1:ユウジはタルパの部屋にお邪魔している。
キヨマロが買った像の正体を考える作戦会議である。
今のところ、怪現象は鳴りを潜めている。
しかし、原因と思わられる像をどうにかしない限り、不安は拭えない。
心配したタルパが夜勤後、ユウジの勤めるコンビニエンスストアに立ち寄り、宅飲みに誘ったのである。
「まず、何で七福神の2柱(はしら)だけなん?それか、他の柱もあったのかな?」
『どうだろうね。七福神の並べ方は、得たい御利益によって変わるらしいから、その可能性はあるかな。ちなみに、大黒天と恵比寿を2柱で祀るパターンもあるよ』
大黒天を大国主命(おおくにぬしのみこと)と同一視して、大国主命の第一子とされる事代主神(ことしろぬしのかみ)を恵比寿と同一視される事が多い。
その為、親子を一緒に祀り、これが七福神信仰の発祥とする説があると、タルパは説明した。
ユウジが疑問を感じているのは、神をかたどった像。
その木枠が嫌な感じがするところである。
何かあるのだろうか?
『ブラザーはあの木枠を見た時、何か感じた?』
「怨念みたいな嫌な感じがしたとしか言えないかな。ブラザーが壊したくなった理由は何となく分かる。あの場がファミレスじゃ無きゃ、俺も同じ事したよ」
『感じた事は同じなのかな?』
「かな?」
答えは出ずに、飲み続けるユウジとタルパ。
ふと、ユウジが疑問に思った事を口にする。
「そもそも、神をかたどった像をなんで、木枠に閉じ込めるんさ」
それがヒントになった。
『そうか。ワラズマだ』
それを知らないユウジにタルパは説明した。
ワラズマとは、ネット怪談で、お指様やら、フィンガーさんと呼ばれるもので、怨霊を閉じ込めて福の神として祀る為、専門の行者が作る。
童(わらず)間、もしくは、破らず間が名前の由来と言われている。
仏間の隣に四角の部屋を作り、出入り口を閉じたままにする。家人の通行を禁じ、客人の通行を推奨する。
部屋の出入り口を開けない限り、客人から吸い取った福を家にもたらす。
出入り口を開けた者には、閉じ込められた怨念が当てられ、長生き出来ない。
「つまりは閉じ込められた怨念が、漏れてる?」
『だから、俺達が壊したくなったんじゃ無いかな?』
「怨念が強すぎて皮肉にも、物理的に破壊出来なくなってるってわけだね。多分、正しい。なんか、そんな感じがする」
『ブラザーがそう感じるって事は間違い無さそうだね。破壊は難しいかも知れないけど、今の現場でアクリル板の廃材でるから、囲むか。今夜、キヨマロに持って来させるよ』
今後の指針が決まった所で、ユウジは夜休みだが、タルパは現場は徒歩圏内だが、夜勤の為、解散となった。
作者蘭ユウジ
突如作者の脳内に溢れ出す存在しない記憶。第2弾です。
第1話https://kowabana.jp/stories/35276
第2話https://kowabana.jp/stories/35322