じように両手を鏡につけると入れ替わってしまう

以上が都市伝説の流れだ。

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噂はあっという間に広まり、学校の都市伝説として定着した。

本当に見たという人まで出てくる始末でSが言ったように錯覚が起きたのだと思った。

しかし、ハッキリと見たという人は大して出てこなかった。

それでも学校にいる何人かは「おじいさんを見た」と訴える人がいたり、男子なのに「女子になってた」と言う人も出たりした。

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しかし、流石にハッキリと見えた時に両手を鏡につける人は誰一人としていなかった。

だから大事に至る人は出なかった。

おれとTとSはせっかくだから、こっそり屋上に上がってお菓子とジュースでパーティーをしようと話し合った。

凄い結果が出たことが純粋に嬉しかったのだ。

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屋上に上がる前の鏡をおれとTはガッツリと見ながら進んだ。

その時のことだ。おれとTの前をSが歩いていたのだが、おれたちは固まってしまった。

酷く醜悪な顔の女の子が映っていたのだ。

その子は何やら必死に訴えていた。

口の形と動きから「出して」よりも多い文字数の言葉を、、、

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