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短編2
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死の糸を引く老婆

前回僕が紹介した霊感の強いS君。

彼は昔から少し先の未来が見えたり人の死を予見できると言う。彼いわく人の死を予見する時は彼にしか見えないある事が起こるという。

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その老婆はS君の周りで人が死ぬ直前に必ず現れるという。

S君が初めてその老婆と遭遇したのは小学校にあがったか上がらなかったくらいの頃、S君の祖父が危篤状態の時だった。S君の祖父は地元の有力者であり祖父の家はかなり広いのだと言う。S君と家族をはじめ親戚一同が祖父の家に集まる中まだ小さかったS君は祖父の家を歩きまわって遊んでいた。

家の奥へ続く長い廊下を行ききして遊んでいるとどこからか歌声が聞こえてきたという。よく聞き耳をたてると子守り唄のように聞こえた。聞き耳を立てながら歌声が聞こえる方に歩いていくと行く手をさえぎるように一本の糸が廊下を横切っている。

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見ると糸は奥の部屋の扉に方に続いていて少しあいた扉の隙間に繋がっているようだった。S君は扉に手をかけ開けようとするが全く動かない。そこで隙間から部屋を覗いて見ると一人の老婆が正座し手に糸を巻きながら歌っている姿があったという。白髪になった髪を綺麗に束ね着物を着た老婆だったという。

このお婆さんはこんな所で何をしてるんだろう?

不思議に思ったS君は「おばあちゃん」と声をかけたが老婆はこちらを見ようともしない。

「ねえそこでなにしてるの?」

S君がもう一度声をかけるとそれに答えるかのように男のうめき声があがる。

老婆は唄をやめるとうめき声が上がった方に向かって「まっときやもうすぐやからな」

そう老婆が呟いた夜、祖父は息を引き取った。

S君はこの話を周りの大人にする事はなかった。言った所で誰も信じてくれないと思ったと言う。

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そしてそれから数年後、S君が老婆の事を忘れかけていた頃、7歳になる妹が肺炎になって入院した時の事。S君は亡き祖父の家で叔母と一緒にいた。するとどこからかまた歌声が聞こえて来た。廊下に続く糸を見て祖父が死んだあの日の恐怖がよみがえった。

「妹も同じように連れて行かれる」

そう感じたS君は無我夢中で糸を引っ張り続けた。しかし糸を切る事はできない。

その時「なにする❗貴様❗」

どこからか聞こえた老婆の声とともにS君は足首をおもいっきり捕まれた。とにかく冷たい手だったという。そこからS君の記憶はないと言う。

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つぎの日自分の部屋で目が覚めたS君は叔母から妹が無事介抱に向かったという事をS君の母から電話で伝えられた事を教えられた。しかし同じ日にS君兄妹を可愛がってくれていた近所のおじさんが電車に跳ねられて亡くなった事も知るのだった。S君の必死の抵抗が妹の命を救ったのか、妹の代わりにおじさんが犠牲になったのか、あるいは元から死ぬのは妹ではなかったのかもうわからないが今でも人が亡くなる直前になると老婆の歌声が聞こえるという。

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