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「どぉじしお」 友人の話

中編3
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「どぉじしお」 友人の話

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「どぉじしお」って知ってるか?

俺は知らなかった。

でも大学の友人、水谷がとびきり怖い話だって「どぉじしお」の話をしだした。

そこで初めて知ったんだ。

なんでも水谷の母校では「どぉじしお」っていう醜い女の幽霊がいて、魅入られた男は精神がおかしくなるらしい。

さらに魅入られる男っていうのには条件があって、「成人している」ってこと。

つまり生徒は対象外、教師を狙った幽霊って訳だ。

確かに教師を襲う幽霊っていうのは変わった怪談だと思った。

でもとびきり怖いは言いすぎじゃないか?

その疑問に応えるように、水谷の話には続きがあった。

「オレ、実はその「どぉじしお」見たことあるんだよ。」

水谷にはその幽霊の目撃談まであったみたいだ。

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水谷の話では当時高校2年生の夏、野球部の副部長だった水谷は部室のカギ閉め係も担ってたらしい。

いつも通り最後に部室に備品が揃ってるのを確認して電気を消そうとした瞬間、金縛りにあった。

立ったままで金縛りになんてあったの初めてだって言ってたな。誰でもそうだと思うけど。

物凄い耳鳴りがして、体が立ったままピクリとも動かない。

焦りに焦った水谷は唯一動かすことのできた視線をあちこちに動かしたそうだ。

部室の中央にあるでかい机、ミーティングに使うホワイトボード、そして部員のロッカーのあたりを見た時だった。

ロッカーの端と壁の間に人一人ぐらい入れるスペースがあったらしいけど、そこに人が立ってたんだと。

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髪の長い、黒いワンピースを着た女だったらしい。

一番気持ち悪かったのがその女、恰好や体格で女だと分かるけど顔が無かったそうだ。

顔面の部分だけが真っ黒のブラックホールみたいになってたみたいだ。

その女がふらつきながらゆっくりこちらに向かって歩いてくる。

水谷は必死にもがこうとしたが動けず、ひたすら来るなと祈るしかなかったって言ってたよ。

でもその祈りも虚しく、その女は水谷の鼻すれすれまで無い顔を近づけてきた。

口もないのに声がしたそうだ。

shake

「まつッ、て、て、てあゲる、ね……」

かすれてどもったような感じで聞き取りにくかったが、水谷の耳には「祀ってあげるね」と聞こえた。

意味が分からないが、コロす、シネといった言葉じゃないだけ良かったって言ってたな。

その後女は目の前からふっと消えて、体も自由に動くようになったらしい。

これが水谷の目撃談だ。

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この話を聞いた時、俺は思った。

なんで「どぉじしお」を見たって分かるんだ?

だって「どぉじしお」は醜い女の霊で、成人した男に害をなす。

水谷が見たのは顔の無い女で高校生の頃のことだ。

「どぉじしお」の条件とは全然違わないか?

それを言うと水谷はちょっと困ったように笑った。

「分かるよ。最近そいつがもう一度夢に出てきたんだ。」

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「そいつが夢に出てきて、あの時と全く同じシチュエーションを再現されるんだ。

 ただ顔だけが暗闇じゃない。満面の笑みを浮かべた醜い女の顔になってる。」

「俺たち、もう20歳だもんな。条件も合ってるんだよ。」

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俺は何も言えなくなった。

今まで気にならなかった水谷の目の下の隈が妙に存在感を帯びている。

変な空気になってその日は解散した。

その1週間後、水谷は行方不明になった。

大学に来なくなって連絡も誰もつかない。今も捜索中だ。

水谷とは馬が合ったし、大学で最初にできた友人だったから物凄く辛い。

本当はこんな馬鹿げた原因であってほしくないが、どうしても考えちゃうんだ。

「どぉじしお」のせいなんじゃないかって。

「どぉじしお」の言葉。水谷は「祀ってあげるね。」と解釈した言葉。

俺は「待っててあげるね。」なんじゃないかと思う。

奴は高校時代の水谷に目を付けて成人するまで待ってたんじゃないか。

なんで成人するまで待つ必要があるのか、なぜ水谷だったのか、分からないことは沢山ある。

でも俺は大学を卒業した今でも水谷の最後の別れ際の顔をふとした時に思い出すんだ。

俺はまだ水谷のことを忘れられない。

だから水谷の手掛かりになりそうな「どぉじしお」について調べることにした。

「どぉじしお」について情報があれば教えてほしい。

もう一度聞く。

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「どぉじしお」って知ってるか?

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