名古屋の友人から聞いた話です。
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相当前の話になるが中国旅行した時に一本のビデオテープを買った。
アングラな自主制作映画を収蒐していた俺は古いビデオテープを漁っていたのだ。
その中に「牛の首」というタイトルのラベルが貼ってあったビデオテープがあった。
日本語ラベルだが日本人の撮ったビデオだろうか?
好奇心にかられ早速再生してみた。
二人の男が何かを話している。
記者がある男を取材している擬似ドキュメンタリー作品の様だった。
ブレア・ウィッチ・プロジェクト以降大量に作られたオマージュ作品群だろう。
この掛軸ですが・・・日本で言う所の有名怪談の牛の首の怪異が描かれていると言われています。
その牛の首を見た者は・・・(ノイズで聞き取れない。)
・・・そんな、まさか
これはさっき中華街で買った食用ウサギです。
語り部の男は持参したリュックの中からゲージに入れられたウサギを取り出した。
実験をしましょう。
このウサギに牛の首を見せてみましょう。
二人には見えない位置で掛軸を開きウサギに見せる。
ビクッと震えたかと思うとウサギの動きが止まった。
微動だにしない。
しかし徐々にウサギが衰弱していき1分もしない内にウサギが痙攣を始める。
うわあああああ
記者と語り部の悲鳴が部屋に響いた。
ウサギの体がみるみる内に崩壊を始めた。
ウサギの毛が抜け落ち頭部に2つの盛り上がりが出来つつある。
顔面と足が変形し・・・爪は牛の蹄の様に変形しつつある。
ウサギは泡を吹きながらまるで牛の様なうめき声を上げた。
3日処か3分もせず絶命したそれはかつてウサギの姿をしていた牛そのものだった。
ドンッ
ナイフがウサギだったモノへと振り下ろされた。
苦しまない様にですか?
いえ、怪異として蘇る前に喉笛を断ちます。
コイツは予言をしますから。
予言?
詳しく教える事は出来ません。
私もこうして実物を見るのは初めてですが。
これは日本で言うところの件の様な予言をする怪異でして。
まぁ予言と言っても白澤などとは違い虐殺や災害などの本当に不吉な予言しかしないんです。
何か恐ろしい予言を発する前に始末したと?
はい。
例えば明末乱世の大西皇帝はこの予言を聞いて発狂しあの悪名高い屠蜀を行ったらしいのです。
そんな危険なものを公開する事は出来ません。
うわあああああ
再び二人の絶叫が部屋に響いた。
この手のホラーは見慣れているが良く出来ているなと感心した。
しかし次の瞬間・・・
喉笛を切られたウサギだったモノが二本足で直立し二人に向いているのだ!
ダランと首の皮一枚で胴体と繋がっている頭部の口がパクパクと動き始める。
そして・・・
わあああああああああ
俺は絶叫していた。
気味の悪い映画だった。
作り物だと分かっていてもその時ウサギが発した言葉も二人の末路もとても話す気にはなれない。
作者退会会員