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短編1
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鏡が無かった。

これは東北の知人から聞いた話です。

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学生時代の事だがあれはどこで体験した話だったか?

俺は暑さから逃れようとトイレの洗面所で頭を水で流していた。

真夏だったがそのトイレに入った時にやけに肌寒さを感じた。

ボロそうな建物のトイレなのにちゃんとクーラーが入っているのかと感心した。

ちょっと奥の便器でションベンでもしていくか。

次の瞬間目の前に通行止めのコーンが置かれている事に気付いた。

そのすぐ先は解体工事現場でトイレの床以外全て取り壊されている状態の剥き出しの崖っぷちだった。

悲鳴を上げて後ずさりする。

いや、確かに洗面所の鏡には奥の部屋の便器が映っていた筈なのに・・・

ゆっくりと鏡の方向へと振り向く。

そこに鏡は無かった。

その代わりに子供が描いた様な奇妙な落書きがあるだけだった。

建物から地面に転落して首がもげた人間が描かれていた。

絶句しその場に尻餅をついて15分間は恐怖で腰が抜けて動けなかったね。

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