「兄貴、兄貴、兄貴」
はっとして目が覚めた「またあの夢か」
コップに水を入れ乾ききった喉に流しこむ。
もうあの悪夢を見初めてどれくらいの月日がたっただろうか。
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私の父は実業家だった。私は跡継ぎとしての心構えを教えられながら育ったが跡継ぎでもない弟は子供の頃から本当に好き勝手だったと思う。高校を暴力沙汰で辞めた後は父に金をせびりながら不良仲間の家を転々とする生活だった。徐々に大きなトラブルを起こす事も増えて行き父からは勘当された。しかしその後も母から金を送ってもらっていた事を私は知っていた。
やがて父が死に私が遺産を相続すると弟が私の前に現れた。「今、借金で首が回らないんだ。遺産の一部をくれよ。」
「なにをいってる!俺には長男として父の残した財産を守る義務があるんだ!」
「実の弟が困ってるのに助けないなんて人間じゃない!なにがなんでも財産分与はしてもらうぞ!」
私と弟は掴み合いの大喧嘩になり弟は持っていたナイフで私の腕を切りつけた。
血が滴り落ちる。
「見てろ!貴様はいつか地獄に落ちるからな!」
弟はどこかに姿を消した。
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そういう事があった物の私はその後も新しくマンションを建設する等として事業拡大を続けた。ある時母が「弟を助けてやってほしい」と言ってきた。今、弟は暴力団から借りた金を返せなくなり追われる身になった事を人づてで聞いたらしい。私はそれを無視した。
それからと言う物、母は毎晩夢で弟が殺される姿を見るようになった。
末期ガンで苦しむようになってからもそれは変わらなかった。やがて母は病気と弟が殺される悪夢の両方に苦しみながら死んでいった。
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そしてその頃から私の悪夢は始まったのだ。
毎晩悪夢の中で弟が殺されていく。
ある時は車と繋いだロープで縛られそのまま肉の塊になるまで引きずりまわされ、
ある時はアイスピックで目をえぐられ、
ある時は全身の皮を剥がれた上で熱い鉄板の上に乗せられる…
「兄貴助けてくれよ兄貴!兄弟なんかよりも金の方が大事なのか!」
地獄のような拷問を受けながら弟は毎回私にそう語りかけるのだ。
その悪夢を今や毎日のように見るようになった。
もう嫌だ。やめてくれ。
もはや私の精神は限界だ。
ここは地獄のなん丁目なのか。
後、何度私はこの悪夢を見続ける事になるのか。
これが私に下された罰なのか。
弟が私に言ったように私はいつか地獄に落ちるのだろうか?
今の悪夢が地獄でないというなら真の地獄はどれほどの苦しみだろうか、
向こうから弟と母がこちらに向かってあるいてくる姿が見えた。
これは悪夢か幻か?
作者愛と感動のオタク戦士「大佐」
初めての創作怪談です。そんなに怖くないと思います😅
暇潰しに読んでやって下さい。