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中編3
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キョウカンカク

これは、高校時代に遭遇した不思議な体験です。

それは、秋も過ぎ去ろうとしている時期の下校中の出来事でした。

私は資格試験を間近に控えている身でありながら、模試では合格ラインギリギリの成績でした。その日は日中の資格試験の勉強に加え、放課後から夜の8時までひたすら過去問を解くというスケジュールでした。

勉強を終え、普段使わない頭を一日フルに使ったため、ヘトヘトになりながら友人のY君と一緒に下校をしていました。Y君とは家が近く、毎日のように一緒に帰っており(成績も近かった)、最近あった面白い話や、ゲームの話なんかをして盛り上がっていました。

僕が住んでいる地域は田んぼが多く、見渡すと辺り一面田んぼが広がっている光景なんてざらにあるような場所でした。その日の帰り道も、いつもの同じ川沿いの田んぼ道を二人で、自転車を漕ぎながら帰っていました。

とりとめのない話をY君としている途中で、僕の視線はなぜか、ある一軒家に向かって伸びていました。なぜかはわかりませんが、自然とその家に視線が向かったのです。

川を隔てた向こうの一軒家。20~30メートルぐらい先だったと思います。なんの変哲もない二階建ての家でしたが、一階の部屋だけが妙に明るかったのです。一階の部屋は、障子で仕切られており、部屋の中にいる人は、影でしか姿が把握できないようになっていました。

そして、その明かりの中に、一つの人の形をした影があったのです。そこで、なぜか私は思いました。あの家には、人間じゃない何かがいる、と。

朧気なのですが、その一階の家の影は、着物を着ている老婆が前屈みで歩いているような感覚がしました。姿としてはっきりと見えたわけではないのですが、何かその歩き方が気持ち悪く不気味に感じられ、この世の者とは思えない感覚に陥りました。今冷静に考えてみても、直感が働いたとしか言いようがありません。

僕は怖くなってしまい、友人のY君に話して少し気を紛らわそうとしました。

僕「ねえ、Y、さっきさぁ、あの家で変な....」

Y「シッ!!!」

Y君は、まるでハエでも払うかのような勢いでその言葉を発しました。僕は、本当にY君の顔の付近にハエか何かがたかってきたんだと思って、再度さっきの出来事を話そうとしました。

僕「さっきさぁ、あそこの家で...」

すると、Y君は、今度ははっきりと僕の方に顔を向けて、人差し指を口元にあてて、「シッ!!!!」と言ったのです。

Y君は、さっきまでゲームの話をしながらヘラヘラした顔をしていたはずです。しかし、そんな余裕は全くなく、いつのまにか何かに怯えた表情をしていました。

言い様のない不安にかられた僕は、それからは何も話さずに、自転車をこぎ続けました。

しばらく自転車を走らせると、街灯が明るい通りに出ました。僕は変わらず黙って自転車を漕いでいました。すると、Y君は自転車を止め、僕の方を振り返り、こう、言いました。

Y「着物着たおばあちゃんやろ?」

僕は、戦慄しました。

Y君は、あの家で、僕と同じ光景を目の当たりにしていたのです。さらにY君はこう言いました。

Y「色は、白だったと思う。」

僕も、そう思っていました。障子を隔てた部屋の中は、色なんか分かるはずがありません。でも、二人の意見は一致したのです。もう、頭のなかは混乱と恐怖でいっぱいです。Y君は、僕の見たものを見事に言い当てた後、こう言いました。

Y「ああいうのを見たすぐあとに、その場で話したら憑いてくるって。前に聞いたことがあったからさ、だからシッ!!!て言ったんだ。正直、俺もかなり怖かったから、そう言うしかなかった。ごめん。」

思い返してみると、Y君は以前からそういったものが見える体質らしく、親しい友人の間でしかその特異体質について言及していませんでした。

なぜ、その時に僕にも見えたのかわかりません。しかし、あまりにもY君が話している事が僕の感じたそれと一緒だったので、何らかの力が働いたようにも感じられます。

Y君と別れた道の帰り。自転車を漕ぐ僕はすっかりと暗くなった田舎道に、怪しく光る白い何かが、蠢いているような感覚に襲われました。

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