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短編2
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停電だな

私はアラフォーの独身女性だ。

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最近通勤の便から、都内のマンションに引っ越した。

ワンルームだけど付近の相場からすると、かなり格安で借りることが出来た。

というのはこの物件、以前住んでいた男性が駅のホームから飛び込んで亡くなられたということだった。自殺らしい

私は元来天然気質で、超常現象の類いは信じていない。

まあ別に室内で亡くなられたわけではないし、なにより家賃がかなり安かったから、ここに住むことを決めた。

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それは秋も深まってきた、とある日のこと。

久しぶりの残業でマンションに帰り着いたのは、午後10時を過ぎていた。

玄関ドアを開き、誰もいない奥の暗闇に向かって「ただいまあ」と声をかける。

もちろん返事はない。

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ワンルームのリビングでドサリとバッグを下ろしたら同時に怒涛のように疲れが押し寄せ、その場にへたりこむと丸テーブルに顔を埋めた。

すると、

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─パチ!

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電気のショートしたような音がし、次の瞬間辺りは漆黒の闇に包まれた。

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どんよりした不安が心を包みこみ、私は座ったまま固まる

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正にその時だった。

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「停電だな」

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肩越しに耳元で確かに聞こえた中年の男の声。

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「え!、え!、え~!?」

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一気にゾワゾワと腰から背中が粟立つ。

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すぐに周囲は明るくなった。

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それと同時に恐怖が津波のように押し寄せてくる。

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座ったまま、必死に周囲をキョロキョロと見回すが、視界に入るのは、いつもの部屋の光景だ。

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どんよりとした重い空気が辺りを包み生暖かい汗が左の頬をつたい、顎先からポタリと落ちた。

【了】

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