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短編2
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俺が食べた

Yの母には戦時中、結婚を約束した「健一」という男性がいた。しかし「健一」は戦地で亡くなり、終戦後、彼と友人であった父と関係を深め、結婚した。父と「健一」は同じ戦地に赴いていた。Yの両親が互いの関係を深めたきっかけは、「健一」が亡くなる前、母への伝言を父に託したからだった。

父と母は初対面だった。健一の死を明かされた当初、母は悲しみに打ちひしがれた。けれども優しく寄り添う父に惹かれ、結ばれた。

父は明るく快活な男だった。「だった」と言うのもYが物心ついた頃には、口数も少なく大人しい性格になっていたからだ。歳を重ねたものとは違う。まさに人が変わったようだと周囲は話していた。そんな父の変化に最初に気づいたのは母だった。

見た目は変わっていない。ただ仕草や癖、言動など、以前の父とは違う。母はYに「お父さんが健一に似てきた」と話し、次第に父の事を「健一」と呼ぶ様になった。何故か父もそれを受け入れていた。それは周囲の大人達も巻き込み始めた。皆、父の事を「健一」と呼び、接した。違和感を持ったのは、その時、両親の過去を知らないYだけだった。

ある日、珍しく酔っ払っている父が、戦争での体験を話してくれた。父が向かった戦地は特に壮絶で、食糧を確保するのも至難だった。仲間達は食糧がなく、1人また1人亡くなったそうだ。父も「食べられる物」は何でも食べたと話していた。続けてYは「友達だった健一さんは、どうして亡くなったの?」と質問した。以前から疑問に思っていたからだ。

すると父は「俺が健一を食べたんだ」と薄笑みを浮かべ答えた。その言葉と表情は、とても冗談とは思えなかった。Yは額から汗が吹き出る程の恐ろしさを感じた。そして我慢できず、咄嗟に会話を変えた。その後も「健一を食べた」と言う言葉と、戦地での「食べられる物は何でも食べた」という言葉が組み合わさり、Yの脳裏にこびりついた。それは父とYだけの秘密の話だった。子供ながら、誰にも話してはいけないと理解したそうだ。

そして歳を重ねるごとに、父の姿は変わっていった。母は老年期の父の姿を見て、初恋を思い出したかのように、いつもはしゃぎながら「健一、健一」と父に笑い、語りかけていた。それから、しばらくして父は他界した。今は遺影の中だ。しかし、遺影にはYが覚えている父の姿はない。そこには薄笑みを浮かべた、「健一」の姿が飾られている。

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@夕暮怪雨 様
返信ありがとうございます。
たいへんご無礼かつ失礼なコメントを書き込んでしまい、お気を悪くされないかと心配しておりました。
タイトルや画像への印象につきましては、あくまでも個人的な感想を述べたに過ぎません。
文章力、表現力、長さ、いずれに関しましても、申し分のな作品だっただけに、出来るだけ多くの方に読んでいただきたくて。つい、あのような書き込みをしてしまったのでした。
貴重なお話を提供してくださった方や戦地に置いて無念の死を遂げられた方々の思いだけでなく、当時、まだ理解でなかった「大人の事情」を子ども目線から描いておられました。
言葉にできない複雑な心境も含め、夕暮怪雨様は、これらの思いを汲み取り、ここに挙げてくださったことに対し、感謝の思いでいっぱいです。
私も既に他界した義父から聞いた戦争体験を書いてみたいと思っていた矢先のことでしたので、色々お勉強させていただきましたこと、御礼申し上げます。
画像につきましても、どなかたの顔写真ということであれば、プライバシーや肖像権に関しても、色々面倒なことになるのも大変だろうなと余計な気を回してしまいました。
お許しください。
今後のご活躍を楽しみにしております。
これからも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
毎回、長々と失礼いたしました。

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@あんみつ姫
コメントありがとうございます。
お話を提供して頂いた方も、あんみつ姫さんと同じ様なお話をしてくれました。自分の文章力では上手く伝える事が出来ていないので申し訳ないです。確かにタイトルと画像で勿体ないかもしれませんね笑

画像だけでも変えてみたいと思います👀💪ありがとうございました!

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