中編4
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デリバリー

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俺の名前はひろし。

とある会社でコンサルタントとして働きながら、休みの日に今大人気のデリバリーサービス、ユーバーイーツの宅配員をしています。

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どちらかと言うと学生がアルバイトとしてやっているイメージが強いこの仕事ですが、最近では俺のような社会人が、仕事の傍らお小遣い稼ぎにやることも少なくないのです。

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「3丁目の滑信麻美さんにDX豚丼ね、はいはい!今日のお客さん怖いおじさんたちばっかりだから、可愛いお嬢さんだったらいいなー。なははは!!!」

そんなくだらない事を考えながら、今日も俺は宅配に向かうのでした。

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たどり着いた彼女の住所は、立派なお屋敷でした。

「はえー。こんなところに住んでいるなんて、きっとお金持ちのお嬢さんに違いないな」

そう思いつつ、インターホンを押しました。

しかし、一向に出てくる様子がありません。

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「すみませーん。ユーバーイーツです!豚丼のお届けにあがりました!」

大声で叫んでみたものの、出てくる様子はありませんでした。

「出かけちゃったのかな…困るなあ…」

俺はユーバーに登録されていたお客様の携帯にかけてみました。

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プルルルル

「はい、滑信です」

程なくして、お客様は電話に出てくれました。

「あ、もしもし?ユーバーイーツです。今ご注文に上がったんですけど、今出かけられてます?」

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「すみません、家にいるんですが、家に上がってきてもらえませんか?鍵は空いてます。足が悪くて、玄関までいけなくて」

「そうでしたか!わかりました」

お客様はか細い声でそうおっしゃられました。

足が悪い…?若そうなのに…?

怪我でもしているのかな?

疑問に思いましたが、俺は家に上がることにしました。

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デリバリーに限らず、本来はお客様のご自宅に上がることは御法度ですが、仕方ありません。

おそるおそる上がると、家の中は薄暗く、電気がほとんどついていませんでした。

「そこから2階に上がって、一番奥の部屋にいます」

俺は言われたとおりに進んでいきました。

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奥の部屋には鍵がかかっていましたが、ちょうど近くに置いてあったので、そのまま開けました。

「どうも、ユーバーイーツ…です…」

現れたお客様の姿を見て、俺は声を失いました。

お客様は、顔立ちが整ったとても美しい方でした。

しかし、声を失ったのは、彼女が美しかったからではなく、別の理由でした。

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彼女は全身があざだらけで、ロクに食事も取っていないのか、顔も身体もやせこけていました。

足が悪いのは、足に酷い怪我をしているからだったようで、まともに歩くこともできず、這いずりながら私のところに来ました。

「お金…どうぞ…」

現金と引き換えに、俺は豚丼を手渡しました。

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彼女は、涙を流しながら豚丼を頬張られました。

「うう…こんなに美味しいもの…いつ以来だろう」

「配達員として、こんな事を聞くのは申し訳ないのですが…なぜあなたはこんな姿に…訳を聞かせてください。」

「私には姉がいて…ここに2人で暮らしています」

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彼女は全てを話してくれました。

彼女の姉はモデルをしていて、昔は優しかったのに、数年前から精神に異常をきたし、妹に暴力を振るうようになったこと。

それに耐えかねてこの事をマスコミに密告しようとしたために彼女に監禁され、外への連絡も遮断されたこと。

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今日こうしてユーバーを注文したのは、ようやくの思いで自分のスマホをこっそり取り戻すことが出来、警察に通報しようとしたが、その前にロクな食事を与えられていなかったから、美味しいものが食べたくなったからであること。

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「ごめんなさい…あなたをこんな事に巻き込みたくなかったのに…」

「いいんですよ。それよりそのモデルのお姉さんって…まさか滑信よしの?」

「はい、よしのです」

俺は愕然としました。

そういえば、滑信という苗字に聞き覚えがありました。

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滑信よしのは、今大人気のモデルです。

バラエティやドラマにも出演し、CMにもたくさん出ている、老若男女問わず愛される美女。

そんな彼女が、裏で実の妹をこんな酷い目に合わせているなんて…

信じられませんでした。

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「お願いします…助けてください!このままでは私は間違いなく殺されてしまいます!」

麻美さんは、泣きじゃくりながら、俺に抱きついてきました。

俺もなんとか彼女を救ってあげたい。

そう思い、警察と病院に電話しようと思いました。

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その時でした。

後ろから硬くて重いもので俺は頭を殴られました。

薄れ行く意識の中で、会ったことはないけれど、聞き覚えがある女性の声を、俺は聞き取りました。

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「知ってはいけないことを、知っちゃったね…」

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