短編2
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憑いてきた

ある母親と息子の奇妙な体験だ。親子で雨の日の夕方、近くの大型スーパーへ向かっていた時。既に日が落ち始めていた。遠くからスーパーの灯りが煌々と見えた。

雨だからか、珍しく人通りが少ない。親子はたわいもない話を交えながらスーパーへ向かっていた。

歩いていると前から赤い傘をさした女性が歩いてきた。顔は見えないが何となく雰囲気で女性と分かる。

そんなことは気にせず親子は歩き続けた。

気づくと、赤い傘の女性は顔が見える程の距離まで近づいていた。

息子が女性とすれ違う瞬間少しを目向けた。

しかし傘が邪魔をして顔は見えない。

柄もないただ赤い傘。今時珍しいなと思い、

親子はすれ違い、何となく後ろを振り向いた。

その瞬間、2人は呆然と立ちすくむ。

何故ならたった今すれ違った女性が煙のように消えたのだ。

あたりは一本道、周囲にスーパー以外の建物はない。車にでも乗り込んだかと思ったが、車どころか自転車なども走ってない。

親子はほんの数秒、周りを見回した。

すると周囲から強烈な香水の匂いがし始めた。

周りに母親と息子以外人影はない。

2人は青ざめた顔でスーパーへ駆け込んだ。買い物を済ませ、帰り道も同じ場所を通らなければならなかった。別の買い物の人達に紛れながら足早に家に向かう事にした。先程の場所を通るが、既に香水の匂いは消えていた。

しばらく無言だったが家に近づき、2人は先程の女性の話をし始めた。

幽霊だったのか、それとも2人して幻覚を見ていたのか。結局幽霊だったのかもと二人で話した。家に着き、念のため玄関に入る前、塩をまくことにした。

家に着き、呼び鈴を押し、家にいた父親に塩を持ってきてもらう。塩を身体に振りまき、家に入ろうとしたその時、父親が思わぬ言葉を口にする。

「お前たちなんでそんなに香水くさいんだ?」

どうやら赤い傘の彼女を連れて帰ってきてしまったようだ。

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