【始めに】ボヤき成分多めの為、疲労時の閲覧は御遠慮願います……と取扱説明書の注意書風に。
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就職して10年程、部門のまとめ役でも無いのに何故か、私は各支店で組合の支部長を任されたりしていた────と言っても、冗談半分で「誰も名乗り出なければ、私がやりましょうかね」と申し上げたら、押し付けられる様な格好で、二度異動しながら二期三度程、務めたりした────のである。
二期目だったから一昨年だろうか、絶景───目の前に切り立った崖に緑が青々と生い茂り、ザァーっと絶え間無い滝の音が勇壮に、だが騒音で無く心地良く響き渡る部屋を、三年前の一期目と同じくあてがわれる形で、同じく自然と隣り合わせ故に、発生するカメムシに困惑させられ格闘しつつ、私以外は10~20歳程年上のおじ様諸氏と共に、のんびりした距離で、短い夜を過ごす事になる。
夕食を済ませ温泉で垢を落とした後(のち)に、各々の勤務先の抱える今後の課題や、明日の会議の叩き台の打ち合わせも済んで、酒盛りも終えて日付を跨ぐと、明日の朝も早い為、バサバサとやりながらもそれぞれが、キチンと寝床をこしらえて、サービス業故の日頃の疲労も重なってか、彼等はグオーグオーと別な宴を始めた。
私は幾年経っても、一人での投宿を除けば、集団で寝る機会に慣れず、人がひしめき合っている時特有の、ムワっと来る熱気で中々寝付けずにいる。
────と、1:30だったろうか。眠れなさ故に携帯電話をパカパカと開いたり閉じたりと繰り返していたので、時刻が丑三つ時に差し掛かる少し前だったのを記憶している。
プルルルっ!!………プルルルっ!!………プルルルっ!!………
有ろう事か、客室電話の呼び出し音が鳴り響く。
無論、誰も取る人も無く、快適快適とばかりにおじ様方の発する騒音と、そこに歪(いびつ)に交差する様に、電子音が嫌なハーモニーを奏でる。
更に運悪く、その電話は私の寝床のすぐ横に設置されており、嫌ーな予感がした私は受話器にも手を伸ばせず、ひたすら顔をしかめて鳴り止むのを待つ。
……と10回位で呼び出し音は切れたものの、私からすれば異様に長く感じられる時間であり、おじ様方の発する騒音に混じって、再び鳴り出しそうな気がして、震えと同時にゲンナリ感が襲って来た。
結局呼び出し音は鳴り響かずに日が昇り、早々に寝られずボヤボヤした格好で翌日の会議に臨んだものの、居眠りもせず、事故も起こす事無く、無事に帰宅の途に就く。
然し、真夜中のアレは何だったのか……
作者芝阪雁茂
或る意味ベタなシチュエーションで起きた珍体験。あんな状態で、果たして応対なんて出来るだろうか?と、本人である私自身が怖がっております出来事を御一つ。
今迄御読み頂いた話に出て来る、ふてぶてしく逞しい迄の主要キャラは私と対極であると、御気付きになれるかも知れません(これでは解説になっていない様な……)。