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中編3
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キャンプの罰

大学生のとき、車の免許を取ったばかりの友達2人と山梨県の湖にキャンプに行ったんです。

キャンプ場の近くのスーパーで大量の肉とお酒を買い込んで、夕方過ぎにキャンプ場にチェックイン。

とはいえお金のない大学生。

今だから時効なんて都合のいい事をいいことをいう訳じゃないけど、夕方6時を過ぎるとキャンプ場の受付の人は帰るので、使用料を払わないで泊まれるっていう裏技が僕達の大学の先輩から脈々と受け継がれている。

(見回りの人もいるけど、泊っている人たち全員を把握しているわけではないので)

なんて言ってもこの後、きちんと天罰を受けることになるんですけど…。

自分も友達も小心者だからキャンプ場も薄暗い端っこの方に、目立たないようにテントを張ってました。

でもスーパーで買ってきた薪で火を起こして、バーベキューしながらお酒を飲み始めたら、気が大きくなってどんちゃん騒ぎ。

アルコールと慣れない車の運転疲れでテントの中で3人ともテントの中で爆睡。

……夏とはいえ湖の近くなので夜になると、少し冷え込んできて夜中にふと目が覚めてしまった。

携帯で時間を見ると3時過ぎ。

変な時間に目が覚めたなー。薄い毛布を体にかけ直して、うつろうつろしてると、

ギギッ

って音が聞こえてきて、何の音だろう?

一瞬、管理人が見回りで無銭宿泊の俺たちを注意しにきたのか?って思ったけど人の足音の感じではない。

何かが揺れて軋むような音が聞こえる…。

ギギッギギ

音の方向に集中して聞いてみると、テントの外だけど入口の近くではない…、テントの横でもない。

ギギギギ

音の方向を探してみると…、テントの真上から聞こえる…。

背筋がぞくっと怖くなって、友達を起こそうとしても二人とも大量に飲んだ酒で寝入ってしまい、起きる素振りすら見せない…。

ギギギギッ

得体のしれないものが自分たちの頭上にいる…。

想像ばかりが膨らんで、怖いけれど確かめないと、さらに恐怖心があおられて…。

意を決して、そーっとテントの入り口のファスナーを開けて、首を出して上を見上げてみた。

幹から広がった枝と葉っぱに回りの光は飲み込まれて、真っ暗闇で何も見えない…。

ただギギギ…って捩れる音は、確かに見上げている方向から聞こえる…。

少しづつ眼が暗さになれるのと、月明りでスゥっと照らされた瞬間に、ロープで首を吊った人が見えたんだ。

全身が凍り付いたような鳥肌が立って、一目散にテントの中に逃げ込んだ。テントの入り口を閉めて細いファスナーの紐をひたすら強く掴んでた。

もし、力を緩めたらさっき見た首吊り死体がテントの中に入ってくる気がして、頭の中は今にも目の前に“あれ”が降りてくるんじゃないかって恐怖でいっぱいになってた。

ひたすらファスナーを握りしめて、目を瞑ってうろ覚えのお経(の一部)をひたすら唱えてた。

時折聞こえる風で揺れるロープがきしむ音にびくびくしながらお経を唱える…、時間が何時間にも何十時間にも感じて気が狂うかと思ってた。

「おい、何やってんだ」

後ろから声をかけられて振り返ると、友達が僕の顔を見てドン引きしてた。

その時ようやく気が付いたけど、テントには太陽の光が差し込んできて、どうやら朝を迎えられたらしい。

ほっと安心して自分の手を見るとファスナーを強く握りすぎたせいで、指からは血がにじんでいるし、泥だらけに汚れていた。

恐る恐るテントの外に出て…、上を見上げてみると…、何もなかった。

足も死体もロープすらなくて、ぽっかり開いた空間だけを見上げていた。

キョトンとした友達に説明もせずにテントを片付けて、朝飯も食べずにそのキャンプ場からは急いで逃げ出していったんだ。

もしかしたら、何かいわくがあるかもしれないし、過去に何か事件はあったかもしれないけど、あの時のことは絶対に調べないって心に決めてる。

早く忘れないと寝ているときに、またロープの軋む音が聞こえてきそうだから。

Concrete
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