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母の語り(サトウ君のお母さん)

短編2
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母の語り(サトウ君のお母さん)

これは、俺の母が話してくれた話なんですがね。

小さい頃、団地に住んでたんですよ。

同じ棟に住むいわゆる、幼馴染。仮にサトウ君としておきましょうか。そんなサトウ君のお母さんに纏わるお話です。

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俺の母とサトウ君のお母さんはね。凄く仲が良かった。

サトウ家は3人兄弟でして、末っ子と同い年で、彼は少しヤンチャな男の子だったんですが、そのお母さん。当時は子供だった俺は覚えて無いんですけど、重い病気にかかってしまったんですよ。

そして、程なく亡くなってしまったんですね。

今でも覚えてますよ。

母の落胆っぷりがね。

元来家族がするべき学校への訃報の報せなんか泣きながらしてね。

葬儀も終えて、少し経った後に、母が不思議な夢を見たって話してくれましてね。

綺麗な草原の様な所にお坊さんとお母さんが座っていて、母に微笑みを見せてくれたのです。

あれですかね。

ほら、この世とあの世には、境目の世界があって、死者と唯一会える場所ってあるらしいじゃないですか。

俺は思うんですよ。その、お坊さん。サトウ君のお母さんの背後霊で、亡くなった彼女をあの世へ導いたんじゃないかなって。

でも、皆さん疑問に思いませんか?

サトウ君のお母さんは、家族では無く、なぜ母に最期の挨拶に来たのでしょうか?

それを裏付ける様な話もあるのですよ。

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サトウ君の家はネコを飼ってました。

団地なんで、本当はいけないんですけどね。

『チビ』なんて名前付けて可愛がってたんですが、特にサトウ君のお母さんが可愛がってたんですよ。

チビちゃんね。

母の事も大好きで、母がサトウ君の家を訪ねると嬉しそうに駆け寄って来るそうです。

サトウ君のお母さんが亡くなった後にね、母がサトウ君の訪ねた時に、嬉しそうに駆け寄って来たんですが、何かに躓いて、転んでしまった。

その後、チビちゃん。ベランダから外見て、母の所に来なかったんですよ。

母はね。恥ずかしかったのかねぇ。可愛かったなんて話すんですよ。

それと、母はね。サトウ君のお母さんの魂が、チビちゃんに移ったんじゃないかなんて話してました。

確かにネコが転んで恥ずかしがる様な素振り見せるんですかね。

俺にも分かりませんが、信じたいですね。

随分前に、母も他界したのですが、今頃ね、サトウ君のお母さんと母がお茶でも飲みながら仲良く話してるんじゃないかな。

サトウ君は、数十年前に会った時に起業したなんて言ってました。

それに比べて俺は、孫すら居ない状況で、きっと母は情け無い息子だなんて、言ってそうです。

でも、サトウ君のお母さんも、母もそんな俺の事も見守ってくれてる。

そんな事を信じたくなるお話でした。

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