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長編17
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帰ってきた題名亡き駄作

やあ、ロビンミッシェルだ。

久しぶりに自分の過去作を読み返していたら、俺の名刺がわりとも呼べるこの「クソ長作品」がない事にきづいてしまってね…ひひ…

まあ、多分恥ずかしくなって削除したんだろうけど、もう一度あの恐怖を皆んなに味わって欲しくて再アップをしようとおもう。

でも、最初に言っておくがこの怪談は今世紀最強クラスのクソ長駄作なので、心が広く、時間が許す君だけに読んで頂きたい…ひひ…

では、始めよう。

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俺の最も古い記憶…そう、それは四歳の時分に遡る。

当時、幼稚園のバラ組にいた俺は、仲が悪くいつも取っ組み合いの喧嘩をしていたリョウ君というライバル的な猛者がいた。

その日も四歳児とは思えない程の派手な死闘を繰り広げていた刹那、教室の窓際のカーテンから嗄れた声が聞こえて来たんだ。

『…ねぇ…私の…足…しらない…?』

ビックリして喧嘩を中断してそちらを見てみると、カーテンが丸まっていて誰かが隠れているかのようにモコっと膨らんでいた。

俺もリョウ君も喧嘩を邪魔された事にムカついてしまって、そのカーテンを二人掛かりでボコボコにしていたら突然意識を失い、気づいたら病院だった。

そして俺もリョウ君も何故か右足を骨折していた…

最強の親父にこの話をしたら、「嘘つくなバカタレ!!」って、二回もげんこつされちゃったよ。…ひ…

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さて、数年が立ち、俺は小学五年生になっていた。

その日宿題を忘れた俺は、先公に怒られるのが怖くて隣りの席の石塚のノートをふんだくったんだ。

「 返せよ~返せよ~」

男の癖に泣きべそをかきながら返してくれってあまりにしつこいので、

イラっとして縦笛でボコボコにしてやったんだが、次の日の朝っぱらから石塚の親父が学校まで凄い剣幕で乗り込んで来てね。

そいつは、なんとみんなが見てる前で俺をボコボコにしやがった。

流石に本職(ヤクザ)のパンチは強烈だったよ…

先公達も見て見ぬフリだったしね。

しかし不思議な事に、あの一件を憶えている奴が一人もいないんだ。

あれだけ沢山の生徒達に見られていたにも拘らず皆知らないと言う…

挙句の果てに石塚って誰だよ?って言われちまった。

卒アル見てみろよだって?見たよ勿論!でも居ねえんだよそんな奴!

夢ではない証拠に、あの時曲がっちまった鼻は今だに情けない状態をキープしてる…ひ…

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時は過ぎて、俺はピチピチの中坊に。

その中学校には俗に言う七不思議というものがあり、そのうちの一つに遭遇してしまった話をしよう。

それは体育館の壁の木目に大きなピエロの顔が不気味に浮き上がっており、夜中十二時きっかりにそこへ行くと、身長二m程もあるピエロが体育館内をグルグルと歩き回っているというものだった。

「 退治するか…」

俺のその一言で怖い物知らずの猛者が五人集まった。

鉄パイプ、木刀、金属バット、刺身包丁、エアガン、各々考えつく限りの武器を持ちあい、十二時きっかりに体育館の窓硝子をぶち破って中へと雪崩込んだ。

暗く静まり返った空間…目を凝らすと体育館の真ん中辺りに人影が見えた。

「 いたぞーー!!」

直也の一声で俺達はピエロに襲いかかった!先陣を走る俺は両手で持っていた物干し竿を力一杯に振り回した。

いい感触があった!俺の一撃でぶっ倒れたピエロと直也。

『タン!タン!タンタン!タン!!タン!タン!タン!タン!!』

続いて龍がエアガンを連射した。

「 いてぇ!!」

龍が連射した数発が俺のケツにヒットした。

ブチ切れた俺はポケットに入れていた金鎚を持って龍に襲いかかった。

しかし龍はエアガンを放り出して一目散に逃げ出してしまった。

追いつけないと判断した俺は現場に戻り、怒りの全てをそのエアガンに込めて、正にランボーの如くピエロを蜂の巣にしてやった!

「 よーし電気つけろ!」

全く動かなくなったピエロを見てやろうと明かりを着けた刹那、俺達は戦慄した。

そこには白目を向いた血だらけの直也が転がっていたんだ。

俺達がその後、一週間も別室で授業を受けさせられた事は言うまでも無いだろう。

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これは奇跡的に入れた高校に入ってすぐの事。親交を深める意味なのか一泊二日の宿泊訓練があり、俺達は山の中にあるキャンプ場のような所に泊まった。

夜九時、ウルサい先公達もやっと俺達の部屋から出て行ったので、悪五人集まって窓際でヤニを吹かしていた刹那、変な奴がいる事に気づいた。

暗闇の中、裏の林の方からなにやらこっちに向かってしきりに手を振っている爺さんがいる。

「やべ!先公か?」

俺達は慌ててヤニを揉み消したんだが、良太郎が変な事を言うんだ。

「 おい!あれ先公じゃねぇよ!あれ俺の爺ちゃんだよ…!」

コイツ頭おかしくなったんじゃないかと思ったんだが、一応確認しに行く事にした。

良太郎を先頭に小屋の裏手に周り、爺さんの所まで行くと急に良太郎が座り込んで泣き出してしまった。

それがまた尋常じゃない泣き方なんだ。

…刹那…

「 おい足がねぇ!このジジイ足がねぇよ!!」

突然龍が大騒ぎしだした。

すると程なくして先公達が数人走って来て、何も言わずに良太郎をどこかへと連れて行ってしまった。

後日、良太郎の爺ちゃんがあの日の夕方に亡くなっていた事を知らされ、俺は妙に納得してしまった。

死因は老衰だった。

龍が叫んだ時、驚いて尻餅を着いた際に鋭利な切り株でケツをつき、五針縫う大怪我をした事はここだけの秘密だ!…ぐぅ…

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その後、色々あって学校を退学。

暫く遊び回っていたが、金がないため仕方なく俺は近所の酒屋でバイトを始めた。

皆、徒党を組み不気味に黒光りしていて頭の良い生き物を知っているかな?

そう… カラスだよな。

奴らの学習能力を甘く見てはいけない!俺はあのカラスという化け物に人間の尊厳を奪われそうになった事がある。

思い出しても恐ろしい話なので、心して聞いてくれ…

それはバイトを始めて半年が過ぎた秋口の事。仕事場の裏手の空き地で数十羽のカラスが何やら一ヶ所に集まってガーガー騒いでいた。

糞ウルサいのでゴキジェットと蠅叩きを持って追い払っていた刹那、何かに躓いてすてんと転んでしまったんだ。

見るとカラス達が飛び立った所に人間の下半身がニョキリと生えていた。

丁度腰から上が土に埋まった逆さまの状態だ…

ムカついたんでその下半身をボコボコにしていたら、べちゃべちゃと何かが空から降って来た。

それは大量のカラスの糞だった!

俺は体中糞まみれになりながらも、カラス達に向かって石を投げ続けた! 刹那!

口の中にそれは飛び込んできた!

…糞… ふん… フン… ぐほぅ!!

俺は一瞬で心が折れてその場を後にしたよ…

以来、俺はカラスとラモスが生理的に無理になってしまったんだ。

ふぅ…驚かせてすまなかったな!

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そして数年経ち…

満天の星空の下、俺は長距離ドライバーの龍の隣に乗り込み東京へと向かっていた。

名古屋辺りのパーキングで休憩しようと立ち寄ったら、暴走族の集団が騒いでいた。

絡んできたんで一人一人念入りにボコボコにしていたんだが、何故かどんどんと人数が膨らんで行く。

最初は七人程度だったのに、気付いたら二十人を軽く超えていた。

流石にこれはヤバいかなと思っていたら、背後から龍の声がした。

「 兄貴ぃ何一人で暴れてんの?…クスクス… 」

ハッと我に帰って辺りを見渡すと俺達以外誰もいない…

今ぶっ倒した筈の奴らが跡形も無く消えてしまっていたんだ。

なんか急にこっ恥ずかしくなってきて、

「 た、体操してたんだよ!!」

って誤魔化そうとしたんだけど、龍がいやらしい顔でニヤニヤと笑うんで、なんかムカついてきて龍をボコボコにしてやった。

そこからは龍に変わり俺がハンドルを握る事になったんだけど、静岡を越えた辺りで派手に事故ってしまってね…

残念ながらトラックはボコボコになっちまったよ。

まぁ酒入ってた上に無免許だったしな…

見事に借金まみれにはなっちまったけど大丈夫!気持ちだけはいつも→前向き→なんで皆安心してくれ!

…ひっひっひ…皆そろそろ飽きてきたかな? もうすぐ終わるんであともう少し我慢してくれ。

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実はそんなクズみたいな俺でも、一度結婚を経験しているんだ。

そして、離婚もな…

この話はその結婚式での話なんだが、式も中盤、直也がお嫁サンバなる愚曲を披露していた刹那、新婦側の円卓に何やら見覚えのある顔を見つけた。

それはこの結婚式の為やむなくフッた恭子の兄、満の姿だった。

奴は恐ろしい程の憎しみ…

怒りを込めた形相で目を吊り上げて俺を睨みつけていた。

プチンと俺のコメカミの血管が切れる音がしたが、流石にこんなめでたい席で満をボコボコには出来ない。

式が無茶苦茶になってしまう…

常識人の俺はグッと怒りを飲み込んで式が終わった明くる日の早朝、満のボロい家を襲撃して、お玉と中華鍋でボコボコにしてやったんだ。

しかし、奴の方が一枚上手だった!

俺の性格を熟知していた満は警察を待機させていやがったんだ…

俺はそのまま逮捕された挙げ句、嫁さんの親から離婚を迫られて、幸せの絶頂から一転、一人ぼっちになってしまった。

ん~つまりこの話の怖い所は、え~と、式場にいた満の体が透けていた事だな。

俺以外に満の姿を見た奴は一人としていない。

今思うとあれは生き霊の類いではないかと思っている。

俺にフラれてから何度もリストカットを繰り返す恭子の怨みを晴らすべく、奴が現れたに違いないんだ!

それからの俺の人生は、お世辞にも幸せとは呼べない有り様だ。

別に笑ってくれても構わない。

しかし最近ではなんか変な魔術でもかけられてんじゃねぇかとさえ思ってしまう…

こんな糞みたいな人生を変えたい!

俺は今、切にそう願っている。

因みに恭子はアルソックの女に似ていた。

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俺は心機一転、とある駅前で立ち食い蕎麦屋を開店した。

アルバイトを二人雇い、その夜も三人でカウンターに立っていた刹那、普段は無口な女子大生の泉が客の切れたアイドルタイムに話しかけてきたんだ。

「 ねぇねぇ店長って怖い話とか好きですよね?私のお話聞いてくれます?」

たかがガキの愚話とたかを括って聞いてみると、どっこい、これが中々どうして、芯の太い見事な怪談話だった。

俺はガクガクと震え出した内太股と、体中から噴き出した鳥肌を必死で泉にバレまいと隠していた。

何故ならこんな小娘の話でビビる事は、大人として絶対に許されないからだ!

平静を装い、口笛を吹きながらカウンターの向こうのガラス窓を見るとそこに何か違和感を感じた…

外は暗い為、ガラス戸には厨房の中の様子が全面に写し出されている。

…しかし…

何故かそこに居るのは俺だけ。

隣りに居る筈の泉の姿が写っていないんだ。

恐る恐る隣りを見ると、ニタリと不適な笑みを浮かべた彼女がその大きな瞳で俺を見つめていた。

「 ひひ、店長お、もう一つ怖い話あるんですけど…聞きま…す…かぁ…?」

「 ぎゃっほう!!」

俺の叫び声を聞いて、奥で作業をしていたデブの武が走ってきた。

俺は尻餅をついたまま恐怖で動く事が出来ない。

その時、既に泉の姿はもうどこにも無かった…

「 泉が…泉が…」

すると俺の狼狽ぶりを見て、デブの武はこう言った。

「 ちょっと店長何言ってんすか?

泉さんは先月カラダ壊して辞めたじゃないすか、大丈夫っすか?」

俺は武を力一杯ひっぱたいた後、すぐさま暖簾を片付け、その日は店を閉店にした事は言うまでもないだろう。

後日、泉が病院で息を引き取った…

という出来過ぎたオチは無いが、あれ以来、泉とは一度も会っていない。

因みに武はよくレジの小銭をパクっていたのでクビにした。

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実は俺、一度死に神に間違われた経験がある。

つい先日コンビニで会計の列に並んでいた刹那、「二番目の方こちらへどうぞー」と、隣のレジから声が掛かった。

すると俺の後ろに並んでいたリーマンが小走りでそちらへと向かったんだ。俺の順番なのにね…

ブチ切れた俺はすぐさま襟首を捕まえてボコボコにしてやったんだが、店員が止めに入ってね…

ついでにボコボコにしていたら誰が通報したのか警察が来たんだ。

ついでにボコボコにしようと思ったら逆にボコボコにされてしまってね…

あっさりと取り押さえられて羽交い締めにされた俺に向かって、最初にボコボコにしたずる賢いリーマンが鼻血を垂らしながらこう叫んだんだ。

「こ、こいつは死に神だ!!」 ってね…

ごほん!皆、頭に???マークが浮かんでいる事だろう…仕方がない、実は書いている俺当人もワケが解らないんだ…ひひ…

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まあ、皆も薄々気が付いている事だろう。実は俺、俗にいう草食系男子なんだが、ある日絵に書いた様な衝撃的な出逢いがあったんだ。

自転車で派手に転んでしまった俺をフへフへと笑った爺さんがいたんで、一目もはばからずにボコボコにしていたら、身を体して止めに入った女がいた。

麻理子…

俺は彼女の優しさと美しさ、センスのいい洋服と香水の匂い、そして形の良いボインに一瞬でハートをボコボコにされちまった!

しかし付き合うようになってから二カ月が経った日の朝、麻理子は短い手紙だけを残して突然俺の前から姿を消してしまったんだ。

『 〜愛しのロビたんへ〜

短い間だったけど気持ちよかっ…ん~ん、楽しかったよ!これ以上貴方のそばにいたら離れられなくなりそうで怖い… 勝手な理由でごめんなさい!でも許して下さい!

私は猫屋敷に帰ります。どうか探さないで下さい。 麻理子より 』

最後に肉球の拇印が添えられていた。

現実を受け入れられない俺は、溢れる涙を抑える事ができずに、正にあの「西田局長」の如くワンワンと泣き崩れてしまったよ。

まぁでも今はすっかり立ち直って、新しい恋に向かって走り出しているんで皆、安心してくれ!!

因みに麻理子はアレの時、猫撫で声で執拗に俺を攻めたてた事は言うまでもないだろう。

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腕だけ、足だけ、影だけ、声だけ、足音だけ…

時に様々な姿で俺達を怖がらせる物の怪達。怖いよな…ひ…

ふむ、確かにどれも恐ろしい事に変わりはないのだが、頭部だけの物の怪と云うのも中々に恐ろしい。

妹の夏美は湯船に浮かぶ数個の生首に遭遇した事がある。

ある夜、夏美は無駄に腰まで伸ばした茶髪をトリートメントし終わった時にふとその視線に気付いたという。

なんと浴槽一杯に、ひしめき合う様にして沢山の生首がワサワサと蠢いていたんだ!

子供、老人、落ち武者、半分溶けてしまった様な者、目が飛び出した者、様々な首が並ぶ中、遺影でしか見た事のない曾お爺ちゃんの首までもが有ったという。

余りもの凄まじい光景に夏美は言葉を失ってしまった。

しかし、よく見るとそれらの生首達には一つだけ共通点があったらしい。と云うのも皆一様に、物の怪にはあるまじきエロい目をして夏美の身体を舐め回す様に凝視していたと云うのだ…

生きても男。死んでも男。考えさせられる体験だったと夏美は当時を振り返る…ひ…

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皆、霊体は触れられないと思い込んではいないだろうか?世の中には色々な形の霊体がいると聞くが、俺が過去に出会った「ソイツ」はかなりのプレミア的な存在と言えるだろう。

何故ならそれはまさかの打撃をモロに受けてしまう個体だったからだ。

とある深夜に泥酔状態で帰路に着いていた刹那、突然身なりの小汚いオヤジが俺の歩行の邪魔をしてきたんだ。

暗い夜道、街灯が照らし出すその顔はとてもこの世の人間とは思えない様相を呈していた。

ボサボサの髪に痩けた頬、焦点の合っていない目に、だらしのない口元にはくっきりとした二本の「ほうれい線」が深く刻まれている。

そして、その片方にだけ浮き出たキュートな靨(えくぼ)…

身の危険を感じた俺は、たまたま右手に持っていたレンガでソイツをボコボコにしてやった。

アスファルトに寝転がり、体中から血を吹き出しながら「あーー!!」とのた打ち回るオヤジをそこに放置して、俺はまた夜道をふらふらと歩き出した。

すると背後から、

ズザァ…ズザァ…ズザァ…ズザァ…

いでぇよ…いでぇよ…いでぇよ…いでぇよ…いでぇよ…

と近づいてくる不気味な呻き声。俺は堪忍袋の緒がブチ切れて、たまたま左手に持っていたフライパンを振り向き様に力一杯振り下ろした!

ブン!!

しかしそれは見事に空を斬っていた。

そう、そこには誰もおらずに先ほど叩きのめした筈の「キュートな靨のオヤジ」も忽然とその姿を消していたんだ。

ふと、道路側を見ると客待ちをしているタクシーの運ちゃんが俺を見ながらニヤついていた。まぁ機嫌の悪い俺がその後取った行動は敢えて書くまでも無いだろうな…

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そしてこの話は去年の十月の終わり頃、そう、ハロウィンの夜に起きた出来事なんだが、俺は恥ずかしながらバッチリと仮装をして若者が集まる大阪の街まで足を延ばしてきた。

いや、いい歳をして決して本意ではない!当時お気に入りだったキャバ嬢の美雪が行こう行こうとしつこく誘うからやむなく行ったんだ。本当だ!

悩んだ末、美雪は魔女に、俺はキャリーぱみゅぱみゅになりきる事にした。

生まれて初めて着ける「ツケ睫毛」なる魔物に苦しむ事二十分、俺達は意気揚々と阪急電車へと乗り込んだ。

ゴクリと固唾を呑むリーマン。

遠目から指をさして笑う女子高生。

俺の了解無しにパシャパシャとシャッターを切ってくるニューヨーカー達。

仕方なく可愛いポーズを決めながら視線を車掌室に向けた刹那、俺は即座に現実に引き戻された…

いたんだよ…奴が!先程紹介したあの「キュートな靨(えくぼ)のオヤジ」がな!

ニタニタと不気味な笑みを浮かべながら、きったねぇ顔をガラス戸にゴリゴリと押し付けている。

それによく見てみると、まるで奴も今日この日を楽しんでいるかの如く、あの名作「ドーン・オブ・ザ・デッド」のゾンビに扮装している様子だった。

俺は前張りした海綿帯から頭部に向かって血液が急上昇するのを感じながら叫んだ。

「てめえこの野郎!!また邪魔をする気か!!」

俺は即座に背中に忍ばせていた如意棒を取り出し、「伸びろ!」と叫んだ!!

ガシャーーン!!!

如意棒はガラス戸とオヤジを貫通してからも尚も伸び続け、器物破損の容疑で俺は緊急逮捕された。

因みに、「ファッションmonster」と今回の怪談は全く関係がない事をじゅうぶんに理解してくれるとありがたい…ひ…

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さて、世の中には電話ボックスに纏わる怪談話がゴマンとあるが、俺の妹、美菜もそんな怪奇に見舞われた一人だ。

美菜が十六の頃、携帯をまだ持っていなかった為、近所に一つだけある電話ボックスで当時の彼氏と長電話をしていた。

話の内容は別れ話だ…

電話を切った直後泣き崩れてしまった美菜は電話ボックスの中で座り込んでしまった。

どれ位の間泣いていただろうか…

泣き疲れた美菜が顔を上げた時、それが目に飛び込んできた。

[ 心を癒やす語り部 - 稲河淳太- 不思議でちょっぴり恐怖な世界へと貴方を誘います- 07◆5-4◆1-9280 ]

丁度目線の先に貼られたその紙切れは、空っぽになった美菜の心を鷲掴みにしてしまった。

残量の少ないテレホンカードを突っ込み記載番号をプッシュする。

まるで導かれるように、何かに操られるかのように、何の迷いもなく緑色の受話器を耳に当てた。

三分後、電話ボックスのドアを蹴破って外に飛び出してきた美菜。

「糞ジジイが、フザケやがって!!」

何故か怒りをあらわにした美菜は、たまたまそこに居合わせた幼子の浮遊霊を事もあろうに手荒くボコボコになるまで罵り!けなし!ついには泣かせてしまったと云う。

家に帰って来てからも一向に機嫌の直らない美菜は俺達家族にあたりまくった。

恐る恐る親父が訳を聞いてみると、美菜は目をつり上げて、鼻をピーピー鳴らしながらこう語った。

「なんかやたらと活舌が悪い割に早口なオヤジが出てきてさ「ファファ~」とか「ギギギギ~」とか「来るぞー来るぞー」とか「やだな~!なんかやだな~!」とかしつこく何回も繰り返してくるから電話切ろうとしたら急に声色が変わってさ…

「ふふふ、君、処女じゃないんだろ?」とか、「ブッチャけお前いくらなんだ?」とか聞いてきたのお!「テメェ!ふざけんな!」って言ったら、「すまん!じゃあせめてパンツだけでも売ってくれないか?」だってよ!畜生!!ナメやがってあのオヤジ!!変態のゴミ野郎が!!」

美菜はそれだけ言うと、ゴミ箱を蹴っ飛ばして部屋を出て行ってしまった。

因みにその後、俺と親父が「稲河」とか云う親父の住所を炙り出し、きっちりと始末した事は言うまでもないだろう。

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人が死ぬ話で大変申し訳ないが、俺の尊敬する最強の親父の話をさせて頂きたい。

ガキの頃から、己の拳が骨折するまで俺を殴り続けた親父がこの世を去ったのは十年前。死因は肺癌だ。

死ぬ少し前にへビスモの親父は奇妙な夢を見たんだ。

胸が壊れそうな程苦しくなって、口から何かをゲボゲボと吐き出す夢…

それは汚い雑巾やら、生ゴミ、吸い殻、ゴキ◯リ、他にもここではとても書けないような物までもだ。

まぁ、うん◯だ…

とにかく、ありとあらゆる汚物をただ吐き続けるというエグい夢だったそうだ。

俺にこの話をした数日後に大量の血を吐いて末期の肺癌が発覚した。そしてその三ヶ月後に親父は逝った。

俺はその事を、今朝、目醒めて突然思い出したんだ。

なぜかって?

昨夜、俺もそれと同じ夢を見ちゃったからだよ!(T△T)

俺は親父に対して殴られた記憶しかない。だが俺は親父を心の底から尊敬し、愛している!決して変な意味じゃなくだ!!

殴られてもいい。出来る事ならあの世でもう一度会って感謝の言葉を親父に伝えたい!…ぐす…

因みに最強の親父は「気合いだ!気合いだ!気合いだ!」のあのオヤジに酷似していた事だけは内緒にしておいてくれ…ひ…

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みんな長々と本当にすまなかった。

これが最後の体験談なので安心してくれ。

実話。

そう、これは誰にでも起こりえるかも知れない身近な恐怖だ!自分は関係無いと余裕をぶっこいていると、とんでもない異形と遭遇するかも知れん!くれぐれも美女は気を付けて頂きたい。

休日に腹が減ったので近所のラーメン屋へと行く事にした。味は博多系豚骨、カウンター八席だけの屋台風で小汚い店だがまあまあお気に入りの店だ。

しかし昼のランチタイムから深夜三時まで開けっ放しの筈のシャッターが何故かその日は降りていた。

スマホを見ると昼の三時ジャスト。

暖簾は掛かっている。定休日でもないのにおかしいなと思い、小さな硝子窓から電気の消えた店内を覗くと一瞬で血の気が引いた。

なんと最近入ったオタ風の大学生アルバイト君がまさかの絶賛自慰真っ最中!!カウンターの丸椅子に寝っ転がって霰も無い姿でもがいているのだ。丸見えだ。彼は誰も見ていないと思っているのか、スマホ片手に右手を激しく乱舞させながら超ハッスルしている。眼鏡も曇っているようだ。もう一度言おう。丸見えだ。

俺は思考回路停止状態でその場に緊急固定した。

道路を走る市バスのクラクションで我に返り、現場を写メで撮ってやろうとスマホをカメラモードに切り替え急いで向けた先には、暗闇の中、下半身裸のキモオタ青年が仁王立ちして、もの凄い形相で俺を睨みつけていた。

彼はヒラヒラと両手を上下しながら正に千手観音菩薩状態。いつでも攻撃が出来る戦闘態勢を取っているのは一目瞭然だった。

俺はまた思考回路停止状態で完全固定した。

奴は店の中で何かを叫んでいるようだが、無論声は聞こえてこない。

シャッターを開けて「貴様!店長の目ぇ盗んで勝手に店閉めて何やってんだ!糞ナニ豚汁野郎が!!」と言って拳骨を食らわせてやりそうになったが、こいつと話す事が気持ち悪いし鳥肌もんな為、指さして中指を立てて大笑いした後、素早く写メを三枚撮り帰路に着いた。

食欲不信。

人間不信。

粗末な愚根の幻影。

俺はあの馬鹿のせいで三日間も悪夢に魘された。お陰で三キロも痩せ、もうあの店のラーメンは食わないと心に決めた。そして恐々と写メを拡大した舎弟の龍が叫びながらその場に嘔吐した。

「兄貴!あいつ被ってんじゃん…w」

「く、ㄑㄜそっ!!!」

後日、ボビーの声色&匿名でその店と保健所にクレームを入れたのは言うまでもないよな。

この度は最後までお読み頂き、本当にありがとうございました…ひひ…

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