1:その像は不思議だった。
アンティークにしては、木枠の正面に斜めの棒が入っている。
これでは、像の美観を損なう。
意図が不明だった。
ユウジが視て感じた事を口にした。
「木枠が危険だね。像からは何も感じない」
「別天津神さんも似た様な事言ってましたね。
でも、酷いんですよ。見た瞬間、ハンマーで壊そうとしたんですよ」
『俺が、本気で叩いても壊れなかった』
タルパは、小柄に見えるが、筋肉質だ。
腕力も相当なものである。
「ブラザーが本気で叩いても壊れなかったって…」
その後、タルパはこれまでの経緯を説明した。
現場でちょっとしたトラブルが続いた。
最初は職人。
手元が狂い、かなり軽度の怪我をしたり、警備員が転ぶなど。
しかし、タルパとキヨマロだけは何も起きなかった。
タルパが問い詰めると、キヨマロがこの像を購入した事を思い出し、それを話した。
キヨマロの家に向かい、これをタルパが見た瞬間壊したくなって、職人から借りたハンマーを振ったが傷一つ付かなかった。
タルパ自身では分からないので、ユウジに見せるべく、コンビニへ行ったが、ユウジは休みだった。
食事がてらにユウジを呼び出して今に至る。
「とりあえず、正体は俺にも分からん」
『ブラザーでも分からないかー』
「これ、悪いモノですか?」
「うーん。像からは何も感じないし、平気じゃ無いかな?これ買った時何か言われた?」
「あ、気が向いたら、水あげてって言われました」
『キヨマロよ…。その時点で、何かおかしいって思わなかったのか?普通アンティーク像に水なんて、あげない』
「そっ、そだね。俺じゃ正体分からんし、水あげて様子見かな。仏具店行けば、仏壇に水を供える為の仏具売ってるだろうし、俺の友達は、お猪口とかで代用してたって聞いた」
「分かりました。水あげてみます」
ユウジは、毎日水は変える事をアドバイスした。
結果。現場での怪現象は鳴りを潜めた。
作者蘭ユウジ
存在しない記憶第2弾。2話目です。
第1話目 https://kowabana.jp/stories/35276